私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
暑い暑い夏の昼下がり。
知らないうちに昼寝をしていた祖母が目を覚ました。
お腹が空いたので家の中を歩きまわったが誰もいない。
畑に行っているのかもしれないと思い、草履をひっかけ外に出た。
太陽はジリジリと肌を焼くほど熱かった。
あまりの日差しの強さに影と色を失い、視界に写る全てが真っ白だった。
村の真ん中を通る道を歩いていたが、時間が止まったように何一つ動くものもない。
畑に着いたが、そこには誰もいなかった。
仕方がないので村に戻ろうとした時、妙な事に気付いた。
せせらぎや葉ずれの音は聞こえるのに、蝉や蛙の声がしない。
急に不安になった祖母は村まで走って帰り、一番近い家に飛び込んだ。
誰もいない。
次の家も、その次の家も、その次の次の家も…
「生きている者がいない?」
村の中を走りまわったが誰にも遭えなかった祖母は、この世界に一人だけ取り残されたような気持ちになった。
不安で涙が出そうになったその時
「アォ〜〜〜ン!」
家で飼っている犬・シロの声が聞こえた。
その瞬間、風景は色を取り戻し、蝉しぐれが聞こえてきた。
家に戻ると、全員そろってお昼ご飯を食べている。
体験した事を話したが「昼寝して夢でも見たんだろう。早くお昼を食べてしまえ」と相手にされなかった。
「知ってるのはおまえだけだね。ありがとう」
すました顔で座っているシロに自分の分の水瓜をあげた。
祖母が五歳の夏の出来事である。
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