子どもが遊ぶおもちゃには、家庭の教育方針や親の好みが反映されているもの。木のぬくもりを大事にしたおもちゃや、知育玩具にこだわる家庭もあれば、ゲームやキャラクターおもちゃを早々と与える家庭もあるでしょう。私の友人でもあるママ友Aさんは、子どもの成長に合わせて、おもちゃを選んであげたい派。そんな彼女が頭を悩ませているのは義父の存在でした。
手作りこそが一番の愛情と信じて疑わない義父
ママ友Aさんの一人息子は、先日、3歳の誕生日を迎えました。目に映るものはすべておもちゃ代わりになる1〜2歳の頃と違い、3歳は自我が芽生え、好奇心旺盛になってくるお年頃。
Aさんは、子どもの成長に合わせて、その時期に興味を持つおもちゃを渡したいと思っていたので、おもちゃ売り場やプレーパークに連れて行き、息子がどんなおもちゃを手に取るのか、熱心に遊ぶのか、事前にリサーチしていました。
Aさんの実親もまた、孫が本当に喜ぶものをあげたい派。
「最近のお孫ちゃんは、どんなことに興味があるの? どんなおもちゃが好き?」と尋ねてくれたので、息子が好きそうなおもちゃをありがたくリクエストすることができました。
お祝いムードの中、Aさんを悩ませる存在となったのが義父です。悪い人ではないのですが、義父の思い込みが激しくて自分勝手なところに、出産後、Aさんは何度も困らされていました。
義父と義母は、車で片道3時間ほどの遠方に住んでいるので、顔を合わせるのは、数カ月に1度なのですが、おうちに遊びに来るたびに、ことごとく駄目出し。
「ロボット掃除機なんて使わずに、きちんと自分で拭き掃除をしなさい」
「市販の離乳食? そんなペットの餌みたいなものを大事な孫にあげるなんて、感心しないな。離乳食は手作りしなさい」と口うるさいのです。
そうです、義父は手作り至上主義者。手間暇をかけて、手作りしたものこそ愛情が伝わると思い込んでいるのです。そのため、孫にあげるプレゼントはすべて手作り。
1歳の誕生日、2歳の誕生日、こどもの日やクリスマスと、ことあるごとに手作りおもちゃを送りつけてくるのですが、どれもこれも使えないものばかり。
夫に相談しても知らんぷり。そんな中届いた誕生プレゼントは…
どんなプレゼントなのかというと、例えばラップの芯をカットして、中にあずきを入れたガラガラ。これは息子の頭に当たって泣いてしまいました。木の切れ端を削って作ったおしゃぶりは、やすりのかかりが甘く、角があるので、とても息子に与えられません。義父が絵を描いた手作りの紙芝居は、鬼の絵が怖すぎて、息子が夜泣きするようになりました。
義父からのありがた迷惑な贈り物は、思いがこもっている分、簡単に捨てることもできず、溜まっていきます。3歳の誕生日が近づくにつれ、「今度はどんなものを送りつけてくるのだろう…」と思うと、Aさんは憂鬱(ゆううつ)になり、旦那に相談をすることにしました。
「義父さんの手作りのプレゼントは、そろそろ卒業してもらって、息子が欲しがっているものをリクエストしたら駄目かな?」と提案してみましたが、旦那は
「父さんがせっかく好意で贈っているのだから、好きにさせてよ。これも親孝行のひとつでしょ」と聞く耳を持ってくれないのです。
旦那自身も子どもの頃に、市販のヒーローおもちゃやゲームが欲しかったのに買ってもらえなかったと、文句を言っていたくせに、なぜ理解してくれないのでしょう。旦那は、息子を使って義父を満足させ、親孝行をしているつもりになっているので、Aさんとしては面白くありません。
他のママ友の子ども達が、祖父母からおもちゃや洋服、お金をもらっていると聞くと、うらやましく思うのでした。
そして息子の3歳の誕生日、大きな贈り物が届きました。大きな箱に入っているのは何でしょう。息子が乗りたがっていたストライダーでしょうか。それとも、息子がはまっているトミカの大きなセットのおもちゃでしょうか。わくわくしながら、息子と贈り物をあけると、そこに入っていたのは、縦横1mほどの正方形のダンボールが9枚。なにかの絵が貼り付けてあります。これは何…?
ダンボールを広げてみると、国民的なキャラクターのパンのヒーローのように見えます。そうです。大きなダンボールの正体は、義父手作りの絵を貼り付けた巨大パズルなのでした。たしかに息子が1歳の頃、このヒーローが大好きだったのですが、もう卒業しています。しかも9枚を組み合わせると、リビングのほとんどが埋まってしまう大きさ。正直、ありがた迷惑!!
ついに思い切って義父に直訴!
巨大パズルが届いてすぐに、息子は自分の背ほどもあるダンボールを一生懸命運んで遊んでいましたが、大きすぎてうまく遊べません。しかも数日たつと、ダンボールに貼り付けた絵が角から浮いてはがれ、ダンボール自体も曲がってしまいました。3歳ながら完璧主義なところがあり、きちんとそろえるのが好きな息子は、ゆがんだパズルにイライラとして、ママに八つ当たりする始末。迷惑以外のなにものでもありません。
ついにAさんは、義父に直接訴えることにしました。
「お父さん、この前いただいた巨大パズル、とてもありがたいのですが、もう絵がはがれてきて、遊べないのです。息子は『じいちゃんのプレゼントは大事にしたい』と言うので、捨てることもできずに困っています。来年からは、市販のおもちゃや絵本にしてもらえませんか?」
そう伝えると、義父は憤慨したようで「子どもが小さいうちは、手作りおもちゃが一番なんだ!」と電話口でわめいています。
すると横で聞いていた旦那が、電話をかわり、静かにこう言ったのです。
「気持ちはありがたいけれど、遊べないおもちゃはゴミと変わらないよ。送料をかけてゴミを贈られても困る。それに俺、幼い頃ずっと手作りじゃなくて、普通のおもちゃが欲しかったよ。孫に同じ悲しい思いをさせないでよ」
義父は、電話口の向こうで黙ってしまった様子。
旦那は「クリスマスも近いしさ。もしまた手作りするつもりなら、いらないから。それよりも、一緒におもちゃ屋さんに行こうよ。息子が欲しいおもちゃ、じいちゃんが買ってあげてよ」と静かに言って電話を切りました。
きっと今度のクリスマスは、手作りの贈り物ではなく、みんなでおもちゃ屋さんに行くことになるでしょう。義父の手作りの贈り物は卒業のようだと、Aさんは笑って教えてくれるのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/tsukuko)