博多祇園山笠の手ぬぐいがパンツに!?福岡から未来に広がる「ぐいパン」プロジェクト

「手ぬぐいが、ちっちゃなパンツに大ヘンシン」、そんなキャッチフレーズで2017年にデビューした「ぐいパン」。イベントで出会い意気投合した人たちが始めた「ぐいパン」プロジェクトは、福岡市トライアル優良商品の認定を受け、今やグッドデザイン賞やキッズデザイン賞を受賞するまでに。今回は、ライターの佐々木 恵美さんが、プロジェクトのリーダーで、いつも楽しそうに活動されている「かんべ笑会」の神戸海知代(かんべみちよ)さんに、ご自身やプロジェクトについて伺いました。

出典:フクリパ
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第一線でコピーライターとして活躍し、夫の仕事で福岡へ

コロンとしたかわいいフォルム、にぎやかな絵柄で、見ているだけで楽しい気分になってくる、ぐいパン。もともとは博多祇園山笠で余った手ぬぐいから生まれたというから、驚きだ。毎年夏、博多の町を熱くする伝統の祭り・博多祇園山笠。700年以上の歴史があるこの祭りでは、さまざまなデザインの手ぬぐいが作られている。 神戸さん 「毎年、山笠用の手ぬぐいがたくさん作られるのですが、一部はタンスの肥やしになってしまうという話を聞いて、これで何かできないかなと思ったのがぐいパンプロジェクトの始まりです。」

出典:フクリパ:色鮮やかな小紋の手ぬぐいたち

東京の大手広告代理店で、コピーライターやクリエイティブディレクターとして活躍していた神戸さん。シャープやヤマサ醤油、立命館大学などの広告で、数々の賞も受賞している。そんな神戸さんが福岡にやってきたのは、2015年末のこと。ご主人の仕事の都合で、息子さんと3人引っ越してきた。 神戸さん 「私は関西生まれで福岡に縁もゆかりもなく、40代後半で転職というのも難しいかなあと思って、株式会社かんべ笑会を立ち上げました。ほら、大塚商会みたいで響きがよく覚えやすいし、『かんべに会えば、笑いあり』ってことで(笑)。」

余っている手ぬぐいで作ったパンツが子どもに大好評

好奇心旺盛な神戸さんは、仕事や子育ての傍ら、福岡のいろいろな場に出かけた。そのうちのひとつ「FUKUOKA NEXT」は、市民が集まって福岡のまちをよくするためのアイデアを出すイベントで、気の合う仲間ができた。そして夏になり、知人から山笠の手ぬぐいがたくさん余っていると聞き、仲間と話していたときのことだ。

出典:フクリパ:神戸さんの息子さんも協力しながら開発した、「ぐいパン」の試着第一号

神戸さん 「もったいないねえ、という話から、約90×35cmの手ぬぐいを丸ごと活用して、子どもたちのパンツにリユースしてみようというアイデアが湧いたんです。手ぬぐいは綿100%で通気性がよく、肌なじみもいい。それで譲っていただいた手ぬぐい2枚でロックミシンをもっているメンバーにパンツを縫っていただき、1歳でつかまり立ちを始めたばかりの息子にはかせてみたら、すごく快適だったみたい。 普段はすぐパンツを脱いでしまってオムツで過ごすのに、ぐいパンは起きても寝てもはいてたんです。だから、商品化してみようと盛り上がりました。」

出典:フクリパ
出典:フクリパ

稼ぐためというより、親子に良いモノを届けたいという思いで始まった、ぐいパンプロジェクト。 神戸さん 「プロジェクトが走り始めたら、ありがたいことに世代も職業もさまざまな方々が知恵や力を貸してくださいました。製品づくりの過程で試着してもらった小さな子どもたちは、嫌なものは容赦なく脱いじゃうから、分かりやすくて助かります(笑)。ぐいパンは、本当に多くの皆さんのおかげで成り立っています。」

出典:フクリパ:ぐいパンのポスター。かんべ笑会のホームページには、ユニークなコピーが添えられた数多くのぐいパンのポスターが掲載されている

まず、使っている山笠の手ぬぐいは、福岡でおなじみの童画家の故・西島伊三雄さんが描いた子どもたちや子どもの成長を見守るおとなたちの絵がデザインされている。息子の雅幸さんにぐいパンへの使用許可に伺ったところ、快諾してくれたという。 小紋の手ぬぐいは、大阪にある老舗の手ぬぐいメーカー・宮本株式会社から仕入れる。日本古来の丹精込めた和ざらし加工で、さらっとやさしい肌触りが特長だ。 SNSがきっかけでプロジェクトのメンバーになった仲間の紹介で、福岡の香蘭ファッションデザイン専門学校の先生やOBOGなどのプロがパターンや縫製をバックアップ、1年生の縫製の授業にもぐいパンが採り入れられている。 そして、縫製を担当してきたのは、20~80 代までの“匠チーム”。縫製工場に頼むのではなく、個人で服の仕立てやお直しなどをしているプロフェッショナルにお願いしている。

