食や農の現状を伝えたい。「冷凍スムージー」を通して考える少し先の未来

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界を揺るがしている昨今。これまでイベント・PRプランニングをしていた木下拓也さんと、パーソナルトレーナーの大島弘也さんは、「自分たちで明るい未来と健康を作るビジネスを立ち上げよう!」と、立ち上がりました。目をつけたのはスムージー。農家さんや直売所などを巡り、話しをうかがったことで生まれた新たな想いや夢…。今回はフクリパ編集部が、これまでとはまさに“畑違い”の事業に取り組む、お2人にお話をうかがいました。

出典:フクリパ
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明るい未来と健康をつくりたい

福岡でイベント・PRプランニングをしていた木下拓也さんは、新型コロナウイルスの流行によって多くの仕事を失い、新たな事業について模索していました。一方、大島弘也さんは、東京でパーソナルトレーナーとして活動しながら、地元の熊本にも拠点を構える準備中。しかしこれもコロナの影響で思うように進まず歯がゆい思いをしていたのだといいます。

出典:フクリパ:株式会社すりあしの共同代表、木下拓也さん(左)と大島弘也さん

木下 「大島とは大学時代の同級生。お互いまったくの異業種ながら、普段からよくビジネスの話しをする仲でした。コロナでお互い仕事が減っていた時にたまたま電話で話していて。ぼくのニューヨーク在住の友人経由で知った、アメリカの冷凍スムージーの通販会社の取り組みが面白そうだよ、と話しているうちに2人で盛り上がったんですよね。」 大島 「“田舎でのびのびと子育てをしたい”と、妻と子供たちを実家の熊本に移住させたタイミングでコロナが流行。ぼく自身も熊本にも拠点を持つ予定だったんですがなかなか思うように動けない状況になってしまって。家族に健やかに過ごしてほしいとの思いで移住させたのに、家族の健康面さえも把握し切れずもどかしい日々を過ごしていました。そんな時に木下からスムージーの話しを聞いて、これは!と思ったんです。」 2人の思いが重なり、株式会社すりあしを設立。スムージーを通して、健康になってほしいというのはもちろん、コロナ禍でも前を向いて事業に取り組んでいる自分たちの姿を見て、何かを感じてもらえれば、との思いで、このタイミングで新事業をスタートさせたのだといいます。

冷凍スムージーとは?

出典:フクリパ

アメリカなどではちょっとした食のトレンドとして注目されている冷凍スムージー。冷凍スムージーとは、採れたての野菜や果物をカットし急速凍結。ご自宅でパッケージから取り出し、ミキサーにかけて召し上がっていただくもののことです。冷凍技術が進化したことで、鮮度もそのまま、時間が経っても素材本来の味わいや栄養素が摂取できるのが特徴です。

“スムージー”に出会って感じた、無限の可能性

冷凍スムージーを軸に、2人はたくさんのアイデアを出し合いました。そこで一致したのが「自分たちがただ儲かるというだけではない、社会的な意味を持つ事業をしたい」ということ。

出典:フクリパ:木下さん、大島さんが声がけして集まったメンバー

木下 「ミキサーにかけることですべてスムージー状になるので、栄養価が高いとされる皮や、芯の部分まで丸ごといただけます。味は好みに合わせてカスタマイズも可能。足りない栄養はトッピングや割る水分によって補うことも。スムージーを飲み歩いたり、情報収集したりしていくうちに、無限の可能性を感じるようになりました。 そんな中で、冷凍スムージーを通販するだけではなく、“食”という身近なテーマとともに情報を伝えていくことでさまざまなパートナーと連携を組んで持続的に経済を循環させ、利益と社会貢献を両立させるというビジョンも浮かび、少しずつコンセプトが固まっていったんです。」

出典:フクリパ

食系のイベントを企画するなど、もともと“食”に関心を持っていた木下さん。だからこそ、日本の冷凍の技術は以前より格段に進歩し、世間との認識にずれが生じていることもわかっていたのだといいます。 “冷凍=手間をかけていない、美味しくない、栄養がない”という従来の認識を壊し、スムージーを通し、野菜や果物をおいしくいただいてもらう。それを伝えていくことで、少しでも社会貢献につながるではないか、と考えました。

