福岡・九州大学発 ベンチャー企業の挑戦にみる「Z世代」の可能性

働き方改革、ベンチャー、スタートアップ企業…コロナ禍の中、働き方や企業の在り方が変わりつつあります。そして、今、メディアでも注目されているのがZ世代。今回は、ライターの帆足 千恵さんが、学生ベンチャーの挑戦からみたZ世代の可能性に迫ってみました。

出典:フクリパ
目次

Z世代とベンチャー企業とは?

まずはじめに、最近、よくメディアでも目にする「Z世代」、そして「ベンチャー企業」とはどのようなものを指すのか、改めて整理してみました。 【Z世代とは】 ●日本では1990年後半頃から2012年頃に生まれた世代 ●生まれついたときからスマホがあるスマホネイティブ ●デジタルなシステムの環境で育ったデジタルネイティブであるといわれている 【ベンチャー企業とは】 ●独自のアイデアや技術をもとにして、新しいサービスやビジネスを展開する企業 ●最先端技術や全く新しいビジネスモデルで、新たな価値の創造を目指す会社 ●企業規模は、ほとんどが小規模から中規模 ●ベンチャー企業の中でも特に新しく短期間で成長している企業をスタートアップという そこで今回は、「Z世代」と「ベンチャー」の2つの要素を兼ね備えた企業にフォーカスします。 23(トゥースリー)株式会社(以下、「トゥースリー」)は、福岡市の九州大学に所属する学生たちのつながりから2020年9月に誕生したばかりの企業です。 「福岡および地方に眠っている才能を世界へ」という強い意志を持って、『Z世代』の柔軟かつしなやかな発想で、さまざまなプロジェクトをすすめています。 筆者の私自身も一緒に仕事をしていく中で、刺激をうけています。彼らを通して見えた今後のZ世代による新しい世界の可能性をレポートします。

「Z世代」☓「地方」☓「グローバル」の若きクリエイティブ集団23 (トゥースリー) 株式会社

彼らに初めて会ったのは昨年10月。私が理事をつとめる九州通訳・翻訳者・ガイド協会での仕事を通じてのことでした。

https://www.youtube.com/watch?v=YAsjSaOOUN8

九州電力の観光創生プラットフォーム「reQreate」において、世界に九州の魅力を届ける英語のオンラインツアーを実施する際、各地の動画の撮影・編集を依頼したことからスタートします。 その他、海外からのツアー購入の申込み・決済システムも彼らに依頼して、作成してもらいました。若くてフレッシュなだけでなく、落ち着いていて仕事の進め方も効率的。提案もどんどん出てきます。

出典:フクリパ:現役大学生のZ世代で構成された23株式会社のメンバーたち

1996年以降に生まれた九州大学の学生 (修士、博士課程など含む)、U-25 の「Z世代」によって構成され、創業当時5名ほどだったメンバーは2021年3月現在32名に。 エンジニアやデザイナー、動画クリエイター、事業家など、様々なスキルとバックグラウンドを持った学生を、様々な学部や大学からどんどん採用中。最近は、長崎大学、岡山大学、九州工業大学などからも採用に関する問合せが相次いでいるそうです。 代表の清水淳史さんと共同創業者の笹津敏靖さんは、3年半前にバイト先のカフェで知り合い、九州大学のプログラムであるフィンランドへの短期留学でも一緒になり、まったく専攻は違っていたが、お互いに定期的に連絡をとりあい、起業に至ったとのこと。 まずは、代表の清水さんに経緯と目指す想いをききました。

出典:フクリパ:23株式会社 代表 清水淳史さん(取材時2021年3月末九州大学芸術工科学部4年生)

清水さん 「九州大学3年生 20歳のときに、ドローンのための空域マーケットプレイス”sora:share”を開発する株式会社トルビズオンへ取締役COOとして参画し、増本衛氏 (同企業の代表取締役社長)と起業しました。 彼とは、東京のスタートアップイベントで会ったのがきっかけで、当時はデザインから営業、ファイナンスまで、幅広い業務を担当し、スタートアップとして日々走り回ってました。 事業内容は、簡単にいうと『空の道を創る』仕事ですね。民法の規定により、他人の土地上空はその人のものであり、勝手にドローンを飛ばすことはできません。 そこで『空の利用権を貸し借りできるマーケットプレイスを作った』ということです。その結果、利用可能な空を繋ぎ、それが空の道となり、自由にドローンが飛び交う世界を目指して活動していました。 コロナによる経済情勢の悪化もあり、昨夏にトルビズオンの取締役を退任し、今後どうしようか思案しているところ、学部や専攻も違うけれど定期的に話をしていた笹津と学生だけで起業しようということになったのです。 私自身は九州大学の芸術工学部でデザインを専攻し、『学生たちのスキルの高さは世に出して通用するものだ』と確信していました。一方、この福岡にも、伝えられる魅力がまだまだあるのではないかと。 地方には“何もない”のではなく、たくさんある魅力を“伝えられていない”だけ。また、人材もしかりで、高いスキルを持った若者の力を上手く利用できていない。 若手クリエイターの力、ポテンシャルと、それをぶつける地域をマッチングすることで価値を生めるのではないかと思い、起業に至りました。」 また、トゥースリーのスタッフは、海外生活の経験を持っている人も多く、グローバルな視点を持っていると感じさせます。共同創始者の笹津さんは、中高の4年間をフランス・パリで過ごしたそう。そのときの体験が彼の専攻と仕事に反映されています。

