私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
小学校3年生の時、学校では幽霊屋敷のうわさで持ち切りだった。
さっそく友達と30分ほど自転車を飛ばし、その家のあるK地区に出かけた。
すでにうわさを聞いた子どもたちが何人も来ていた。
その家はかなり大きな二階建てだった。
伸び放題の草木を払いのけながら何人かが玄関まで入っていった。
「鍵がかかってる! 開かないや」
周りで見ていた子どもたちは残念に思いながらもどこかホッとした表情だった。
帰りがけにもう一度その家を眺めると青い瓦が印象的だった。
ただ鬼瓦がどこにも無いのに違和感を感じた。
家に帰ってから祖母に尋ねた。
「おばあちゃん、幽霊屋敷ってあると思う?」
「そうだねえ…気味の悪い家には行ったことがあるよ」
「どんな家?」
「あれは15、6年くらい前かな…」
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ある日、祖母は朝から遠方に住む知人の出産祝いに出かけた。
久しぶりに会う知人も赤ん坊もとても元気だった。
お祝いを述べ、お土産を渡して帰ろうとすると、その家のおばあさんが重そうな荷物を持って出かけようとしていた。
話しかけ荷物を持ってあげた祖母は、そのままおばあさんについて行った。
5分くらい歩いておばあさんは大きな家の戸を叩いた。
中年の痩せた女の人が出てきて中に招き入れた。
昼間なのに部屋は暗かった。
おばあさんが女の人と話しているのを聞くともなしに聞いていると、二階から赤ん坊の泣く声がする。
「赤ちゃんが泣いてませんか?」
そう問いかけたが、二人はまるで聞こえなかったように話を続けている。
仕方がないので二階へ上がろうと祖母が立ち上がった時
「上がるな! 帰れ!」と女の人が恐ろしい形相で怒鳴った。
訳が分からなかったが異様なものを感じた祖母はその家を後にした。
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「その当時は珍しい青い瓦の立派な家だったけど、二階に上がらなくて良かったよ」
「おばあちゃん、その家…もしかしたらK地区?」
「おや、なぜ知ってるんだい? 前に話してあげたかな」
「昨日、行ったんだ。でも中には入れなかったよ」
「入れなくて良かったよ。あんなところに行くとろくな事はない」
知人の話によると何度取り付けても鬼瓦が割れたり、夫婦二人暮らしなのに子どもの泣き声が聞こえると近所でもうわさの家だったそうだ。