「見えづらい」という後遺症が残りやすいからこそ、早期の手術で視力悪化の進行を止めることが重要【川原眼科】

 網膜の中心部である黄斑の上に膜が張る病気「黄斑上膜」は視力低下や中心暗点、ものがゆがんで見えるなどの症状が現れます。しかし、症状のない片方の目は見えているため何年も放置し悪化させてしまうことも。予防が難しいこの病気の治療法について「川原眼科」の川原周平先生にお聞きしました。

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【眼科専門医】川原眼科 川原周平先生

 長崎県出身。九州大学医学部卒業。同大学病院、国立病院機構小倉医療センターなどで研鑽を積み、2016年に「川原眼科」を開業。網膜硝子体手術など専門的手術療法を得意とし、近隣のみならず福岡県外からも患者が訪れる。

目の病は進行が遅く放置しがち だからこそいち早い診断を

 「硝子体」とは眼球の容量の5分の4を占めるゼリー状の組織が詰まった空間です。硝子体のさらに奥(眼底)にある「網膜」という神経の膜は重要な組織で、この網膜が剥がれたりシワがよったり、損傷することで視力に大きな影響を及ぼします。その進行を止めるには網膜硝子体手術といわれる大変高度な手術が必要になります。

 当院で行われる網膜硝子体手術患者で最も多い原因が「黄斑上膜」で、全体の8~9割を占めています。網膜の中心部である黄斑の上に膜が張る病気で、視力低下や、ものがゆがんで見えるなどの症状が現れます。ゆっくり進行し、症状がない片方の目では問題なく見えているため、つい患者が何年も放置し悪化させてしまうのも特徴です。

高度な技術が必要な手術 早期診察で後遺症をより軽く

 患者の年齢は30代から80代まで幅広く、黄斑上膜以外の疾患として網膜剥離、硝子体出血、糖尿病網膜症、黄斑円孔などがあります。網膜硝子体手術によって治療しないと病状は徐々に進んでいき、治療の時期が遅くなると合併症を起こしてさらに治療が困難になることもあります。

 網膜硝子体手術は白目の部分に1ミリ程度の細い器具を入れ、硝子体の切除や網膜の治療を行うものです。眼科治療の中では最も高度な手術のひとつで、例えば白内障手術は10分ほどで終わることが多い一方で、網膜硝子体手術は症状によりますが30分~1時間ほど要します。医師の手技が左右する大変繊細な手術を当院のように日帰りで行えるクリニックはあまりなく、病院選びも重要なポイントです。

 手術をすると見え方が回復する白内障とは異なり、一度網膜が損傷すると「見えにくい」という症状はそのまま後遺症として残ります。しかも網膜の病気の予防はほとんどありません。見え方に違和感があればすぐ専門医へ。

硝子体に影が映る飛蚊症。数が増えたら注意!

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