劇団四季ファミリーミュージカル「人間になりたがった猫」が2023年2月7日(火)、8日(水)の2日間、福岡市民会館(福岡市中央区)で上演されます。同作は、人間になった猫のライオネルと人間との心の触れ合いを描いた物語で、原作は米・児童文学作家ロイド・アリグザンダーの同名小説。劇団四季が1979年に舞台化しました。劇団四季のファミリーミュージカルの中では最多の約2,000回の公演回数を誇っています。今回は、福岡市出身でトリバー役の一人である遠藤珠生さんにリモートでインタビューしました。
「すてきな音楽、衣装、全部が見どころ!」
―作品の見どころを教えてください。
全部です! この作品が好き過ぎて、見どころをと聞かれると、すぐ「全部」って答えてしまうんです(笑)。
物語そのものの素晴らしさや楽しさは言うまでもなく、私が最初にすごく魅力的だなと感じたのは、やっぱり音楽。私が音楽を専門的に学んできたというのもありますが、この作品の音楽は本当にすてきなんです。まず耳で聴いて楽しいというのが一つです。
―どのような音楽が楽しめますか。
コミカルな曲もあれば、私が現在演じているトリバーたちが歌う曲では五拍子のジャズ調、ジリアンというヒロインの女の子が歌う曲はちょっとクラシカルな雰囲気もあるなど、いろいろな曲調の楽曲が楽しめます。
そんな多彩な楽曲の中でも特徴的なのは、劇中に何度も歌われる「すてきな友達」というテーマ曲です。とても耳馴染みの良いメロディーで、歌詞も素晴らしく、終演後には「今ごろお客さまは口ずさみながらお帰りになっているんだろうな」っていつも想像しています。
―曲のほかにも魅力ポイントがあれば教えてください。
ぜひ衣装に注目してください! 衣装は、昨年お亡くなりになった森英恵さんのデザインで、1着1着に役への思いが込められていて本当に素敵なんです。一見シンプルな白いブラウスにも、よく見ると襟と袖に細かいレースや刺しゅうが施されているなど、細部にまでこだわりが詰まっています。
アンサンブルキャストを含めてたくさんの衣装が用意されているのですが、ぱっと見るだけで、どんな職業でどんな人柄なのか分かるようなデザインになっていて、作品の世界観を表現する上で大切なアイテムになっているんですよ。
―遠藤さんが演じている「トリバー」は、どのような人物ですか?
主人公の猫のライオネルという男の子が憧れているブライトフォードという町に住む「さかな屋」さんです。正義感が強い人情派で、その町のまとめ役、みんなのお母さんみたいな頼れる存在です。ライオネルに手助けをしてもらったのをきっかけに、彼のよき理解者になります。
「大人にこそ響くテーマや内容。家族で楽しめるからファミリーミュージカル」
―作品を通じて子どもたちに伝えたいことは。また、大人でも楽しめる点などを教えてください。
この作品には、仲間や命の大切さ、人を愛する、そして人を許す大切さなど、人間が生きていく中で大切なことが込められています。小さなお子さんには、お友だちと仲良くしましょう、命は大切になど、普段から当たり前のように言われているようなことも、作品を通じて楽しみながら心で感じられるようになっています。
また、大人には、昨今の世界情勢や、自由が利かない暮らしの中で、誰かの支えを必要としたり、誰かの支えになったりしながら過ごしているような現状とリンクする部分があり、「やっぱり人は一人では生きていけない」とグッとくる部分も多いのではないでしょうか。
―確かに、大人のほうが考えさせられるような内容ですね。
余談ですが、夏休みに知人家族が、お父さんとお母さん、子どもの親子3人で観劇してくださったのですが、終演後に、付き添いでいらっしゃったはずのお父さんが大号泣だったそうで(笑)。大人にこそ響くというか、私も何度も泣きそうになるのを必死に堪えながら演じていますし、カーテンコールでみなさんが涙されているのを見ると胸に込み上げてくるものがありますね。
