2019年、興行収入100億円を突破し国内外でブームを巻き起こしたアニメーション映画「天気の子」の展覧会「『天気の子』展」が2020年1月6日(月)まで大丸福岡天神(福岡市中央区)で開催中です。初日12月26日の様子をリポートします。
全国で2カ所目の福岡市開催
アニメーション監督・新海誠が手掛けた「天気の子」は、東京へ家出してきた少年・森嶋帆高と、祈るだけで空を晴れにできる少女・天野陽菜の物語。 東京に続き全国で2番目の開催地が福岡。会場には新海監督が作った企画書をはじめ、美術背景、作画資料のパネルなど約400点強が展示されるほか、劇中の映像も鑑賞できます。 場内にはロックバンド・RADWIMPS(ラッドウィンプス)が担当した劇中歌や主題歌が絶えず流れていました。
「東京で生きる」
「東京で生きる」と題された最初の章では、本作の大きな魅力でもある美術背景が主に展示されていました。ネオン街や雑踏などが精緻(ち)に描き込まれた背景は、物語にリアリティーを持たせ、私たちの世界とこの物語が地続きであることを感じさせます。
入り口すぐの場所に並べられたメインビジュアル3枚は圧巻の迫力で、広がる積乱雲へ向かう陽菜の姿が描かれた巨大パネルには、しばし見入ってしまうほどでした。
解説のように各パネルの横に貼られている「新海監督の言葉」は、各媒体で新海監督が語った作品への思いや舞台裏のエピソード。
東京を舞台にすることについて「2020年に東京オリンピックを控えていて、東京という街自体が、良くも悪くもこれから大きく変わっていくでしょう。(中略)現実の東京が様変わりしてしまう前に、自分が作る作品の中で違う姿になった東京の姿を見せたいという気持ちが何となくあったんです」(出典:映画公式パンフレット)と語っています。
新海監督の過去作でも頻繁(ひんぱん)に描かれてきた東京という街ですが、今作では今までになかった東京・歌舞伎町などの様子も描かれています。これは「帆高が東京を発見していく話にもしたい」という監督の意向が反映されているからだそうですよ。
壮麗な美術背景は、静止画として間近で見ると細部まで描き込まれているのが分かります。雨のにおいや空気の冷たさまで伝わってくるようです。
基本的に、パネルは物語の進む順に展示されていて劇中歌もシーンに合わせて流されています。音楽を聴きながらパネルを見ていると、映画中で交わされていたセリフが頭の中に蘇ってきます。
「100%の晴れ女」
「100%の晴れ女」の章では、陽菜と帆高が始めた「お天気ビジネス」を追いながら、天気にまつわる民間伝承や文化・風習にも触れています。
晴れを祈って作るてるてる坊主は、中国の「掃晴娘(サオチンニャン)」という人形に由来しているとか。ある民俗学者は「陽菜のキャラクター形成にも取り入れられているのでは」と考察していました。
物語で描かれる「お盆」、気象神社の天井に描かれた龍神の再現などがメイキング映像とともに解説されていて、「改めて映画を見たら、深い見方ができそう」と思いました。
「愛にできることはまだ…」
「愛にできることはまだ…」の章では、本作を「どエンターテインメント」と位置付けた新海監督の思いに迫っています。
主題歌「愛にできることはまだあるかい」は、「天気の子」におけるテーマでもあるといい、陽菜を失った帆高が奔走(ほんそう)する様子が描かれたパネルとともに、同曲がこの一角を満たします。
「空の彼岸」
「空の彼岸」の章で物語も本展もクライマックスへ。全編にわたり壮大な映像美で表現されている「空の世界」の「秘密」と帆高と陽菜2人の選択を、特大スクリーンと劇中歌「グランドエスケープ」で感じてください。
「それでもこの世界で生きる」
「それでもこの世界で生きる」ので章は、雨が降り続けて変わってしまった東京で、ラストシーンに帆高が陽菜に投げかける言葉について触れます。
天候について学ぶコーナー、グッズ販売も
監督の過去作品のパネルも少しですが展示されていました。“新海ワールド”に存分に浸ることができますよ。
天気の気象実験を気軽に試せるコーナーも。日本気象協会の協力で作られた装置は、物語の天候を再現していて、雨粒の形も見ることができました。
グッズコーナーは本展オリジナルをはじめ、さまざまなクリエーターが作品をイメージして制作した貴重な品も販売されています。種類の多さにどれを買うか迷ってしまいますね。
充実した展示内容で、ファン必見の内容です。貴重な機会なのでぜひ足を運んでみて。
「天気の子」展
日時:~1月6日(月) 10:00~20:00 ※1月1日(水・祝)は店休日、最終日は17:00閉場 場所:大丸福岡天神 本館8階特別会場(福岡市中央区天神1-4-1) 料金:一般800円、中高生500円、小学生以下無料 ※税込み 問い合わせ:大丸福岡天神 電話:092-712-8181