出典:フクリパ:23株式会社の共同創業者の笹津敏靖さん(取材時2021年3月末九州大学21世紀プログラム4年生)

笹津さん 「僕は、九州大学の『21世紀プログラム』の4年生。特定の学部・学科に所属するのではなく、自分の「やりたいこと・学びたいこと」の実現に向けて、オーダーメイドで学び創り上げていきます。 履修課目は、文系、理系などを超えて自由にカスタマイズして学んだのですが、僕の4年間の学びのテーマは、食、食育、コミュニティでした。 例えば、フランスでは昼食を1、2時間くらいかけて楽しみますが、日本では10分程度でかきこむように食べることも多い。この違いって何だろうと考え、行き着いたのが『食×コミュニティ』の分野。 その観点から「まちにおける居場所づくり」に関心を持ち、トゥースリーでも“まち”関連のプロジェクトを手がけています。 また、グローバルの活動では、先日は僕らの会社があるFukuoka Growth Nextで開催された世界的なピッチイベント『ファンダーズライブ』に弊社メンバーが登壇し、フランスの方からビジネスに関する連絡もいただきました。 トゥースリーは海外を経験したメンバーが多いので、海外からの視点、海外の人にとってどう見えるかに合わせてローカライズしたクリエイティブ制作が強いですね。」

Z世代の視点で、企画から課題解決まで一気通貫に支援

学生ばかりでどのように業務を進行しているのか、実際にどのような業務を行っているのか、興味津々できいてみました。 清水さん 「プロジェクト毎に、プロジェクトリーダーをたて、リーダーがメンバーを任命して、進行していきます。コロナの影響もありますが、所属する学部や大学によってメンバー間の場所も離れているので、会議や仕事の打合せはリモート中心ですね。 昨年9月の起業から2021年3月半ばまでの約半年で、すでに20社のクライアント、約30のプロジェクトをすすめています。」

出典:フクリパ:オンラインでの社内会議の様子

「スタートアップや地域に愛される飲食店、多くの課題を抱える自治体など、あらゆる産業、事業フェーズに寄り添いたいと思っています。 アウトプットとしてはUI,UXデザインやWEBやアプリ制作、動画制作が多いのですが、企画段階から僕たち自身の目線を大切に一緒に作っていく場合と、デジタルに強い制作会社として制作物のみ依頼される場合とそれぞれあります。」 ーー企画から携わった代表事例をあげると

■スタートアップカンファレンス「CALLING」

出典:フクリパ

「Fukuoka Growth Nextで2月に開催された「CALLING」というオンラインをベースとしたスタートピッチカンファレンスのWebやビジュアルなどクリエイティブ全般を手がけました。 Fukuoka Growth Nextは福岡市からグローバルに羽ばたくスタートアップの創出を目的として2017年に設立され、トゥースリーも入居企業として、拠点としている場所です。 「CALLING」のメインビジュアル(上記画像)は、社会構造が大きく移り変わるなかで、混沌と希望が渦巻く世界を表裏一体のものとして捉え、浮遊する球体とノイズを用いて「希望(球体)の中に潜む混沌(ノイズ)」を表現しました。」

「1時間でマリオ全クリ」にゲーマー辻アナが挑戦! ~前編~

https://www.youtube.com/watch?v=luF-uKrZucY

「また、地元テレビ局のRKBから「RKBオンライン」のコンテンツのひとつとして、『YouTubeに最適化された動画を作ってほしい』との依頼もトゥースリーの強みを頼っていただいた例。 効果音や文字の入れ方、動画の進行などYouTubeならではのみせ方があります。それをよく知っている、実際に作っている僕たちの目線で、YouTuberや動画制作者のスタッフが作成しました。 動画のプロであるテレビ局から依頼されて嬉しかったですね。」

スマートバイク「welb」

https://www.youtube.com/watch?v=SwoTljzSL1E

「そして、電動自転車(e-bike)を販売しているアベントゥーライフ株式会社と進めているのが、IoT化されたスマートバイク「welb」で、年内ローンチ予定で開発を進めています。 モバイルアプリを使って鍵の開け締め、受け渡しができるスマートロックが装着されており、そのハードウェアやアプリの開発、動画制作 (出演も) を手がけています。」

