ネット通販会社を100%成功に導く、「売れるネット広告社」が描く将来像

今や、すっかり私たちの生活の一部になっているインターネット通販サービスですが、水面下では多くの企業が激しい競争を繰り広げています。そのネット通販の業界で、関わるクライアント「すべて」の売り上げを上げてきたという、驚きの実績を残している広告会社が福岡にあります。その名もズバリ、「売れるネット広告社」。 ライターの光本 宜史さんが加藤公一レオ社長にその秘訣をお聞きました。

出典:フクリパ
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ネット通販の広告支援が専門、化粧品や健康食品で圧倒的な実績

窓の向こうに玄界灘が広がる福岡市・百道浜のオフィスビル。コーポレートカラーの赤を基調にした応接室でジャケットをカジュアルに着こなし、冗談を交えながらテンポよく質問に答える。 そんな加藤さんが経営しているのが広告会社と聞けば、テレビCMなどマスメディアのイメージ広告に代表される華やかな世界を思い浮かべるかもしれない。タレントを起用したコミカルな演出、インパクトのあるキャッチコピーなどは時として社会現象にもなり、制作を手掛けたクリエイター(広告制作者)は脚光を浴びる。 しかし「売れるネット広告社」は、同じ広告でも「インターネットメディア」の「レスポンス広告」を専門にする広告会社。ネットに掲出した広告からどれくらい売り上げにつながったかを測定・分析しながら、反応の高い広告表現を追求する。費用対効果がシビアに求められるダイレクトマーケティングの現場は、数字が全ての厳しい世界だ。 クライアントには、化粧品や健康食品を扱う通販会社やメーカーなど、誰もが知る企業が名を連ねる。 ひとくちに通販と言っても使う媒体によって「ネット通販」「カタログ通販」「テレビショッピング」などがあり、このうち8割をネット通販が占める。また、扱う商品の種類によって「総合通販」と「単品通販」に分かれる。前者は様々なカテゴリーの商品を取り扱うのに対し、後者はD2C(Direct to Consumer)とも呼ばれ、自社で製造した商品を直接消費者に販売する業態だ。 売れるネット広告社はこのうち、「ネット」で「単品通販」を行っている企業を対象にサービスを行っており、この分野では圧倒的な実績を誇る。

苦い経験から生まれた「売れる広告」へのこだわり

加藤さんはブラジルで生まれ、アメリカ・ロサンゼルスで育った。「レオ」は出生時に父親がつけてくれたミドルネームだ。18歳の時に福岡へ。大学卒業後は三菱商事、外資系広告会社を経て、大手広告会社のアサツーディ・ケイ(ADK)に入社した。 加藤さん: 「将来は自分で会社を興したいと思っていましたから就職先はどこでもよかったのですが、幸い多くの内定をいただき、その中から三菱商事を選びました。総合的にビジネスが学べそうだということ、あとはプロフィールの最初に「三菱商事」とあるとインパクトがあるじゃないですか(笑)。 そこで数年勤めた後、次に自分の好きな広告の分野でキャリアを積もうと考えて広告会社に転職しました。広告の方が、個人として目立ちますからね。」

出典:フクリパ

ADKでは、その後の加藤さんのビジネスに大きな影響を及ぼすことになる2つの会社を担当した。1社目は東京で担当した大手通信会社。2年間で40億円という予算を獲得し、テレビや新聞で派手なイメージ広告を提案し続けた。だが待っていたのは同社の事実上の倒産で、社員は全員解雇。膨大予算をつぎこんだ広告が、売り上げにつながらなかったのだ。加藤さんは25歳にして「広告は売り上げにつながらないと意味がない」ことを、身をもって学んだ。 2003年に九州支社に異動すると、健康食品の通販会社「やずや」を担当。そこで同社が取り組んでいたのが、新聞広告やチラシを使った【A/Bテスト】だった。キャッチコピーだけ変えたもの、写真だけ変えたものなど複数の広告を同時に出稿し、その中でもっとも反響のあった要素を組み合わせた広告を大量に投下する。今では広く知られる手法だが、初めて目の当たりにした加藤さんは衝撃を受けた。 「これこそ、売り上げにつながる広告を実現するものだ」。新聞やチラシ、さらにインターネットメディアで【A/Bテスト】を繰り返し行い、反応を検証し続けた。 特にインターネットではテスト回数を飛躍的に伸ばすことができ、反応もリアルタイムで検証できるため膨大なデータが集積できた。検証結果をもとに「やずや」の商品をインターネットで販売したところ、これが大成功。それまで新聞広告やチラシからの注文がメーンだった「やずや」は、インターネットだけで100億円を売り上げる全国有数のネット通販会社となった。 ここで得たノウハウを他社でも応用し、九州で多くの通販会社がインターネットによる売り上げを伸ばすにつれて、通販業界で加藤さんの名も広がっていった。「売れる広告」で企業の収益に貢献できる。そのことを確信した加藤さんは、「世の中のすべてのクライアントを成功に導く」との強い思いを胸に、独立を果たす。

蓄積したノウハウのパッケージ化で100%の成果を出す

2010年3月。34歳の時に加藤さんは、福岡市・西新のマンションの一室で事業をスタート。初日から問い合わせの電話が鳴る。最初の月から黒字を達成、その後も順調に業績を伸ばした。 加藤さん: 「よく創業時の苦労話を聞かれるのですが、一切ないんです。リスクのない起業をするためにサラリーマン時代に実力と知名度を徹底的に上げましたからね。しかも、市場規模がこの20年間伸び続けている「ネット通販」と「ネット広告」の二つを掛け合わせたフィールドでのビジネスですから需要もある。不安はありませんでした。」

