續・祖母が語った不思議な話:その拾壱(11)「初夢」

 明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」、多くの方からいただいた「続きが読みたい」の声にお応えした第2シリーズです。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

 一月二日の夜、祖母の夢を見た。
 実家の座敷に座り花を生けながら懐かしい笑顔で話しかけてきた。
 「今晩見る夢は初夢と言って、良い夢なら幸運が訪れるのよ。寝る時にこれを枕の下に敷いておくと良い夢が見られるから」
 そう言うと祖母は宝船に乗った七福神が描かれた紙を手渡してくれた。
 子どもの頃、これと同じ場面があったなぁと思った瞬間、目が覚めた。

 当たり前だが手渡された紙はなかった。
 その代わり、祖母が教えてくれた初夢の話を思い出した。
 祖母がおばあさんから聞いたという古い話を。

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 「正月早々、不思議な話を聞いたぞ」
 年始回りから戻った祖母のおじいさんは開口一番そう言った。
 おばあさんがどんな話か尋ねると
 「うまく話すには口を湿らさんとな。まずは酒!」と、にやり。
 やれやれと言いながらもおばあさんが燗冷ましを運ぶと、おじいさんは旨そうに呑(の)みながら話し始めた。

 「山二つ越えた村のMっちゅう大工が初夢を見たんじゃと。なんでも光る女の人が枕元に立って、『幸を授けるから隣りの城下町に行って堀に架かる橋の真ん中に立っとれ』っちゅうんじゃ。よう分からんがMは初夢じゃからと朝早ように出かけての、橋んところに立っとった。じゃが昼を過ぎても八つ(午後三時)を過ぎても何も起こらん。所詮、夢は夢かと思い帰ろうとしたとき門番に捕まった。ずっと橋から動かん怪しい奴と思われたんじゃな」
 「とんだ初夢ですね」
 「おう! それでMは牢に入れられたんじゃが、そこにおった年配の牢番が『めでたい正月なのについてないな。どうして捕まった?』と話しかけてきた」
 「そうしたら?」

 「おう! Mが夢の話をすると牢番も不思議な初夢を見たと言う。おとろしい女が現れて、『Mという男の庭の東に自分はおるから掘り出せ』と言って消えたんじゃと」
 おじいさんは、酒をあおると話を続けた。

 「取り調べの後、無罪放免されたMは急いで家に帰ると着替えもせずに庭の東側を掘った。半日ほど掘ったとき、ボロボロの女神像と大判・小判がつまった瓶を見事掘り当てた」
 「正夢になりましたか」
 「おう! 女神さんも外に出たかったんじゃろうな。それからMは牢番を招いて酒宴を開き宝を分け、女神像は祠(ほこら)を建てて祀(まつ)ったそうじゃ。あやかりたいあやかりたい」
 おじいさんは満足そうに酒を飲み干した。

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 「時代が変わっても幸せを願う気持ちは変わらないねぇ。あやかりたいあやかりたい」
 話し終えた祖母は件の七福神の絵を渡してくれたのだった。
 笑顔と一緒に。

チョコ太郎より

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

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