7月30日、職場のテレビで決勝を観戦していた私は、素根輝選手が世界ランキング1位・キューバのオルティス選手の襟をつかむたびに左手をぐっと握りしめ、足技をかけると内もも、そして全身が緊張状態になっていました。
柔道は4分間で決着が着かない場合、有効な技をかけた時点で勝負が決まるというゴールデンスコア方式の延長戦となります。身長162cmの素根と、173cmの大柄なオルティス。世界大会で何度も対戦してきたライバルです。実力は拮抗し、素根は攻めながらもポイントを奪えないまま4分間が経過。技が決まれば金、決められたら銀の延長戦に入ったのです。
苦闘の末に勝ち取った頂点
12:35開始 2回戦 一本勝ち 13:05開始 準々決勝 一本勝ち 17:05開始 準決勝 一本勝ち 18:15開始 決勝 … 順当に勝ち上がった素根選手も、この日4試合目となる決勝では苦しみました。そして、延長戦に入って4分52秒、審判が試合を止めます。オルティスにこの試合三つ目の「指導」を告げたのです。指導三つで相手の一本勝ちとなります。ついに…。素根輝21歳、初めてのオリンピック出場で堂々金メダルを獲得！ 「おめでとう…！」。私は感動で震えました。というのも、４年前の2017年、福岡県久留米市にある南筑高校の2年だった素根選手は、福岡県で毎年行われている金鷲旗柔道大会決勝で、史上初の5人抜きを達成しました。伝説となったこの試合を、実は私は間近で観ていたんです。当時からオーラが漂っていましたが、あの選手が金メダルを獲得したのだと思うと、一層こみ上げてくるものがありました。 いろんな問題を抱えたまま開幕した東京五輪ですが、ソフトボールの上野選手や峰選手、銅メダルを獲得した女子柔道・芳田選手など福岡出身あるいはゆかりのある選手の活躍には、やはり特別な思いがあります。 西日本新聞社には、スポーツ報道を担当する運動部という部署があり、多くの記者がプロスポーツからアマチュアスポーツまで取材に駆け回っています。東京五輪の会場で、郷土出身選手を見つめているのも運動部の記者たちです。
記者の期待や熱が込められた号外
素根が金メダルを決めた直後の18時27分、「西日本新聞me」のWEB版とアプリ版で、「素根輝が金メダル 柔道女子78キロ超級 福岡勢17年ぶり」という見出しを掲げた号外をいち早く掲載しました。 号外にはご家族から提供いただいた、彼女の幼少期の写真や「伝説の」金鷲旗の写真、年表とこれまでの戦績を収録しています。ここまで用意したのは、運動部の記者たちの期待と熱意の表れだと、号外にも熱くなりました。https://www.nishinippon.co.jp/item/n/778218/
また、翌7月31日の朝6時に「西日本新聞me」にリリースした記事の見出しは、こうです。 素根の涙、実って金色 「負けが私を強くした」 柔道女子78キロ超級 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/778483/ この記事の中で末継記者は、「公式戦31連勝で一気に金メダルをつかんだ21歳の糧となったのは、悔しい黒星の数々だった。」として、小学5年生当時からライバルに打ち克ってきた素根の努力を伝えています。 また、座右の銘である「三倍努力」という言葉の奥にあるものを取材した記事も、 「小さくても勝てる」11センチ高い強敵を圧倒した素根の強さの秘密 という見出しで掲載しています。https://www.nishinippon.co.jp/item/n/778530/
地元久留米で大フィーバー
ほかに、西鉄久留米駅西口には早速、縦11メートルの「祝 金メダル！」と書かれた大きな懸垂幕が掲げられたというニュースも入ってきましたよ。https://www.nishinippon.co.jp/item/n/778799/ また、久留米市では新たに市民栄誉特別賞を創設し、素根選手へ贈呈することを検討しているそうです。https://www.nishinippon.co.jp/item/n/780226/ 運動部記者と「西日本新聞me」は、東京五輪会場から日々暑い夏の熱い戦いをリポートしています。無料会員の方は1日1本の記事が無料です。 ぜひご一読ください。
金鷲旗で戦った２人の金メダリスト
【おまけ】 2017年の金鷲旗柔道大会の決勝で対戦したのが、東京五輪女子柔道52kg級金メダルの阿部詩（うた）選手でした（当時、兵庫・夙川学院高2年）。 当時のエピソードと写真が、この記事に載っています。 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/777323/ ■福岡のミカタ 西日本新聞meアプリは、 Google Play、App Storeで「西日本新聞me」で検索！
