生き様で魅せる!「ドットコミュ」の世界を熱狂させるソーセージ

広島にソーセージに命をかける男がいるとの噂を聞いた。元格闘家という中山浩彰さんは、狩猟に出会い、そのエンターテイメント性の高さの虜になり、ドットコミュという肉加工場をオープンさせた。さらにその翌年、消費者にもっと身近な形でジビエ肉を届けたいとの思いからソーセージの開発に着手。まったくの素人ながらも、素材にとことんこだわり、試行錯誤を重ね“食べるとみなぎる”究極のソーセージを生み出した。今回は、フクリパ編集部が「アンチ普通」「危機感がエネルギー」そんな唯一無二の社訓ならぬ、憲章を掲げる、ドットコミュの戦略についてうかがった。

出典:フクリパ
目次

格闘家から、ソーセージクリエイターへ。華麗なる転身

高校時代から格闘家に憧れていた中山さん。「仁義なき戦い」のイメージから、広島に行けば強くなれると思い込み、広島の大学に進学。卒業後は1度就職したものの、1年半ほどで退社し、そこから格闘家としての道を歩んだ。 中山さん 「格闘家として6年ほど活動していました。もちろんそれだけでは食べていけず、現場仕事と掛け持ちしていたんですが、格闘家仲間に狩猟に誘われたことを機に、そっちにどっぷりハマって、狩猟免許までとったんですよ。そしてそのまま、肉加工場のドットコミュを立ち上げました。」

出典:フクリパ:ドットコミュ代表・ソーセージクリエイターの中山浩彰さん。通称「鹿さん」と呼ばれている

鹿や猪などの生肉を加工して販売しているうちに、もっと身近なかたちにして世に送りだしたいと思うようになった。 中山さん 「より多くの人に親しみやすいかたちで届けたいと考え、ソーセージつくりを開始しました。最初は本を見ながらつくって…そこからは完全に独学です(笑)。知識と経験がない分、とにかく圧倒的試行錯誤でつくり続けました。 余計な添加物は使わず、広島近郊のフレッシュなハーブなどを使い、とことん素材にこだわりました。肉屋経験もソーセージ修行もしたことがないが故に、とにかく自分たちが追求したいものだけを追求しました。」

出典:フクリパ

ストーリーではなく、生き様で勝負する

しかし、すぐに思うようには売れたわけではなかった。中山さんは客観的に分析し、こう考えた。

出典:フクリパ

中山さん 「元格闘家で筋肉マン、そういうインパクトの強さや個性的な経歴でおもしろがってくれる人はいるものの、おいしいソーセージをつくったからといって、すぐに“買おう”とはならない人がほとんどです。」

出典:フクリパ:中山さんと、共同経営者の野村俊介さん。ともに元格闘家だけあって見事な筋肉だ

中山さん 「同じようなソーセージをつくっていた人がいたとして、「本場ドイツで10年修行した」っていうバックグラウンドを持っていれば、すぐに売れたと思うんです。だからぼくたちは、元格闘家で猟師で…っていうストーリーではなく“生き様”で売っていこうと決心。そこで誕生したのが「ドットコミュ憲章」です。」

出典:フクリパ

中山さん 「ドットコミュ憲章というのは、ホームページにも掲げているルールみたいなもので“ソーセージは単なる商品ではなく、生き方の結果だ”ということを伝えたくて考えたものです。」

こうして文章にしていくことは、中山さんにとってはとても大事な作業。自分を、そしてドットコミュを客観的に見る力が養われるだけではなく、頭の中の整理にもひと役かっているのだそう。 中山さん 「お店としても、商品としても少しかたちになったころに、伊勢丹新宿店のフードコレクションに出店しました。商品のほとんどがソーセージなのに、です(笑)。 しかし、早くからそういった場所で販売させてもらったことで「ちょっとこれは味が濃かった」「しょっぱかった」など、お客様からのフィードバックがいただけたことで、どんどんドットコミュのソーセージがブラッシュアップされていったんです。 中には「こういうソーセージがほしい」など、新作のアイデアになるような意見もいただけました。これが本当にいい経験になりましたね。」