今回、劇団四季に入団して初めてファミリーミュージカル作品に出演したのですが、ファミリーミュージカルと聞くと子ども向けの作品と思われる方も多いかもしれませんが、実はそうではなく、小さなお子さんから大人までみんなが一緒に楽しめるから“ファミリーミュージカル”なんだなと、私自らが改めて感じています。
「お櫛田さんに参って、ふわふわのごぼ天うどんを食べます!」
―今回、全国各地を細やかに訪れて上演されていますが、それについての思いを。
「人間になりたがった猫」は、2022年9月から全国ツアー公演が始まり、日本各地を巡っていますが、どこの公演地に行っても歓迎してくださって本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今回の福岡公演は、福岡市内だけではなく、柳川市や朝倉市、宗像市でも公演します。作品は異なりますが、コロナ禍の影響で、20年、21年に上演予定だったファミリーミュージカルが中止になってしまった地域もあり、ようやく作品をお届けすることができてうれしく思います。
また同時に、今まで私たちは舞台に立つことを当たり前のように思っていましたが、それは違うんだと気付かされました。1公演1公演、丁寧に命がけでお届けしていかなければと、改めて実感しました。今回の公演は、上演中止になった別作品の劇団員の思いも一緒に各地を巡っています。
―福岡市出身の遠藤さんにとって、2月の福岡公演に出演されるとなれば、久々の地元公演です。特別な思いがあれば。
もし、今回の福岡公演に出演することができれば、2019年の「ライオンキング」以来の出身地での舞台になります。これまで4作品で福岡の舞台に立ちましたが、福岡に戻る度にお客さまから「おかえりなさい」って言っていただけるのが本当にありがたく、うれしく思います。
福岡でおいしいご飯を食べて、温かい声援をいただいていると、英気が養われるような感覚があって「福岡の街と人に育てられているんだなあ」という気持ちになります。
※注)福岡公演の予定キャストは2月6日(月)更新の劇団四季オフィシャルウェブサイトで確認を
―福岡では行きたい場所や食べたい物はありますか?
福岡で公演がある時は、必ずお櫛田さん(博多区:櫛田神社)にお参りに行きます。だから今回もお櫛田さんにはごあいさつに行きたいですね。食べたいのは、ゴボ天うどん! これは欠かせないですね。博多っていうと豚骨ラーメンをイメージする人が多いと思いが、実は“うどんばよう食べるとよ(うどんをよく食べるのよ)”って言いたいですね(笑)。劇団のみんなにも、ふわふわのやわらかな博多のうどんを食べてもらいたいです。
―最後に、公演を楽しみにしている福岡・九州の観客へのメッセージを。
「人間になりたがった猫」は、本当に観(み)る人の心を温かくする作品です。まだまだ寒い2月の公演ですが、きっと観劇後はポカポカの心でお帰りいただけると思いますので、ご家族やお友達とお誘い合せのうえ、劇場に足を運んでくださるとうれしいです。福岡のみなさん、劇場で待っとるけんね〜!
◆「人間になりたがった猫」ストーリー
ライオネルは人間の言葉をしゃべる猫で、人間になるのが望み。ご主人の魔法使いステファヌスは大の人間嫌いで、ある時お仕置きとしてライオネルを人間に変えてしまいます。ところが、お仕置きを受けたライオネルは大喜び。人間の住む町、ブライトフォードへと出かけ行きます。町に着いたライオネルを待っていたのは…?
◆遠藤珠生(えんどう たまき)
福岡県出身。「オペラ座の怪人」で劇団四季での初舞台を踏み、「ライオンキング」ラフィキ、「美女と野獣」ミセス・ポット、「リトルマーメイド」アースラを演じている。歌唱力を生かして「ウィキッド」「サウンド・オブ・ミュージック」にも出演。
劇団四季ファミリーミュージカル「人間になりたがった猫」福岡公演
日時:2月2日(木)18:30 柳川市民文化会館大ホール
4日(土)15:30 宗像ユリックスイベントホール
5日(日)16:00 朝倉市総合市民センター大ホール
7日(火)、8日(水)18:30 福岡市民会館大ホール
※詳しくは劇団四季オフィシャルウェブサイトで確認を