“待つ”から“動く”へ。飲食店がシフトする今話題のキッチンカーとは?

新型コロナウイルスの影響で業績を伸ばしたデリバリーに次ぐ業態といえばキッチンカー事業です。コロナ前から少しずつ話題になっていましたが、コロナ禍で一気に増加傾向に。そんなキッチンカーの現状や可能性などを、ライターの山内 亜紀子さんが福岡で話題のキッチンカー「食堂ニッシッシッ」店長の西口和洋さんに話を伺いました。

出典:フクリパ
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今話題のキッチンカーとは?

ーー幼い頃、豆腐屋さんやパン屋さんが、トラックで家の近所に販売に来ていました。最近はコロナ禍もあって、個性豊かで色とりどりのトラックで弁当やサンドを販売している光景をよく見るように。移動販売車、キッチンカー、フードトラック…その呼び名は、ひとそれぞれ。ここで一度、整理してみます。 移動販売車とは? 店舗以外のところへ自動車で運んで、商品を販売することです。豆腐屋さんやパン屋さんなど小売業はここに位置します。 キッチンカーとは? 移動販売車の一種ですが、その中でも“調理設備をもった車両”のことをいいます。その場で小売り商品だけを売るのではなく、その場で調理したものを売る移動販売車のことを「キッチンカー」といいます。今、街で多く見かけるのは、ここに位置します。 フードトラックとは? キッチンカーのことをアメリカでは、“フードトラック”と呼びます。日本より随分前から普及しています。 今、日本では、ドラマの主人公の職業にもなるくらい話題の「キッチンカー」。今回は、福岡で話題のキッチンカー「食堂ニッシッシッ」の店長 西口さんに、これからの可能性を聞いてきました。その他、福岡で人気のキッチンカーもご紹介します。

キッチンカー事業をはじめるのに必要なこと

ーー福岡市中央区・大名にある“焼とりともつ鍋 かりんこ”店長の西口さんがキッチンカーに興味を持ったのは、コロナ前の一昨年からで、準備をはじめキッチンカー事業を開始したのは昨年の5月頃でした。準備をはじめて実際にキッチンカーを出動させるまで、大変なことも多かったようです。

出典:フクリパ:食堂ニッシッシ店長の西口さん

西口さん 「一昨年の夏ぐらいにキッチンカーで主人公が各地を旅する映画を観た時に、単純なんですが“わーいいなー”と思って最初は夢と希望を持ってキッチンカーの準備をはじめたんです(笑)。 ですが、いざ現実となるとまず保健所の申請ってこんなに大変なんだと思いました。はじめは50万円軍資金もって九州回ろうかなんて思っていたんですが、許可のことを考えるとこれは簡単ではないなと思いました(笑)。今は、福岡県、佐賀県、熊本県は許可をとっているのでその3県は回れます。 また、スタッフのトイレ・休憩問題はけっこう大変なんです。出店場所の近くにトイレがなければ自転車を積んで行ったこともありますし、電源がある・ない、出店料がかかる、かからないなど、赤字を出したりしてやっていきながら理想と現実がわかってきました。 これからキッチンカーをやりたい人は、まず場所を確保して事業に手を出したほうがいいと思います。“どこに出店するか”は大事ですね。」

コロナ禍真っ只中にはじめたキッチンカー“食堂ニッシッシッ”

ーーコロナ以前から準備をはじめていたとはいえ、西口さんがキッチンカー事業をスタートさせたのはコロナ禍真っ最中の昨年春から。この1年、キッチンカー事業を通して気付いたことは?

出典:フクリパ

西口さん 「“食堂ニッシッシッ”は昨年の5月ぐらいから始めました。本来はイベントメインで出店しようと思っていたけれど、イベントがなくなったのでランチ需要があったオフィス街に出店していたら、地方から呼ばれることが増えたりと少しずつ出店する場所が広がっていきました。」

出典:フクリパ:メインメニューの「ポークたまごおにぎり」(400円)

扱っている商材がポークたまごおにぎりなので、他の店とかぶらないんです。他はホットドック、ハンバーガー、唐揚げ、キューバサンドなどが多くて、ご飯ものはないんです。ただ、やってみてわかったんですけど米は大変だからみんなやってないんだなと思いました(笑)。

出典:フクリパ

米を炊くのに1時間はかかるのでロスを出さない為に計算して先を考えて動かないといけないんです。僕の場合は食材を実店舗と共有できるのでまだよかったです。たまご、高菜、きんぴらなど共有できるものは共有していたし、余ったご飯はまかないに回していました。 キッチンカーの店名をあえてタコス専門店、バーガー専門店などとつけず、“食堂ニッシッシッ”にしているのは、自由に食材を変えていけるからです。オフィス街に出る時は豚味噌漬け丼、丼まつりの時は牛さがり丼、他にも糸島の海沿いで焼きそばを出したりと、場所や雰囲気に合わせてメニューを変えています。

2021年6月の法改正で可能性が広がったキッチンカー

ーー2021年6月1日から食品衛生法が改正されたことにより、施設基準が全国一律になり設備によってキッチンカーで提供できるメニューが増えました。また、今回の法改正で今までできなかった非加熱のものが提供できるようになるので、キッチンカー業界に新規参入が増えるのではと言われています。