これまで知り得なかった食や農の現状

冷凍スムージーのレシピを開発する第一歩として、まずは“食”を取り巻く現状を知ることが必要だと考え、面白い取り組みをしている農家さんやその野菜や果物を扱うアイス工房、直売所、八百屋、レストランなどを1週間くらいかけてまわる“フードハントツアー”を実施。 木下 「農家さんに話しをうかがう中で衝撃を受けたのは、時間と手間をかけ有機栽培で作っているにも関わらず、安くないと売れないので農薬や化成肥料を使い大量生産された野菜と同じような値段で販売しているケースが多いということ。しかも、スーパーでは形や色が美しいものがよしとされているので、売れ残ってしまうということでした。 農家さんの話しをうかがうまでは、正直、オーガニック野菜や果物しか使いたいたくないと思っていました。だけど、農薬や化学肥料を使わずに栽培することがどれだけ難しいことなのかを目の当たりにしたんです。」

出典:フクリパ

大島 「大量生産されたものと同じ値段でしか売れないのだとしたら、時間と手間のかかる有機栽培の流通量は少なくなってしまいます。このままでは都市部で有機栽培の野菜価格が高騰し、所得の高い限られた人のみが安心安全なものを手に入れ健康的な食事やライフスタイルを送れるという望まない社会になってしまいます。知れば知るほど、もどかしさに襲われました。」 木下 「最初はスムージーの材料を探すことが目的でしたが、だんだんと、この現状をひとりでも多くの人に知ってほしいと思うようになりましたね。」

出典:フクリパ

大島 「そうそう。農家さんを“取引先”と考えるのではなく“パートナー”と考え、この現状をスムージーとともにオウンドメディアで伝えたいという思いが強くなりました。そして、ぼくたちの活動に賛同してくれる人を少しずつ増やし、コミュニティをつくる。そしてさらに、コミュニティに届ける“最高の一杯”をつくることを最初のゴールにしました。」 木下さんと大島さんは、スムージーに対する知識を蓄え、農や食の現状を知っていくことで、「少し先の未来」への切符を見つけたような、清々しい思いが生まれたのだといいます。

出典:フクリパ

アーティスト、オラファー・エリアソンの存在

「ぼくたちを語る上で欠かせない人物がいるんで、その話しをさせてもらってもいいですか?」木下さんがそう切り出しました。聞くと、自然の現象や要素を応用して人の知覚を揺さぶる作品で国際的に高く評価されるアーティスト、オラファー・エリアソン氏なのだとか。 木下 「大げさな話しなんですけど、大島とぼくが掲げている本当のテーマは世界平和なんです。でも、ぼくたちが世界平和を謳ったところでうさんくさいですし、自分ごととして捉えてくれる方はほとんどいないと思うんです。世界的に活躍しているアーティストのオラファー・エリアソンは、世界が直面する環境問題を自分ごととして捉えられるようなアートの見せ方をしていて。」

出典:フクリパ

大島 「例えば、ベルリンの街なかに北極の流氷を持って来るんですよね。最初はみんな“流氷だ〜”みたいな反応だったのが、日に日に溶けていく様子を見て、実際にこういうことが北極では起こっているということを自分ごととして捉えるようになっていくんです。」

出典:フクリパ:試飲会でのひとこま

木下 「彼のアートの投げかけ方から学ぶことも多くて。スムージーを売る時に“これを飲んだら環境問題の解決につながりますよ”っていってもなかなか伝わらないと思うので、まず、ぼくたちのスムージーを飲んでもらって、何を原材料にしているのか、農家さんはどんな背景でつくているのかというような興味を喚起してもらいたいです。 実際に農家さんのお話を聞くワークショップや収穫体験も企画しています。このように体験を通して“食”の現状を知ってもらうことで、自然と感謝の念が生まれ、自分ごととして捉えられるようになれば、例えば、出会った農家さんを買い支えたり、コンポストをはじめてみたり、といった環境にやさしく、持続的な行動に結び付けられると考えています。」

