息子が小学1年生のとき、「学校に行きたくない」と言ったことがありました。私は、心を鬼にして接すると決めます。厳しい言葉をあびせながらも「息子が立ち直れなくなったらどうしよう」と思いましたが、そんな心配はいりませんでした。なぜなら、息子が信じられない反撃に出たからです!
小1の息子が「学校に行きたくない」と言い出した
ある朝、小1の息子が
「学校に行きたくない」と言い出しました。最初は、体の具合が悪い? イジメられている? と心配しました。ところが熱もなく、もじもじ、おどおどしている息子の様子を見てピンときました。どうやらサボりたいだけのようです。
前の晩ゲームに熱中し、寝るのが遅くなってしまったのも原因かもしれません。保育園のときは休ませることもありましたが、小学校では甘やかすわけにはいきません。なんとか行かせようと思った私が、
「よし、今日は車で送るね。それに、今日から新しい水筒だよ! 中はおいしい麦茶だよ〜」とおだてると、息子はしぶしぶ着替えはじめました。
「鬼にならなくては!」母は覚悟を決めた
その後、うなだれた様子で玄関を出た息子は、手をだらーんと下げていたため、新しい水筒を地面に引きずっていました。
せっかく、小学生になったからと、かっこいいスポーツタイプの水筒を奮発したのに! 私はたまらず
「コラ、引きずるんじゃない!」と怒ってしまいました。
学校の少し手前で車をとめ、ここからは歩いて行くように言うと、
「行かない…」と言って下を向いてしまいます。
もしかすると
「行きたくないの? じゃあ、今日はお休みしようか」とでも、言ってくれると思ったのでしょうか…。
しかし、今日これを許しては「この子のためにならない」と直感した私は、心を鬼にして息子にこう言い放ちました。
「これからお母さんは仕事に行く。邪魔だ、降りなさい!」
嫌がる息子を無理やり車から降ろすと、とうとう観念したのか、学校へ向かって歩きだしました。
息子の思わぬ反撃!
うなだれながら歩く息子が心配で車から見ていると、なんとあれほど注意したにもかかわらず、アスファルトの上で水筒を引きずっているではありませんか!
さらに観察していると、今度は道路からわざわざ畑道に降り、土の上で水筒を引きずりだしたのです。
それでも、学校の方へは向かっているので、注意するわけにもいきません。心なしか一瞬こちらを振り返り「してやったり」という表情をしていたようにも見えましたが、気のせいでしょうか?!
結局、息子は水筒を引きずったまま校門をくぐっていきました。私も最初こそ「なんてことするんだ」と怒り心頭でしたが、見ているうちにだんだんおかしくなり、車の中で一人声をあげて笑ってしまいました。
覚悟をもって厳しく接したものの、息子がどう受け止めるか、心配と不安でいっぱいだったのに… まさかこんな反撃に出るとは!
人生初のハードルを乗り越えた! というよりは…
その日の夕方、学童へ迎えに行ってくれた祖父が
「楽しそうに鬼ごっこをしていて、汗びっしょりだったよ」と教えてくれました。
息子は帰ってくるなり、キッチンにいる私へ水筒を差し出すと、
「麦茶、まずかった」とだけ言って、お風呂場へ行ってしまいました。
水筒のカバーは、予想通り「ボロボロ」の「ドロドロ」で、中はからっぽでした。
保育園のときは、ぐずると休ませることがあったので、息子は同じ感覚でいたのかもしれません。でも小学校に上がり、いつまでも甘えさせるわけにはいきません。「邪魔だ」と言ったとき私は心で号泣しつつ、「頼む、乗り越えてくれ」という気持ちでした。そして息子は見事にハードルを乗り越えて… というか、くぐって行きました。
それから水筒カバーはきれいに洗って繕って、毎日学校へ持って行きました。そしてその後息子は、ほぼ皆勤賞で小学校を卒業したのでした。
(ファンファン福岡公式ライター / 柴田真千子)