ADKで培ったノウハウは独立後、さらに進化を遂げた。 化粧品や健康食品などを扱う通販企業は、商品が切れたタイミングで自動的に次の商品を送る「定期コース」に申し込んでもらうことが最終目標。今は「サブスク」と言った方がイメージしやすいかもしれない。化粧品や健康食品の場合、まずは無料サンプルなど「お試し」を勧め、その後に「本商品」(定期コース)を案内するのが主流だ。 こうした一連のフローにおいても【A/Bテスト】が活用される。ランディングページ(広告をクリックして訪れる商品案内ページ)のデザイン、定期コースへの申し込みを促すメールのタイトルや文面、送信のタイミングなど、あらゆる要素がテストの対象となる。 加藤さんは実務を通して、こうしたテストを1000回以上繰り返した。そこで得た膨大なデータをもとに、広告表現から定期コース申込みを獲得するまでの最適な組み合わせをパッケージ化したものが、単品通販支援クラウドサービス「売れるネット広告つくーる」。このサービスとコンサルティングによって、クライアント企業の年間ROAS(かけた広告費に対して得られた売り上げ)を100%改善させた。 2020年7月期決算の売上高は27億7,000万円に達し、九州に本社を置くデジタルマーケティング企業の中ではトップに躍り出た。

出典:フクリパ:自社開催「単品通販(D2C)売上“100億円突破”のためのプレミアムセミナー」で登壇(2020年10月)

福岡に本社機能を置く、3つの理由

オフィスは福岡と東京にあるが、本社機能は福岡に置く。 加藤さん: 「理由は大きく3つあります。まず、僕自身がこの街が好きだということ。人情があって、自然も豊か。子育てもしやすい最高の街だと思います。 また、九州には通販で成功している企業が多く、『通販王国』として業界で一目置かれています。その九州に本社があるというだけで、ブランド向上につながります。 3つめは新卒採用で有利であること。正直なところ九州には〝イケてる〟ベンチャー企業は多くありませんから、ベンチャー志望の優秀な学生を採りやすいわけです。」 コロナ禍で、食品会社からの問い合わせも増えた。食品を卸していたホテルや飲食店の休業によって販売が減ったため、「ネット通販で直接消費者に販売できないか」という相談が多いという。 加藤さん: 「化粧品や健康食品で培ってきたノウハウが食品にも通用するか不安でしたが、まったくの杞憂でした。今では焼肉、キムチ、雑穀、バターなど、多くの定期コースが稼働しています。」 今後は、海外進出も視野に入れる。 加藤さん: 「日本の企業が手掛けるネットビジネスは、世界では意外と成功していません。そのビジネスモデルはB2C、つまり現地の消費者に直接売り込むものです。 当社のビジネスは、通販会社の費用対効果を上げるためのツールやノウハウを提供するB2Bです。売り上げを伸ばしたいという企業の思いは世界共通ですから、海外でも通販会社は興味を持ってくれるはず。言語や文化は違っても結果が評価される実力勝負の世界なら、自信があります。」

出典:フクリパ:コーポレートカラーの「赤」を基調にした社内(東京オフィス)

社員たちと世界中でドラマをつくっていく

普段から「売れる広告」にこだわり続けているだけに、売り上げにつながったかどうか分からない「イメージ広告」には厳しい目を向ける。 加藤さん: 「広告会社がブランディングの名のもとに提案するテレビCM、新聞広告は〝これなら反響あるだろう〟という仮説に過ぎません。一種の賭けであり、たまにホームランは出るかもしれないけど、アウトになる確率の方が高い。 しかし【A/Bテスト】は違います。効果を検証しているから、反響があることは最初から分かっている。広告を打つ前に正解が書かれたカンニングペーパーを渡すようなもので、広告を仮説ベースから事実ベースにするのが、【A/Bテスト】です。」 自らのSNSでも折に触れて、「広告はアートでも作品でもない」「評価されるべきは広告賞をとった広告ではなく、売り上げにつながった広告だ」と舌鋒鋭く広告の本質を指摘する。だが広告業界には「広告とはそんな単純なものではない」と考えている人がまだ多いのも事実だ。 それでも加藤さんが主張を変えることはない。そこには、クライアントに多くの利益をもたらしてきたという絶対的な自信がある。主張を続けることで、広告に対する認識を変えていきたいという思いも強い。そのためには批判も恐れず本音で切り込んでいく。加藤さんの魅力は、そんなところにもあると筆者は感じている。 同社は5年前、企業理念として「“最強の売れるノウハウ®”を用いて 関わるすべての企業を100%成功に導くことで 世界中にたくさんのドラマを創る」を掲げた。 加藤さん: 「私は大手と言われる企業で働いてきましたが、自分でドラマをつくっていないことをよしとせず、起業しました。そして価値観を同じくする仲間たちを集め、新たなドラマをつくる冒険に出たいと思っていた。その仲間がいま40人います。この先〝最強の売れるノウハウ®〟で世界中のクライアントを成功に導き、会社の規模も大きくなるでしょう。 彼らが定年を迎える時、「昔とは比べようもないほど大きな会社になったな」と思ってほしい。死ぬ時に「自分の人生はドラマチックだった。楽しかったな」と思ってほしい。まだ冒険の途中ですが、そんなことを考えています。」 海外進出を含め事業規模の拡大は「目標」や「夢」でもなく、すべて「予定」だと言い切る加藤さん。広告業界の風雲児は〝売れる広告〟を生んだ「通販王国」から世界を目指す。

出典:フクリパ

文=光本 宜史

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