私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
社会人になってから毎年1回、遠くに就職したSという友人と会うことにしていた。
休みの関係で決まってお盆の時期だった。
その年も8月の頭にいつものように電話がかかってきた。
「今年もお盆に帰るけん、会おうや!」
「よかよ、他の連中にも声かけとくね」
「そら嬉しか(はやく…)みんな元気(どんな鳥…)しとうかいな(笑い声)」
「ん? そばに誰かおると?」
「部屋から一人でかけとうよ。なんで?」
「いや…なんか声が聞こえたような気がして…」
「混線やなか? また連絡するわ」
電話を切った後も何かひっかかる気がして祖母に聞いた。
「一人の部屋から電話してるのに、何人もの声が聞こえたんだ。そんな事ってあるのかな?」
「10年くらい前にH県に住んでた友人から電話がかかってきてね。久しぶりに九州に行くって言うから会おうって話してたんだけど、その時も向こうで何人もの声が聞こえたよ。嫌な感じがしたので気をつけるように言ったけど彼女は笑っていたね」
「それでどうなったの?」
「駅に向かうバスがトンネルの中で横転して彼女は大けが…結局会えずじまいだったよ」
祖母の話を聞き終えるとすぐにSに電話した。
やはり複数の声が聞こえる。
「ごめん。お盆は皆タイミングが合わんみたい。せっかくやから冬にしようや」
「そら残念(なんでそ…)やね。了解!(意味不明な子どもの声) ほな冬に(笑い声)するわ」
その年の冬にかかってきた電話からはもう変な声は聞こえず、無事皆で会うことができた。
その時に一部始終を話すとSの顔は真っ青になり、そしてつぶやいた。
「もうあの部屋に…帰りとうなか…」