福岡発の新感覚調味料が誕生!フレンチシェフが生み出した「食べる粒マスタード」

新型コロナウイルス感染症で大きな影響を受けた飲食店ですが、「今だからこそ」と、思い描いていた夢を形にした人がいます。それが、「博仏ダイニング KINOSHITA(キノシタ)」のオーナーシェフ・木下晶善(きのしたあきよし)さん。かねてより、【Made in 博多】を作りたいとの思いで温めていた「食べる粒マスタード」の商品化を本格的にスタートしました。小さなお店のシェフが生み出した、新しい博多名物の開発ストーリーをライターの戸田千文さんがご紹介します。

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業界人も足繁く通う?! 隠れ家レストラン「博仏ダイニング KINOSHITA」

福岡市中央区大名、昼夜人通りが絶えない西通りから少し入った場所。うっかりすると見逃してしまいそうな小さな看板が掲げられた、まさに知る人ぞ知る“隠れ家”的レストラン「博仏ダイニング KINOSHITA(キノシタ)」。

出典:フクリパ

店内は、カウンター7席に、4人掛けのテーブルがひとつだけのこぢんまりとした佇まいが居心地よく、また、カジュアルに本格的なフレンチが食べられることから、業界人も足繁く通っているのはここだけの話。 食材の仕入れから接客、調理まですべて1人で切り盛りしているのが、オーナーシェフの木下晶善さんです。

出典:フクリパ

幼いころから料理人という夢を抱いていた木下さんは、中学卒業と同時に料理の世界へ。その後、ホテルなどで腕を磨いたのちに、2010年に「博仏ダイニング KINOSHITA」をオープンさせました。

出典:フクリパ

店名の通り、玄界灘で獲れた鮮度の高い魚介、糸島の新鮮な旬菜など“福岡産”の材料を使った「博多のフレンチ」を、選りすぐりのワインなどとともに楽しむことができます。

出典:フクリパ:その時々の旬の鮮魚を使用した「鮮魚のカルパッチョ」(左)(写真はヒラメ)と、「鴨肉のロースト」(右)

人気メニューは、自家製のすだちのドレッシングを使った「鮮魚のカルパッチョ」と、「鴨肉のロースト 赤ワインソース」。どちらも、来店した際には必ず注文していただきたい、お店の看板メニューです。

コロナ禍を機に「食べる粒マスタード」を商品化。九州の甘口醤油と大葉を使ったMade in 博多の調味料

以前は、常連客を中心に賑わいを見せていましたが、感染症の影響を受け、ここ1年以上、時短営業や営業自粛を繰り返している「博仏ダイニング KINOSHITA」。 思うように営業ができない環境になったコロナ禍で、「大きくやり方を変えなければ」と感じた木下さん。そこで動きだしたのが、お店で提供している【食べる粒マスタード】の商品化でした。

出典:フクリパ

その名も、「食べる大粒マスタード 極Tsubu 大葉醤油味」。九州の甘口醤油と大葉を使った、酸味が少ないまろやかな味わいが特徴のマスタードです。和食にも洋食にも合う味で、レストランではこれまでにもお肉のソースやサラダのドレッシング代わりに使っていました。幅広い料理に合う味ですが、一方で日本人にとってマスタードはそれほど馴染みがある調味料ではありません。どうして、博多の調味料としてマスタードを商品化しようと考えたのでしょうか。 木下さん: 「以前から、Made in 博多の商品を作ってみたいと思っていたんです。福岡って、これといった郷土料理がない土地なんです。「モツ鍋」「明太子」といった名物料理はあるけれど、「郷土料理」となるとパッと思い浮かぶものが少ない。これは悪いことではなくて、きっと昔から食材に恵まれていたからだと思うんです。

出典:フクリパ

食材が少ない地域は保存のために、手に入る食材を加工して調理をしてそれが郷土料理になる。例えば、秋田のきりたんぽも、もとは保存食として生まれたものです。でも、福岡は海の幸、山の幸が一年中、旬の新鮮な食材が手に入るでしょう。わざわざ手の込んだことをする必要がなかったんです。だからこそ、そんなおいしい食材を作って“福岡のもの”を作りたいと考えました。 一方、マスタードって、日本だとソーセージに付けて食べるくらいのイメージですが、フランスではまさに国民的調味料。日本でいう醤油のように、さまざまな料理に使われています。僕のお店は、博多をはじめ福岡や九州の食材とフランス料理が融合した“博多フレンチレストラン”。そこで、食材には地元のものを使いながら、フランスの代表的な調味料であるマスタードを作ってみようと考えたんです。」

