高度不妊治療、初めての胚移植の結果は稽留流産でした。

 前回までは高度不妊治療と呼ばれる体外受精や顕微授精の一連の流れについて書いてきました。高度不妊治療さえ始めれば、すぐに妊娠できると思っていましたが、ここからが私の険しい道の始まりでした。今回は4年前の初めての胚移植の結果についてです。

出典:イラストAC
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初めての移植の結果

 受精卵の移植から10日後が妊娠判定日です。血液検査の結果、医師から告げられたのは、こんな言葉でした。「結果は、陽性です。おめでとうございます。ただ!! 血液検査の結果のhcgの値が今日時点で50欲しかったのですが、25しかありません。流産の可能性もあるので、また10日後来院してください。」  やったー!! 陽性だ!! 思い切って体外受精にトライして良かった!! けれど、流産の可能性?? まさかね。きっと大丈夫。翌日から少しばかりの吐気を感じるようになり、眠くもないのに気が付けばソファで眠ってしまっていたり、僅かながら体の変化を感じるようになってきました。きっと、赤ちゃんは少しずつ育ってくれている! 大丈夫と自分に言い聞かせながら10日後の検診を迎えました。  5週目になると赤ちゃんが入っている袋・胎嚢がエコーで確認出来始めるころです。ドキドキしながらドクターと一緒にモニターをのぞきます。「これかな~? まだはっきりわからないけど、たぶんこれが胎嚢ですね~」微かに、胎嚢らしきものが! 念のため血液検査をすることに。hcgの値はおよそ500。医師の期待値では1,000だったそうです。またしても数値が低い。とはいえ、妊娠は継続しているのは間違いありません。確実に胎嚢が確認できるまでは、子宮外妊娠の可能性もあるとのこと。まだ妊娠を喜ぶわけにいかず、期待と不安を抱えたまま一週間後の検診を待つことになりました。

稽留流産

 次の診察の2日前から明らかに「出血」と呼べるほどの鮮血が出始めました。「ダメかもしれない」という不安を抱えながら病院へ。胎嚢・心拍確認できますように… と祈るような気持ちで診察台へ。医師がカーテンを半分開けて、エコーのモニターを見せてくれます。素人の私でも「これが胎嚢だ!」とわかるほどの黒い豆の様なものが見えました!  しかし、胎嚢中に白っぽく大きくなったり小さくなったり動いている赤ちゃんが見えなくてはならないそうなのですが、何も見えない。8週目に入るというのに心拍の確認ができなかったのです。  その後、診察台を降りて別室でドクターから説明を受けました。稽留流産です。自然流産を待つ手もありますが、酷い腹痛や大量出血がいつ起こるかわからないし、全部流れ出なかった場合、子宮に癒着してしまって、次の妊娠が上手くいかなくなるリスクもあるため、摘出手術をすることになりました。  まだ喜ぶには早いと解っていても嬉しかった妊娠。突然告げられた流産の診断は受け入れがたいものでした。  妊娠初期の流産は10~15パーセント。10人子供を産んだ人でも1回は経験する確率です。そのほとんどは、卵の染色体異常。お母さんのせいではありません。37歳から妊娠率は低下し、流産確率は上昇するそうです。データを見れば、仕方のないことだし、現実を受け止めなくてはいけないのに、突然押し寄せてくる悲しみをどう処理して良いのかわかりませんでした。  手術の日程は、その場ですぐに決めなくてはなりません。まだお腹の中にあかちゃんはいるはずなのに、もうダメだなんて。現実を受け入れられないまま、手術の日程を決めました。

摘出手術

 摘出手術は4日後になりました。まだ悪阻の症状は続いていましたが、前の診察の後から一気に出血量が増え、普通の生理のような状態になっていました。この数日の出血量から赤ちゃんが成長できる環境でなくなったことは間違いない。赤ちゃんは生理としていつの間にか流れ出てしまったのだろうか、まだ内膜に残っているのだろうか?  消毒、麻酔、3呼吸したら意識はなくなり、目が覚めたら「終わりましたからね、大丈夫ですか?」という看護師さんの声。あぁ、いなくなっちゃんたんだ…。ごめんねぇ…。悲しさと、麻酔による具合の悪さで2時間ほど眠りました。目が覚めたころ、母に迎えに来てもらいました。母の顔を見た瞬間に、本当なら孫を腕に抱いて喜ぶだけでいいはずなのに、こんな経験をさせて申し訳なくなりました。  一週間後にまた診察へ行き、子宮の状態をチェック。順調に回復していたので、それまで禁止されていた入浴もOKを出してもらえました。やっと自分の身体を労ってあげられる。初めての胚移植を経験した1か月はとても長く感じられ、肉体的にも精神的にもダメージが大きい日々でした。    早速、次のスケジュールの相談が始まります。正直、精神的にはかなり参っていたので、少しお休みしたい気持ちもありました。しかし年齢的にも急いだほうがいいし、休まず次の移植をすることを決めました。  次回は、2回目以降の移植の結果について書いていきます。

参考資料

『厚生労働省 不妊治療に関する取組み』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html 『公益社団法人日本産科婦人科学会 不妊症について』 http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15

不妊治療ってどんなもの?③ 胚移植から妊娠判定まで。

不妊治療ってどんなもの?② 体外受精・顕微授精の採卵とは?

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

福岡を拠点にフリーアナウンサー・タレントとしてテレビリポーター、イベントMC、ラジオパーソナリティ、コラム執筆など多方面で活躍中。健康管理士、食生活アドバイザー。自身の不妊治療の経験を通して、より多くの方に不妊治療に対する理解を深めて欲しいと発信している。

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