出典:フクリパ

西口さん 「6月からの法改正により、キッチンカーに積んでいる水の量や設備などで、非加熱のものも提供できるようになりますから、海鮮丼でも寿司でもメニューとして出せるようになりました。 これまでキッチンカーのメニューに偏りがあったのは提供できるものが限られていたからですが、これから様々な特殊な食べ物、新規参入してくるところが増えると思っていますし、飲食店を経営していた人たちがもっとキッチンカーに参入してくると思っています。 飲食店が参入することにより競争率が上がるので、注文を受けてすぐ提供できるものが主流だったキッチンカー業界に、飲食店出身のキッチンカーが料理のクオリティを高めて提供してくる可能性があります。

出典:フクリパ

クオリティが上がり、競争率も上がることからキッチンカーはこれから淘汰されると思います。中途半端なキッチンカーは売れなくなって、安い、早い、ボリュームがある、映える、流行りなどメニューは多様化すると思いますが“クイックさ”か“クオリティ”の二極化が求められるようになるのではと思っています。

出典:フクリパ

また、キッチンカーが増えることによって、今までは外観もなんでもOKだったものが、個性的なもの、テキ屋さん色がないもの、おしゃれなものなどキッチンカーの見た目でも選別されるようになって、更に競争率は上がるかもしれません。お客さんにとっても選ぶ楽しみが増えるので、これから大注目の業種だと思います。」

出典:フクリパ

メインメニューはポークたまごサンド。福岡県内どこまでも行きます。ニッシッシッは、「焼鳥ともつ鍋 かりんこ」ベイサイドプレイス「波葉のかりんこ」の姉妹店です。 【食堂ニッシッシッ】 TEL: 090-1698-0583 (西口)

食堂ニッシッシッ

その他、福岡で人気・話題のキッチンカー

ーーメニューも外観も様々な福岡で人気のキッチンカーをご紹介します。

SUWAVE – food truck – スウェーブフードトラック

出典:フクリパ

本場カリフォルニアのフードトラック(キッチンカー)に憧れ、現地ならではの料理にオリジナリティを加えたストリートフードを提供。黄色のトラックが目立ちます。おすすめは「メキシカンタコライス」や「ナチョス」、「韓国テイストのご飯入りプルコギタコス」など。

出典:フクリパ

こだわりはカリフォルニア米と国産玄米をブレンドしたオリジナルのライス、ホームタウンである糸島の新鮮野菜、上質で旨味が強いUSビーフ、オージービーフ、国産の豚肉を使い分け使用、スパイス・ソースはオーガニックの食材を心がけ手作りで提供しています。 【SUWAVE – food truck – スウェーブフードトラック】 ■主な出店エリア: 福岡市中央区薬院、西区姪浜、東区、糸島市など

SUWAVE food truck

エーテーブル

出典:フクリパ

豊作ファーム産黒毛和牛を食べられる唯一の店。牧場から直送される博多和牛と米を使ったボウル(丼)専門のキッチンカー。A5ランクの黒毛和牛と減農薬の米、糸島産の野菜を使ったナムルを組み合わせてつくるボウルは絶品です。

出典:フクリパ

メニューは「和牛そぼろボウル」(600円)、「和牛カルビボウル」(850円)、「和牛ダブルボウル(焼肉&そぼろ)」(900円)など5種類。 【エーテーブル】 ■主な出店エリア: (火曜)福岡市博多区 博多プライムイースト、(木曜)早良区 百道AIビル、(金曜)中央区 薬院テラス

エーテーブル

Gangmeet ギャングミート

出典:フクリパ

福岡県・鹿児島県全域に出店しているフードトラック(キッチンカー)。フードトラックに限らずケータリングなども行っている。また、飲食店のない地域での出張レストランや個人宅でのパーティーなど様々なスタイルで出店しています。

出典:フクリパ

おすすめは九州・鹿児島の甘めの醤油“吉村醸造のサクラカネヨ”をベースに数十種類のスパイスをブレンドしたタレにじっくりと漬け込み、ドネルマシンで焼き上げた照り焼きチキンをライスでがっつく「ギャングチキンライスボックス」(800円)。他に「ギャングチキンサンド」(600円)、「ギャングチキンボックス」(600円)も。 【Gangmeet】 ■主な出店エリア: 福岡市中央区 今泉、福岡空港、糸島市など

Gangmeet

キッチンカーは、お客さんと飲食店側、双方を課題を解決する

キッチンカーの外観や提供されるメニューも様々でこれからどんどん多様化していくようです。ビジネス街やマンション、商業施設など、福岡市内はもちろん糸島市や福津市など海沿いエリアに出店するキッチンカーも多く見られます。 コロナ前から注目されていたキッチンカー事業ですが、外食自粛などで私達が街に出かける機会が減ってしまった今、お客さんを待つ“受け身”の営業スタイルから“行動する”営業スタイルを象徴する新たな飲食事業として、更に需要が増えていくのではないでしょうか。 文=山内 亜紀子

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

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成長する地方都市 #福岡 のリアルな姿を届けます。福岡のまちやひと、ビジネス、経済に焦点をあて、多彩なライター陣が独自の視点で深掘り。 「フクリパ」は「FUKUOKA leap up」の略。 福岡で起こっている、現象を知り、未来を想像し、思いをめぐらせる。 飛躍するまちの姿を感じることができると思います。 https://fukuoka-leapup.jp

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