子どもの習い事の発表会、ドキドキしますよね。本番で上手くできてもできなくても、小さかったわが子がたくさんの人の前に立ち、努力の成果を見せようとしている姿に、目頭が熱くなってしまいます。 でも娘のダンスの発表会では、涙が引っ込んでしまう出来事がありました。
あこがれの発表会
現在5年生の娘が、2年前から通っているのはヒップホップ系のダンス教室。年に1度の発表会にはかなり力を入れています。
1年目の発表会には娘はまだ出演できず、客席から見学しました。一緒に行った私は、その演出のすごさにびっくり。スポットライトやビームライトを駆使した、まるでプロのショーのようなステージだったのです。あの日から私は、娘が舞台に立つ日をずっと楽しみにしていました。
そしてついに迎えた発表会当日。私は朝早くから娘にヘアアレンジとメイクを施しました。ネット情報によると最近は舞台メイクでもあまり濃くせずに、目元はアイラインをしっかり入れる程度が良いのだとか。なかなか上手に仕上がって、娘も鏡をのぞいては喜んでいました。
発表会の開演は午後からですが、娘たちは9時には集合。通し稽古とリハーサルを繰り返してから本番に挑むのです。そしてダンス教室の方針で、控え室に入れるのは子どもたちだけ。
「軽いメイク直しはやりますから」と先生が言ってくれたので、私はメイク道具一式を娘に渡し、控え室入り口で別れました。次に娘を見るのは客席からです。
落ち着かない気持ちで開演まで時間をつぶした私は、会場に入ると娘がよく見えそうな席に陣取りました。娘のクラスはトップバッター、今頃娘はこの幕の向こうでドキドキしているだろうなと思うと、私の胸こそ緊張で張り裂けそうでした。
ついに本番がスタート!
間もなく客席の灯りが消え、この数カ月間、娘たちがずっと練習してきた曲のイントロが流れ出しました。ゆっくり幕が上がり、ビームライトで照らされた娘たちのシルエットが浮かび上がります。その瞬間、私の目にはぶわっと涙が込み上げました。
ダメだ、私泣いちゃう。と思ったその時、照明が切り替わって娘の顔がはっきり見えました。
「あれ?」 涙がピタッと止まった私。娘の顔がどこかおかしいのです。全体的に白くて目の周りは真っ黒、そしてほっぺは真っ赤っか。何それ、歌舞伎なの? それとも忌野清志郎? と言いたくなる程の激しいメイクになっていたのです。
先生の好みでみんなそんなメイクになったのかと思ったけど、他のメンバーは誰もそんな顔をしていません。娘の顔が気になりながらも、私は改めて娘たちの演技に集中しました。最後まで迫力満点だった娘たちは本当にかっこ良かったです。
終演後、私は娘を褒めちぎってから、それでもやっぱり聞いてしまいました。そのメイクは一体どうしたの? って。すると娘はうれしそうに答えました。
「わたしね、自分でメイク直ししたんだよ」 自分用のメイク道具なんて初めて持ち、うれしかった娘は、暇さえあれば何度もメイク直しをしていたそう。グラデーションで塗り分けるはずのアイシャドーも全色まぶたに塗りたくり、チークも何度も重ね塗り。その結果、清志郎もびっくりの歌舞伎顔となったのです。
大笑いしてその顔をカメラに収めはしたものの、次の発表会にはメイク道具の使い方もしっかり教えておこうと、心に決めた私でした。
(ファンファン公式ライター)