出典:フクリパ

銀行に融資を断られ、クラウドファンディングに挑戦

だんだん店舗が機動にのってくると、完全「手づくり」が厳しくなり、機械を導入したいと考えるようになった。聞いてびっくり、その機械を導入すれば、なんと4時間かけていた作業が3分ほどに短縮可能なのだとか。 中山さん 「銀行の担当の方がドットコミュのことをすごく応援してくれていたので、すぐに融資もおりるだろうと思っていたのですが、650万円ほどする機械を導入したいという話をすると、お店の規模に合っていないと反対され、結局融資はおりませんでした。 そこでぼくもムキになって、資金調達は銀行だけじゃないんだからな!と、クラウドファンディングに挑戦しようと決心。そこからすぐに行動し、3日くらいでほとんど形にしました。」

出典:フクリパ

クラウドファンディング自体は初の取り組みだったが、せっかくやるならみんなに面白がってもらいたいと、リターンも工夫。ソーセージ以外にも、オリジナルグッズや、ドットコミュで働ける「「君もドットコミュcrewだ」券」、「支援者オリジナルソーセージ作成」など、バラエティに富んだリターンが用意された。 結果、目標の260万円を上回る480万円ほどが集まった。 中山さん 「失敗することはまったく考えていなかったんですが、ここまで集まるとは思わなかったですね。支援してくれた方も、知り合いの方はもちろんたくさんいましたが、それ以外の方もたくさんの方が支援くださり、本当にうれしかったです。 無事機械も購入し、ソーセージづくりは驚くほどにスムーズになったのですが、その機械の性能が本当に素晴らしかったので、当時の売上に見合っておらず、持て余す結果となってしまいました…。ただ、ラッキーなことに、その2ヶ月後にテレビ出演させていただいたことで、売上も上がり、機械の稼働率もグッと上がりました(笑)。」

https://www.youtube.com/watch?v=4DVV0NzRl9w

そして、2020年10月には、2号店を福岡に出店することを目的に、2度目のクラウドファンディングに挑戦。 中山さん 「広島のドットコミュは、製造がメイン。ソーセージの販売もしていますが、直売所のような状態なので、いちから店舗をつくってみたいと前々から思ってました。 コロナ禍で世間が大変だ〜っていう時期になぜか「やるなら今だ」と直感がはたらいて、何も決まっていない状態でYouTubeをアップしました(笑)。しかもその翌日に、福岡店の店長をやりたいという若者が現れて、そのままお願いすることにしました。それが現店長の奥島敏弘です。」

出典:フクリパ

奥島さん 「当時、大学4年生だったんですが、就職活動はしないと決めていて、ワーキングホリデーに行く資金を貯めるために面白そうな仕事を探していました。」

出典:フクリパ

そんな時にドットコミュがスタッフを募集していることを知り、応募。

出典:フクリパ

奥島さん 「「ドットコミュの福岡点で働きたいです!」と立候補しました。直感的に楽しそうって思ったことと、福岡でひとり暮らしも悪くないな、と思ったことが理由です(笑)。」

中山さん 「「共通の知り合いもいたので「アイツの知り合いだったら間違いないだろう」ということで、お互いフルネームも知らない状態で、福岡店の店長が決定しました(笑)。 すべてがトントン拍子で決定していったが、決して全くの無計画の思いつきではなく、広島の店舗で製造などをすべて行えば、福岡では冷凍ソーセージの販売とホットメニューのテイクアウト、デリバリーに専念できる、という考えのもとスタートした2号店計画。」

出典:フクリパ

物件は大濠公園からもほど近い場所。ドットコミュのソーセージBOXをテイクアウトして、ぜひ大濠公園で食べてほしいなという思いで、物件を選んだのだそう。 しかし、ソーセージなどの輸送費用などを考えれば、広島市内に出店するのが一般的ではないだろうか。なぜ2号店の場所に福岡を選んだのかをうかがってみた。 中山さん 「これからは地方都市が面白い、と感じているからですね。福岡なら、広島から新幹線で約1時間弱ですし、初の2号店としてなるべく業務のことやスタッフのケアなども考えるとベストな距離。 あとは、ぼく自身が普段から「不安」と「緊張」と「混乱」を感じながら仕事したいタイプっていうのも理由のひとつですね(笑)。安心安全な道では、自分がわくわくしないんですよね。」

