長期間続くかかとの痛みや違和感はもしかしたら「難治性足底腱膜炎」かもしれません。歩くことと切り離せないかかとの痛みについて、タカハラ整形外科クリニックの高原一洋先生にうかがいました。
【日本整形外科学会専門医】タカハラ整形外科クリニック 高原一洋 先生
長崎市生まれ。久留米大学医学部卒業後、長崎大学整形外科教室に入局。北九州総合病院、八木病院等勤務を経て、2009年タカハラ整形外科クリニックを開業。手や肩や脊椎、スポーツ障害等を得意とし、丁寧な診察と適切な治療で安心感と満足感を与えるクリニックを目指す。新型コロナウイルス感染予防対策にも力を入れている。
放置は禁物、かかとの痛み。足裏を縦に走る腱膜が傷み歩行に支障が生じることも。
立ちっぱなし、走り過ぎ、歩き過ぎなどでかかと痛が慢性化「難治性足底腱膜炎」
朝起きて床に足を着いた時、特に歩き出しに、かかとの痛みや違和感などの症状を自覚したことはありませんか。 足の裏の足趾の根元からかかとにかけて走る「足底腱膜」という腱膜と、かかとの骨に付着する部分に炎症が起きると、「足底腱膜炎」が発生します。これを放置して痛いまま足を酷使したりすると、足が地面に着地するときの衝撃吸収や蹴り出す力のバランスが崩れ、さらに治りにくくなります。 足底腱膜炎は「ランニング障害」の1つで、マラソン選手をはじめとするアスリートによく見られますが、実は中高年にも多い疾患です。
まずは、鎮痛剤の服薬や外用剤、ストレッチ等のリハビリテーション、靴の底にインソールを敷くなどの保存療法を行いますが、3〜6ヵ月で症状が改善しない場合、「難治性足底腱膜炎」と診断します。 足底腱膜炎はランニングなどのスポーツや立ち仕事の人に多く見られ、「少しの痛みで練習時間を減らしたくない、仕事を休めない」等の理由で治療せずに放置しがちです。しかし、放置して歩行障害が進行すると、手術が必要になることもあるので要注意です。
最新のかかとの痛みの治療法。「体外衝撃波疼痛治療装置」で皮膚の上から患部にあてるだけ。
かかとや足裏の患部に体外衝撃波を集中照射。1回10分ほどの最新治療
そんな難治性足底筋膜炎の最新治療が、「体外衝撃波疼痛治療装置」という機器を用いた治療です。 もともと尿管結石などの治療に用いられていた体外衝撃波を、足底腱膜の炎症部分等の患部に照射する治療法で、除痛を目的とした整形外科領域では新しい治療法です。高エネルギーの衝撃波の照射は、軽い痛みを感じるレベルで10分ほど皮膚の上から患部にあてます。従来の治療は、炎症を抑えるステロイドなどの注射ですが、針を指すいう侵襲性のある治療でした。しかし、体外衝撃波は低侵襲で安全性の高い治療で、子どもからお年寄りまで安心して受けられます。症状の程度にもよりますが、1回で改善がみられる人もいれば、5回ほど照射して痛みがなくなったという人など、効果はそれぞれです。 体外衝撃波装置には、整骨院などでも普及している「拡散型」と、患部に集中して衝撃波を当てる「収束型」の2種類があります。難治性足底腱膜炎に対しては「収束型」が高エネルギーを集中して照射できる為、治療効果が高く保健適応にもなっています。「収束型」は機器が高額な為、導入する病院もまだ少なく、当院では2018年に導入後、遠方より来られる方も多く好評を得ています。 難治性足底腱膜炎以外にも、アキレス腱炎、膝蓋腱炎、テニス肘、石灰沈着性腱板炎などの炎症や、バネ指、早期の骨病変(疲労骨折や野球肘など)にも効果が期待されます。
いつまでも自分の足で歩く。通所リハビリで強い足腰作り
症状が起きてから治療を行うだけでなく、利用者様が常に体をしっかり整えておけるよう、当クリニックでは75分の短時間「通所リハビリ」(介護保険対象)を行っており、各利用者様の健康づくりをサポートしています。 介護保険の「要支援」または「要介護1」の認定を受けている方で、自分で通所できる方が対象。「骨粗鬆症マネージャー」「ロコモコーディネーター」「骨盤底筋エクササイズインストラクター」の資格を持つ理学療法士が担当します。 75分のスケジュールは、午前の部10時30 分(午後の部14時30分)に来所、体調チェック後、利用者様の身体運動能力に応じた「足リハビリ」を行い、その後は個別プログラムへ。運動後、担当理学療法士や機器による全身の筋肉ケアを20 分ほど実施し、11時45分(15時45分)には退所。
「歩く」ことは生活の基本です。対象の方で、歩行能力の向上・転倒予防にご興味のある方はケアマネージャーへ相談し、いつまでも自分の力で歩ける健康な足腰をキープしてみませんか。 なお、脳卒中後の歩行改善や排泄リハビリなども個別プログラムにて対応しています。見学・体験利用も随時実施しており、お気軽にご相談ください。