福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。52回目は福家書店 木の葉モール橋本店(福岡市西区)の副島裕子さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の7冊を紹介します。
愛猫家でも知られる福岡県出身の作家 竹下文子さんの絵本
「なまえのないねこ」竹下文子作、町田尚子絵
―こんにちは! 今回副島さんが紹介されるのはどんな本でしょうか。
福岡県出身の児童文学作家・竹下文子さんが文を担当した「なまえのないねこ」(2019年4月小峰書店発行、1,650円、税込み)です。ストーリーは、飼い猫が持つ“名前”に憧れるひとりぼっちの猫がある日お寺の猫に「自分で好きな名前を付ければいい」といわれ、自分の名前を探すというお話です。
作者の竹下さんは児童文学と絵本合わせて300冊近く書かれていて、動物以外の本もたくさんありますが、自身が愛猫家ということもあって猫をモチーフにした物語を多く出されています。
―この本を手に取ったきっかけは?
絵本の表紙のインパクトに惹(ひ)かれたのがきっかけですが、読み進めていくうちに、きれいな絵と分かりやすい文章に引き込まれました。竹下さんが絵本の文章を担当する際は分かりやすさを心がけているそうで、文章は短いですがスッと入ってくるような言葉で書かれています。大人はもちろん、子どもでも読みやすい作品だと思います。
―副島さんお気に入りのページはありますか?
ひとりぼっちの猫の孤独・悲しみがたった3行で表現されているページです。猫は悲しみから涙を流すことはないのですが、それを“やまない あめ(止まない雨)”と表現されています。悲しいのですが、どこかきれいで、さすが児童文学作家だなと感じました。
―どんな人におすすめしたいですか?
猫に限らず、ペットを飼っている人や、これからペットを飼おうと思っている人にオススメしたいです。作者・竹下さんは「世界中の猫も人もみんないつか誰かと出会って、居心地のいい場所を見つけて幸せになってほしい。という願いが読んだ人に届いてほしい」と語っています。猫だけではなく人間や他の動物にも通じるメッセージ性の高い絵本なので、ぜひ手に取ってもらいたいです。
―福家書店 木の葉モール橋本店について教えてください。
2011年にオープンし、今年で12年を迎えます。ファミリー層が多いため、児童書をメインにコミック、参考書、実用書が充実している点が特徴です。約10万冊を取り扱い、そのうち約2万冊は児童書や絵本、知育玩具といったアイテムが占めています。
―店内中央付近にある「だびんち★きっず」とは…?
「だびんち★きっず」では、0歳~年長までを対象とした、児童書や知育玩具のほか、自分で考えてキットを組み立てる科学教材などを取り扱っています。「日本のえほん」や「海外のえほん」、「しかけえほん」などブースが分かれているほか、「みほん」と書かれた絵本は試し読みができます。おもちゃの試し遊びコーナーも復活を検討しています!
―ありがとうございました。作家であり、愛猫家でもある竹下文子さんの他の作品も気になりますね。続いて話題の7冊を紹介します。
「こころのねっこ」【中央公論新社】
読売新聞生活部 監修/1,540円(税込み)
読売新聞「こどもの詩」に掲載された、2017年~2021年までの精選集。子どもの目にしか映らない風景や大人もびっくりする新発見まで、飾らない言葉で表現される詩は、どれも胸を打つ名作ばかり。特に2020年春の緊急事態宣言以降はコロナに関する詩も多くあり、「こどもたちのウィズコロナ」も感じさせます。
「1パックで完全栄養!レンチン腸活ごはん」【光文社】
村上祥子 著/1,870円(税込み)
福岡で料理教室を切り盛りしながら、ひとり暮らしをしている料理研究家の村上祥子さん80歳。本作は学術に基づき、酵素を働かせるメニューを集めた腸活レシピ本です。「タンパク質食材(肉や魚)100gと野菜 100g」を1パックに詰めて冷凍し、後でレンチン調理するだけ! 1カ月分=31パックと豊富なので飽きません。あなたも健康寿命を延ばしませんか?
「若冲が待っていた」【小学館】
辻󠄀惟雄 著/2,200円(税込み)
江戸時代中期の絵師・伊藤若冲を再発見した美術史家・辻󠄀惟雄さんの自伝的エッセイ。東京大学現役合格もいきなり留年し、医学から美術史に転向。戦争と重なる少年時代、若冲との出会い…。従来の美術史を根底から覆し、斬新な美術史観で「奇人」と呼ばれながら、後進たちにディープインパクトを与えた辻󠄀さんの、ものの見方、考え方が垣間見える一冊です。
「奇跡を、生きている」【青春出版社】
横山小寿々 著/1,650円(税込み)
コロナ後遺症としても注目される「慢性疲労症候群」。24時間365日全身を激しい痛みと倦怠(けんたい)感が襲い、ほぼ寝たきり状態になる難病です。誰でも突然発症する可能性があり、治療法はまだないとか。本書は「慢性疲労症候群」の著者が病気と向き合い気づいた“人生で大事なこと”がつづられています。漫画「ちはやふる」の作者・末次由紀さんも推薦する一冊。
「土井善晴のレシピ100 料理がわかれば楽しくなる、おいしくなる」【学研】
土井善晴 著/1,760円(税込み)
家庭料理研究家・土井善晴先生が厳選した家庭料理100品を掲載。絶対においしく作れるレシピや、ムダを省いた作りやすいレシピなど、私たちの日常の暮らしに役立つような作り続けたい家庭料理だけをぎゅっと集めました。豚肉のしょうが焼きやハンバーグ、肉じゃがなど、家族みんなが喜ぶおいしい決定版レシピが満載です。
「間借り鮨まさよ」【双葉社】
原宏一著/1,848円(税込み)
いつもニコニコほっこりさせる笑顔の普通のおばさんなのに、鮨(すし)を握らせたら銀座の一流職人も顔負けの腕前。自分の店は持たず、間借りで鮨屋を開く雅代のところには悩める若者や困りごとが舞い込んできます。鮨だけではなく、人の心と胃袋も握る雅代の魅力あふれるハートウォーミング鮨小説です。
「使い切れない農地活用読本」【農文協】
農文協 編/1,980円(税込み)
田園回帰ブームの今、実家や地域の「使い切れない農地」は、新規就農者や農的な暮らしを求める人に託すという手もあります。有機農業や自給菜園、養蜂の蜜源地など、新しく農業で生計を立てたり、仲間と自給自足を楽しんだりできるとか。「25のおすすめ品目」、「64の用語集」、「知っておきたい農地制度Q&A」が付いた一冊。
いかがでしたか。暖かい陽気の季節に向けて、新しい本を手にしてみては。次回もお楽しみに♪