睡眠時、人は脳の老廃物を活動期のおよそ2倍の速さで取り除いています。それほど人にとって重要な睡眠は不足すると様々な病気につながることも。睡眠について福岡浦添クリニックの山口祐司先生にお聞きしました。
【総合内科専門医】睡眠障害センター 福岡浦添クリニック 山口祐司先生
福岡市出身。自治医科大学卒業。浜の町病院、熊本大学病院、ハーバード大学医学部ベスイスラエル病院などで研鑽を重ね、2000年より「福岡浦添クリニック」院長就任。「グッドスリープ・グッドライフ」をモットーに日々邁進中。日本睡眠学会専門医。アメリカ睡眠学会会員。
7時間以下の睡眠の人は認知症発症率が1.8倍
睡眠の定義は「外的環境からの感覚が閉ざされ、動きや意識が抑えられた生体行動」ですが、人は眠っている時間、ただ体や脳を休めているだけではありません。
脳内で作られるタンパク質の一種「アミロイドβ」が排出されず脳内に蓄積されることで、アルツハイマー型認知症のは発症に繋がることはよく知られています。人間の脳は睡眠時も、脳の動脈がしっかり脈打ち、静脈へ流れることで脳リンパ液の中が還流し、その動きがアミロイドβなどの老廃物を脳から排出しています。睡眠時に行われる、そうした老廃物除去速度はなんと活動時間の二倍の速さ。毎晩私たちの脳は、眠ることで”掃除”されているのです。
しかし、日本人の平均睡眠時間はこの50年間で平均8時間から7時間へと減り、現代人は睡眠不足状態であるという統計がでています。米・ミネソタ大学の研究によると、8~9時間睡眠の人が認知症を発症する割合を1とすると、7時間以下睡眠の人は約1.8倍も発症率が高いという結果が出ています。こうした睡眠不足の積み重ねは将来の大きな「負債」と考えられます。
短い仮眠をとることで睡眠不足解消にひと役
認知症の発症確率をなるべく抑えるような、質のいい睡眠の条件とはどのようなものでしょう。「7~9時間の十分な睡眠時間」「中途覚醒がない」「毎日一定した睡眠スケジュール」という3つの因子があげられますが、夜勤がある、薬のせいでどうしてもトイレに起きてしまうなど、年齢や環境によってその条件を満たすのが難しい方もいます。
そうしたケースで、生活に取り入れやすいのが「昼寝(仮眠)」。机につっぷすだけの15~20分ほどの仮眠は仕事や勉強のパフォーマンスを大きく向上させてくれ、福岡市も「パワーナップ」というスローガンで市民に昼寝を推奨しています。反対に「休みの日に通常の睡眠時間の2時間以上を超えて眠ること」は、睡眠スケジュールがくずれ逆効果です。イキイキとした脳で年を重ねましょう。