体重を支える部分であり、人間の関節で最も大きい股関節。何らかの異常があると日常生活に支障をきたしてしまいます。諸岡整形外科(福岡県那珂川市)の整形外科専門医・後藤久貴先生に聞きました。
【整形外科専門医】諸岡整形外科 後藤久貴先生
大分県出身。筑波大学医学部卒業。長崎大学整形外科、長崎労災病院などで研さんを積み、2019 年「諸岡整形外科」へ。義肢装具等適合判定医、臨床研修指導医。股関節疾患と、下肢を中心とした外傷などの症例が専門分野。
手術翌日から全荷重リハビリ可。「人工関節置換術」で痛みなく歩ける喜びを
体重を支えてきた股関節。消耗した軟骨は再生不可
「股関節」とは、大腿骨頭と呼ばれる球体のような部分が、骨盤のくぼみにはまっている部分を指します。体重を支える部分であり、人間の関節で最も大きいものです。正常な股関節は、球体の部分とくぼみの部分にストレスがかかることなく、あらゆる方向に動かすことができますが、何らかの異常があると、この動きがスムーズにいかず痛みが生じてしまいます。 日本人の股関節障害で一番多いのは「変形性股関節症」で、中でも、生まれつき大腿骨頭を覆うくぼみの部分が小さく、体重をうまく支えきれない「寛骨臼形成不全」という症例が、女性に多く見られます。また、加齢と共に軟骨が消耗し、股関節が変形していくケースもあります。 他には、高齢化により骨粗しょう症が進んで骨頭付近の骨が折れる「脆弱性骨折」もかなり増えています。
手術が怖い…迷う方に入院期間も短い人工関節置換術
股関節の痛みの原因が軟骨の磨耗にある場合、すり減った軟骨を再生する治療法は、今のところありません。痛みを取り除くには手術か、手術をしない保存療法の、いずれかの選択になります。手術をしない場合、鎮痛剤を処方して疼痛の軽減をはかるか、リハビリを行いながら様子を見ていきます。 手術の場合、変形の程度により「骨切り術」か「人工股関節置換術」を行います。骨切り術の場合、入院期間は長いものの、自分の関節を温存できることがメリットです。ただ、股関節の骨切り術は50〜60歳までがリミットで、比較的若い患者向けの術式と言えます。 人工股関節置換術の場合は年齢にリミットがなく、手術翌日から全荷重をかけたリハビリが可能です。2、3週間で退院できます。 人工股関節置換術は術後の満足度が大変高い手術で、「もっと早くやればよかった」と元気に歩いて退院する方がほとんどです。「手術が怖い」と、痛みに耐え続ける人生はもったいないと思いませんか。旅行に趣味に、痛みなく歩ける喜びを手に入れてください。