クラウドファンディングを活用して、大人用のぐいパンにチャレンジ

2017年2月に佐賀で行われたイベントを皮切りに、博多リバレインや博多阪急、大阪高島屋、東京KITTE丸の内などに出展してきた。2017年度に福岡市トライアル優良商品に認定されて、今はネットで販売している。

出典:フクリパ:ぐいパンのポップアップショップの店頭にたつ、神戸さん

2019 年春には、Makuakeを利用したクラウドファンディングにも挑戦した。 神戸さん 「ぐいパンは子ども向けに作ったけれど、そんなに気持ちがいいなら大人もはきたいという声がたくさん寄せられまして。ただ、大人向けとなると手ぬぐいがもっと必要で、パターンも一から考えなければいけないし、縫製チームの手間も時間もかかります。だから、まずはクラウドファンディングでニーズを確かめつつ、大人用ができたことを広く伝えたかったんです。ちょうど Makuake の方に出会ったこともあり、アドバイスをいただきながら準備を進めました。」

出典:フクリパ

女性用に使う手ぬぐいは8枚、男性用なら5枚。思った以上に試作に時間がかかり、ぐいパンのベストシーズンである梅雨から夏前に発送を終えるために、クラファンの期間は7週間と短めになった。それでも目標金額30万円の倍以上となる61万3,850円で204%を達成。106人ものサポーターが応援してくれた。

出典:フクリパ:女性用のぐいパンは、ゆったり履けるのに裾がすぼまって足もとがすっきり見えるデザインに仕上げられた

神戸さん 「まわりにクラファンをしたことのある人がいなかったし、アパレルのクラファンは難しいと聞いていました。でも、100人を超える方が応援してくださって、本当にうれしく心強く感じました。全国の面識のない方からの応援も多くて、コメントも励みになり、その後の活動を支えるエネルギーになっています。」

出典:フクリパ:男性用のぐいパンは、クリエイティブなビジネスシーンからプライベートまで、幅広く自由に履きこなせるスッキリとしたシルエットに

クラファンでは、想定外の出来事もあったという。 神戸さん 「終わってから発送の段階が大変でした。実は、サイズがLまでしかなかったんですが、Lサイズでは小さかったので交換してほしいとご連絡いただいたサポーターの方がいらっしゃって。 どうしようと思いましたが、協力してくださっている香蘭ファッションデザイン専門学校の先生に『やってみましょう』と応援いただき、新たにLLサイズのパターンを起こして一から仕立ててお届けしました。やっぱり一人でも多くの方にはいてもらえることが一番うれしいですから」

ぐいパンの可能性は無限大、みんなで子育てする社会へ

「2020年度にグッドデザインとキッズデザイン賞を受賞できたのは、クラファンで応援してくれたサポーターの皆さんのおかげだと心から感謝しています」としみじみ話す神戸さん。 神戸さん 「クラファンは、新しいことを始めようと考えている全ての人に、平等にチャンスがあります。目的を持ってチャレンジするのは素晴らしいことですし、機会があれば可能性を確かめてみたいです。失うものはないし、そこで必ずヒントが見つかります。私たちもそれを体験しましたし、改めて広がりを実感する面白さに気付きました。コラボでチャレンジしてもらえるところを今も絶賛募集しています」 ぐいパンの誕生から4年が経ち、これまで世に出たぐいパンは1,000枚を超えた。マスク需要の高まりを受けて、2020年2月から作り始めた「ぐいスク」は 3,000枚のヒットになっている。東京から福岡に引っ越し、1歳からぐいパンの開発に付き合ってくれた神戸さんの息子さんは、この春、小学生になった。

神戸さん 「息子が博多弁を話すのを聞いていると頼もしいし、彼は福岡をふるさとだと感じているんだなあとつくづく思います。私は関西で23年、東京で23年過ごし、それから福岡に来て、ぐいパンを通じてたくさんの仲間ができました。」

出典:フクリパ:博多阪急で行われた、ぐいパンオーダーメイドショップの様子

「ぐいパンは、無限の可能性を秘めていると感じています。一つは日本文化の継承。各地のお祭りで使われている手ぬぐいをぐいパンに仕立てたら、大人も子どもも伝統文化を身近なものとして楽しむことができます。他にも、農業や漁業など生きる力を育む一次産業の場で、子どもたちがぐいパンを元気にはいて、泥んこやびしょ濡れになって体験するというのもいいですよね。 ぐいパンはゴシゴシ洗えてすぐ乾くし、野菜とか海の生き物とかのオリジナルの絵柄で作ってみるのも面白そうじゃないですか。このプロジェクトをきっかけに、親だけでなくみんなで子どもを育てるような社会になったらいいなという思いも強くなりました。そんなことをみんなでワイワイ話し合うことも楽しいんですよね。」

のびやかな笑顔で、目をキラキラ輝かせながらまっすぐに思いを語ってくれた神戸さん。福岡にゆかりがなくても何歳になっても子育て中でも、一歩踏み出す勇気と思いさえあればノリのいい福岡の仲間が集まってきて、面白いことが“ぐいぐい”と展開できるのだなあと感じました。 文=佐々木 恵美

かんべ笑会ホームページ

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

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