出典:ドットコミュ2号店(大濠公園店)で提供されている「盛合せBOX」

2度目のクラウドファンディングも大成功、しかし、どこか不満が残る結果となったという。 中山さん 「もちろん結果には大満足していますし、支援していただいた方たちには本当に感謝しています。 ただ、自分自身に不満が残ってしまったというか…最初に挑戦したクラウドファンディングの時には、とにかく“やってやる!”という熱い想いを抱えていたんですが、2回目となると、自分自身のわくわく感が減って、どこか守りに入ってしまっているように感じたんです。 リターンに関しては、前回にも増してユニークなものを取り入れようと、最短5分で終わる「世界一狭い工場見学」や「ドットコミュ結婚式」など、ほかにはないものを盛り込みましたが、ぼくの性格上、何度も同じことにチャレンジするっていうのは向いてないのかもな、という発見にもなりました。 もし次資金調達したいということになれば、クラウドファンディング以外の手段でやってみたいですね。」

出典:フクリパ

最後に今後の展開についてもうかがった。 中山:柔術でチャンピオンになりたいですね。 ―えっ? 中山:自分の中で1番優先順位が高い目標です(笑)。ジョコビッチがグルテンフリーの本を出したじゃないですか。すごく衝撃だったんですよ。だからぼくは柔術で優勝して、その裏側では当たり前のようにソーセージ食ってる、みたいな“生き様”を見せたいな、と思っていて(笑)。 ―なるほど…(笑)。ちなみに福岡店はこれからの展開についてはお考えですか? 中山:近いうちに、福岡店をKIOSKみたいなお店にしたいな、と思っています。広島のクリエイターたちがつくる雑貨などを店頭に並べて販売する予定です。そうすれば、広島らしさも少し感じてもらえるお店になるかな、と。 ―それは楽しいですね!この広さも、ちょうどKIOSKっぽい感じで。ドットコミュとしての展望についても教えてください。 中山:まず、5周年記念のイベントを開催したいと考えています。内容についてはまだ検討中なんですが、直径2.5cmのソーセージをぐるぐる巻いて、直径5mのソーセージをつくりたいな、と思っているんです。 ー直径?ですか? 中山:そうです(笑)。一体何メートルのソーセージをつくればいいんでしょうね。肉は約400kg必要みたいです。 くわしくはドットコミュのブログにて それから、3号店を福岡以外の地方都市に出店する予定です。…でも、なんかちょっとおもしろくないかもな、とも思っていて(笑)。せっかくならソーセージの本場・ドイツに出店するくらいじゃないと、おもしろくないですよね。 とにかく楽しい取材だった。どんな質問を投げかけても、想像だにしない答えが返ってくる。常に石橋を叩いて渡る性格の私からすれば、「そんなことやって大丈夫?」ということも、中山さんは圧倒的に楽しんでしまう。(そんなところが少しうらやましい…)これからも彼、そしてドットコミュは、わくわくを提供し続けてくれるだろう。 文=フクリパ編集部

ドットコミュ大濠公園店

住所:〒810-0053 福岡市中央区鳥飼2-1-49 営業時間:土日 10:00〜17:00 月火木金 11:30〜19:00 水曜定休

出典:フクリパ

ドットコミュ HP

中山浩彰さん、「鹿さん」Twitter

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

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成長する地方都市 #福岡 のリアルな姿を届けます。福岡のまちやひと、ビジネス、経済に焦点をあて、多彩なライター陣が独自の視点で深掘り。 「フクリパ」は「FUKUOKA leap up」の略。 福岡で起こっている、現象を知り、未来を想像し、思いをめぐらせる。 飛躍するまちの姿を感じることができると思います。 https://fukuoka-leapup.jp

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