商店街やまちづくり団体とのコラボレーションは、笹津さんが中心になってすすめています。

笹津さん

オンラインキャリアイベント「新卒は東京からって誰が決めたの?」

出典:フクリパ

「佐賀県唐津市にある『いきいき唐津株式会社』とのコラボで、3月21日には“新卒は東京からって誰が決めたの?”というオンラインのキャリアイベントを実施しました。 全国各地の大学生が地方・都市での働き方暮らし方のそれぞれのメリット・デメリットについてシェア、大企業とベンチャーでの働き方について熱いトークが飛び交いました。 唐津市に限らず、大学を卒業してすぐに地方で仕事があるのか、どんな働き方をするのか、なかなかイメージがつかないもの。このようなイベントで気づきも多くあると思います。」

出典:フクリパ:トークイベントの様子

「今年のゴールデンウィーク明けには、『謎解きイベント』を実施予定です。企画からポスターなどのビジュアル制作まで関わっているのですが、これは単なるイベントでなく、この謎解きイベントが、外から来た若者と地域の方とのコミュニケーションツールとなるように設計しています。 このイベントを楽しみに来た来訪者が、市内を謎解きしながら、地域の人々と触れ合うようにしているんですよ。」

彼ら世代の思考から生み出されるアイデアとスキル、そして人とつながることを大切にする姿勢から、成功事例を着実に積み重ねていると感じます。

福岡を拠点にする理由とこれからの未来

福岡出身の人は3名と少ないなか、拠点にしている福岡市の良さについてききました。

出典:フクリパ

清水さん 「僕自身は愛知県出身で、前職の拠点、東京との比較でしかないのですが、福岡はありとあらゆるステークホルダーがぎゅっと近くて、何かアクションを起こそうと思うとすぐ側にいる。 例えば、福岡市役所の人とFukuoka Growth Nextで気軽に会うとか。いろんなコミュニティが近いんですね。だから仕事がものすごくしやすい。そして、少し足をのばせば、一次産業から三次産業まで揃っていて、若い人たちが活躍できる場所が多く存在しています。 また、僕たちのようなベンチャー企業に対しては福岡市からの支援が手厚く、実証実験がしやすいところも魅力ですね。」 そして、もう一つききたかったことが、今後メンバーが年齢を重ねるとどうするのかという点と、今後の展望について。 ちなみに笹津さんは取材日の3月22日の2日後には卒業してグローバル企業の人事部に勤務する予定ですが、トゥースリーには在籍して、新メンバーのサポートなど可能な範囲で活動を続けていくそうです。 “メンバーとのやりとりは基本オンラインなので、仕事でない部分での相談役としても関わり、別視点で九州を俯瞰してみるなど、今からでも繋がっていきますよ”という笹津さんのコメントをきくと、やりたいことをやれるように、もしくはやれる方向ですすめる新しい働き方を、さらりと提案して実行に移しそうな予感がします。

清水さん 「僕は今23歳ですが、来年度(9月)大学卒業した後も引き続きトゥースリーの創業者、代表として活動と経営を続けていきます。若手クリエイターが課題を解決する事業内容は今後も変わりません。 卒業する人と新しく入る人とで新陳代謝が行われていくとは思いますが、相互にやりとりをしながらトゥースリーイズムを継承していきたいと思います。 そして、この「若手クリエイターが課題を解決するモデル」は福岡だけでなく、全国でできるので、今後メンバーも10倍、100倍へと増やし、事業の幅も広げていく計画です。 最近考えていることは、自分への戒めでもあるのですが、個人や組織がどういう姿になりたいのかビジョンとして持つことが大事だということ。 SDG‘sが目指すのは2030年の持続可能な世界ですが、その時僕はまだ33歳で、その後僕は70年近く生きるかもしれない。 そういった中で、僕たちの世代は何を美徳だと思い、何を残し、自分はどうあるべきか。これを問い続けることが大切だと感じています。」

取材を終えて、Z世代の可能性とは

いつの時代でも、未来への潮流を作っていくのは若者だと思っています。仕事や今回の取材を通して、彼らが切り拓く明るい世界が見えました。 それにしても、自然体なのに、深くさまざまなことを考えていて、遊びほうけていた自分の同時代が恥ずかしくなります。 笹津さんの「ラテン気質な福岡は、ちょっと荷物を持ってあげるなど、もっと「ありがとう」のコミュニケーションが気軽になるとさらにいい街になる」という提案など、ここでは詳しく紹介できなかったこともたくさんあり、大きな刺激を受けました。 ポジティブな課題解決型の考えはいつ頃からなのかの問に清水さんは、『幼い頃から、将来はアメリカで起業して、ビル・ゲイツのように、自分の創出したサービスで世界に対して何かしら影響を与える人になると言っていた』という回答に、がぜん期待を持ちました。 これからのイノベーション、新しいシステム、働き方など、「Z世代」は、日常生活から自然に着想することも多いはず。 職場やプライベートで、彼ら世代の意見に耳を傾けて、一緒にやる、あるいは任せてみてはいかがでしょうか。新たな可能性を発見する第一歩になるかもしれません。 文=帆足 千恵

23株式会社

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

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