高齢者ばかりでなく、若い世代にも見られる「新型栄養失調」をご存じですか? 食糧難時代とは異なる理由で起こる現代版の栄養失調で、進行すればさまざまな病気の引き金となるだけではなく、要介護リスクも高まります。木村専太郎クリニック(福岡市南区)の木村專太郎先生に聞きました。
木村專太郎クリニック 木村專太郎先生
九州大学医学部卒。同大学第二外科研修後、渡米。アイオワ大学病院及び米国国立病院にて外科研修、アイオワ州にて外科開業。帰国後、那珂川病院院長などを務め、2001年木村専太郎クリニック開院。20年前から分子整合栄養医学を勉強している。
三食摂っていても起こる「新型栄養失調」にご注意
「新型栄養失調」とは?
「新型栄養失調」は、主にタンパク質やビタミン、ミネラル不足が引き起こす栄養欠乏症状です。食糧不足で起こる栄養失調とは異なり、毎日三食摂っている人にも起こりえます。 主な原因は、加齢による偏食や粗食で動物性タンパク質の摂取量が減少したり、我流のダイエットなどで糖質や脂質を取らない食事を続けたりすること。病気による食欲不振や消化吸収力の低下も、一因と考えられています。 新型栄養失調が進行すると、十分な睡眠をとっても疲れが取れなくなったり、風邪をひきやすくなったりするほか、行動意欲が薄れて引きこもりがちになる傾向が見られます。高齢者の場合は、活動量の低下にともなって筋力が低下し、転倒しやすくなる危険性も高まります。 さらに、免疫力が低下したり貧血を起こしやすくなったり、骨折、心臓病、脳卒中、認知症や寝たきりなど、要介護状態に移行するリスクも高まります。
新型栄養失調は血液検査で簡単に調べられます
新型栄養失調に特に気をつけていただきたいのは、まず、粗食になりがちな高齢者。ダイエット中の女性や、メタボリックシンドロームを気にして自己流の食事制限をしている中年男性なども要注意です。 また、毎日の食事を、インスタントラーメンやコンビニ弁当、ファストフードなどで済ませることが多い方は、新型栄養失調になる可能性が高いかもしれません。 新型栄養失調であるかどうかは、血液検査をすればわかります。血液中のたんぱく質成分「血清アルブミン」の基準値は、1㎗あたり3.8〜5.34gで、3.5g未満は「低栄養」と診断します。高齢者の場合は4.2g以上あるほうが好ましいです。 風邪をひきやすい、イライラする、めまいがする、転びやすい、不眠または逆に慢性的な眠気がある、頭痛がする、味覚障害があるといった症状がある場合、血液検査の受診をおすすめします。 新型栄養失調を予防するためには、たんぱく質、ビタミン、ミネラル類をしっかりと摂ることが基本です。 日々の食事に牛肉、豚肉、羊の肉や魚などの主菜を増やし、卵、牛乳、油などもバランスよく取り入れてください。なお、低栄養による症状には個人差がありますので、不調を感じたら「栄養医学」に詳しい医師に早めにご相談を。