福岡アジア美術館で個展を開催中の木梨憲武さんにインタビュー

 画家やソロ歌手としても活躍する木梨憲武さん。「木梨憲武展 Timing-瞬間の光り-」が3月1日(日)まで福岡アジア美術館(福岡市博多区)で開催中です。鮮やかな色使いに温かく伸び伸びとしたタッチ。木梨さんの自由な発想や創作現場がうかがえる楽しい作品が並んでいます。開催に合わせて福岡を訪れた本人に話を聞きました。

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悲しい、寂しい作品は一切ないよ

出典:ファンファン福岡

-今回の個展のテーマ「タイミング」に込めた思いは?  タイミングって本当に大事ですよね。タイミングが良いと、その日1日がすごく良い日になりそうな予感がします。この展覧会だってそう。福岡会場の日程が決まると、そこに向けて作品を生み出す。すると、タイミング良く、満足できるような気に入る絵が描けたり、良い色が生まれたり。不思議と筆が進んだりするんですよね。 -タイミングの大切さを実感しているんですね。  例えば、銀行に行く時。銀行の前に車が並んでいて、もう銀行に着きそうって時に、ちょうど駐車していた車が1台出て行ってそのまま停められた時の喜び(笑)。あの喜びってないじゃないですか。そんな喜びがこの世にありますか(笑)? その喜びは、一体何色なのかなあと。そんな絵を描いてみました。また、今回福岡に来るのは久しぶりなのですが、例えば昨日の夕食。予約を取っていなかったのですが、お店に電話したら、12人の席が空いていた喜び。おいしいものを食べさせてくれたんですけど、後で聞いたら常連さんを帰してたみたいで(笑)。ごめんなさい、話がちょっと取っ散らかっちゃいましたが、そんなタイミングの喜びを表現してみました(笑)。

出典:ファンファン福岡

―注目してほしい作品は?  ずっと描き続けている「手」をモチーフにしたシリーズ「REACH OUT」や「家」をモチーフにした「OUCHI」、そのほか映像作品も面白いですよ。お好み焼き屋で思いついた、ケチャップの容器に絵の具を入れて描いた作品やニューヨークで目の前にあったマップとスタッフが持っていたマジックで描いた作品などもあります。「REACH OUT」は、消しゴムなしの1回勝負で描き上げるのですが、ケチャップの容器を使うという初めての試みも、楽しみながら描きました。 ―かなり自由に創作されているようですね。  時間ができると、麻布十番にあるアトリエで作品を作っていて、絵の具やマジック、クレヨン、ペンキなど、いろんな画材を使って、椅子に描いてみたり、ぶっかけてみたり、オブジェを作ったり。そんなふうに思いのままに自由に一人遊びを楽しむことで、いろんな作品が生まれています。  でも、どこでストップするかなんですよね。ピンとこなければ一度白く塗って振り出しに戻ってやり直したり、偶然できたものがすごく良かったり、やりすぎて逆にダメになったりもする。自信を持って見せられる作品にするのは、結構紙一重なんです。(展覧会の)タイトルに“瞬間の光り”とありますが、その“瞬間”を探すのがすごく面白いです。  また、新しい作品ができると(妻の)成美さんの目に付く場所にわざと置いてみて、反応を見たりします(笑)。「うわ~かわいい!」「これすごい!」とか、リアクションがある日とない日があるんですよ。ノーリアクションだと、やっぱり真っ白に塗ってもう一度やり直します(笑)。反応によって作品のゴールが見えるので頼りにしています。

出典:ファンファン福岡

―音楽活動もアート活動の刺激になっているのでは?  たくさんの仲間に手伝ってもらって音楽も作っていますが、何もないところから音や詞が生まれる。意外とアートに通じる部分があるんです。音楽は音と詞、アートは線と色。仲間とコラボして一つの作品ができると喜びが倍増する。アートも音楽も、結構近い感覚で作っています。 ―初めて木梨展に訪れる人や福岡のファンに一言。  前回の巡回展でもそうでしたが、悲しい、寂しい作品は一切ありません。作品を見た子どもたちが、家に帰ると同じように作ったりするという話もよく聞きます。ぜひ、お父さん、お母さんは子どもの一番お気に入りの作品を額装して部屋に飾ってあげてください。そんなふうに図工の延長のように、自由に楽しんでみてください。一点だけの大切な作品になりますから。

出典:ファンファン福岡

【プロフィル】きなし・のりたけ  1962年生まれ。東京都出身。とんねるずとして活躍する一方、画家としても活動。1994年に名古屋で「木梨憲太郎」名義で初の個展「太陽ニコニカ展」を開催し、国内では今回が9度目の個展。2015年に米・ニューヨーク、18年に英・ロンドンで個展を開く。19年にはソロ歌手として楽曲を発表し、多岐にわたる活動を展開している。

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