出典:フクリパ

思いを伝える手段としてクラウドファンディングを活用

そうしてスムージーブランド『CHISO(ちそう)』が正式に立ち上げられました。 木下さんと大島さんは、まずは自分たちの思いを少しでも多くの人に伝える作業が必要だということで、クラウドファンディングを活用。目標としていた100万円を3日間で達成し、現在はネクストゴールとして200万円を目指して取り組んでいます。

▶プロジェクトページはこちら

出典:フクリパ

木下 「クラウドファンディングに挑戦したのは、もちろん資金調達も目的のひとつ。だけど、先程も申し上げたように、ぼくたちの事業に賛同してくれる人を増やす“コミュニティづくり”が大切だと思っているので、クラウドファンディングが最適だと思ったんです。インスタグラムなどもやっているんですけど、なかなか自分たちの思いをすべて伝えるのって難しくて。」

出典:フクリパ

大島 「文字にすることで、自分たちの頭の整理にもなりました。こうしてインタビューでもことばに詰まることなく答えられるようになりましたしね(笑)。」 実際、クラウドファンディングを開始してみて、周りの反応はどう変わったのでしょうか。 木下 「支援してくれた人のほとんどは、友人などぼくたちの周りの人たちでした。第一歩としてまずは周りの人たちに知ってほしい、と思っていたので、素直にうれしかったですね。周りの人たちにも賛同されないビジネスだと、寂しいじゃないですか。」

出典:フクリパ

大島 「ぼくたちがやろうとしているビジネスは大量生産して大量消費されるものではないので、不特定多数の大勢の人に知ってもらおうという思いはそもそもなくて。『CHISO』のスムージーを通じて、普段の買い物の中での選択が、未来にどうつながるのか、そういうことを少しでも考えていただければ幸いですね。」

出典:フクリパ

木下 「ぼくたちは『CHISO』の考え方を知ってもらって、手にとってもらうことが、世界平和への第一歩につながるとしんじていますから。“食”っていうのはだれにとってもすごく身近なこと。だからこそ、オラファー・エリアソンはアートを通したように、ぼくたちは食を通じて表現していければと思っています。」

自由に楽しく、でも真面目に社会貢献をしていく

最後に今後の展望についてもうかがったところ、いい意味で予想を裏切るような回答が。 大島 「最近、大型二輪免許をとりました。実は今、1964年製のハーレーダビッドソンのエンジンを買いまして(笑)。好みのパーツをこつこつと収集しながら、組み立ててもらっているところなんです。そのバイクでフードハンドツアーをやるのが目標ですね。パーソナルトレーナーも、スムージーも、場所を選ばない仕事だと思っているので、バイクを相棒に、いつか世界に拠点を持ちたいと思っています。」 木下 「大島、これ大真面目にいっていますから(笑)。ぼくも現在、仕事と平行してDJとしても活動をしていて、そういうストリートで遊んで吸収したことを、仕事にも活かしたいと思っているんです。自由に楽しく、でも真面目に社会貢献したいんですよね。健康的なスムージーを販売しているのに、ぼく自身がこんな体をしているっていうのも逆にいいなと自分で思っていて。これこそダイバーシティだろう、っていう(笑)。だからこれからも鍛えながらこの体型をキープしていくつもりです。」

現在クラウドファンディングのリターンとしても紹介されているスムージー「THE ONE」に加え、今後は、数種類のスムージー、さらには冬にむけてポタージュの開発も行っているのだそう。サブスクリプションだからこそ、お客様にずっと面白がってもらえるような仕掛けやメニューづくりをしていくつもりなのだとか。スムージーが世界平和につながる、なんて、これまで考えてもみなかったことだけれど、普段の買い物や、外食など…少し視点を変えてみることで、また違った景色が見えるのかもしれません。 文=フクリパ編集部

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