酸味は白ワインビネガーではなく穀物酢。日本人の口に合うまろやかな味へ

日本の食卓に馴染む、福岡発のマスタード。日本人の口に合うようにと、使用する食材にはさまざまな工夫がされています。 木下さん: 「マスタード作りには、通常、白ワインビネガーを使うのですが、酸味がやわらかい穀物酢を採用しました。さらに、日本の食卓に合うようにと思って加えたのが醤油です。九州の甘口醤油と、香りが良い大葉を刻んでマスタードに混ぜました。また、マスタードは発酵させて作るのですが、苦みや辛味は発酵具合によって大きく変わってくるんです。季節や気温にも影響されるため、最初は時間や管理の仕方に苦労したこともありましたが、最近では安定して作れるようになっています。」

卵かけごはんやお寿司にも!マスタードのイメージを一新

こうして出来上がったのが、「大葉醤油風味の食べる粒マスタード」です。爽やかな大葉の香りに、プチプチとした粒触感が特徴です。九州醤油のおかげで、洋風のマスタードがまるで和の調味料のように仕上がっています。 木下さん: 「寿司など、普段、醤油で食べる料理にぜひ使ってもらいたいです。マスタードを寿司に乗せて食べるって、なかなか想像ができないと思うのですが、すごく合うんです。もちろん、洋食にもおすすめ。ポテトサラダにトッピングしたり、肉や魚料理のソース代わりにしたりと、さまざまな料理で活躍します。

出典:フクリパ

酸味がなくまろやかで、しかも醤油と大葉が利いているので、お酒のつまみとしてそのままマスタードだけを楽しんでいる人もいるんです。以前、流行した「食べるラー油」のように、マスタードだけれどマスタードではない、新しい調味料として味わってもらいたいですね。」

木下さん直伝!「食べる粒マスタード」の使い方

意外にも普段醤油で食べている料理に“醤油代わり”としてプラスしてみるのがおすすめだという「食べる粒マスタード」。 お寿司以外にも、おすすめの使い方を教えていただきました。

■卵かけごはん

出典:フクリパ

大葉醤油の風味が卵かけごはんと好相性。さらりととした卵かけごはんに、マスタードのプチプチとした食感が加わり、クセになること間違いなしです。

■納豆

出典:フクリパ

食べる粒マスタードとネバネバ系の食材は意外にも好相性。納豆にプラスすれば、ごはんにはもちろん、日本酒に合うおつまみに大変身。

■ポテトサラダ

出典:フクリパ

少し変わり種のポテトサラダをご家庭で味わいたいという方にぴったり。一気にデパ地下の味になります。サンドイッチの具材としても◎。

■サラダのドレッシングとして

出典:フクリパ

こちらは、お店でも実際に使っているテクニック。エクストラバージンオリーブオイルと混ぜるだけで簡単にお店の味に。カルパッチョにもおすすめ。

常連客によるチーム木下を結成し、クラウドファンディングで183%を達成

「大葉醤油風味の食べる粒マスタード」そのものは、6~7年前には完成し、お店の料理で振る舞われていました。そして、いよいよ本格的な商品化を考えていたころに、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大。多くの飲食店が、厳しい制限の中で営業せざるを得なくなってしまいました。当然、木下さんのお店も感染症による大きなあおりを受けることに。そんな中で始まったのが、商品化に向けたクラウドファンディングへの挑戦です。

出典:フクリパ

木下さん: 「クラウドファンディングの経験があるお客さまから、話を聞いたのがきっかけです。もともと商品化は考えていましたが、コロナの影響は大きく、これまで通りの店の経営を続けるのではなく、何か新しいことをやってみようと思ってクラウドファンディングにチャレンジしてみることにしました。 とはいえ、僕は文章を書いたり、写真を撮影したりはできないので、ライターさんやカメラマンさんに依頼して、チームを組んでページを作ることに。自分でいちからやるよりコストはかさみますが、その分、ライターさんの第三者目線でしっかり商品を紹介してもらい、写真もとてもすてきに仕上がったので良かったですね。

出典:フクリパ

商品の価値を、外にしっかりアプローチするのが目標だと考えていたので、身内にはあえてPRは行っていません。そのため、目標金額に達成するかどうか不安でしたが、目標60万円に対して集まった支援金は110万円以上と、想像を上回る結果に繋がりました。これも、紹介ページで商品の魅力をしっかり伝えることができたからだと感じています。北海道から沖縄まで、お店を知らない方から多くの支援をいただきました。高い宣伝効果があるのは、クラウドファンディングの大きなメリットですね。」

九州食材×マスタードで新商品開発の予定も

クラウドファンディングを機に「食べる粒マスタード」は、商品化に向けて一気に駒を進めることになりました。現在、九州の食材を使った新しいマスタードの開発も考えています。 木下さん: 「いろんな方に食べてもらいたいので、スーパーやお土産店などで販売できればと考えています。また今回は九州醤油と大葉を使ったマタードでしたが、ほかにもいろんな組み合わせのマスタードを作ってみたいと考えているんです。 例えば柚子胡椒や塩こうじ、明太子入りマヨネーズなど……それぞれの食材の良さが引き立つ味を作っていきたい。いろんな種類が増えて、選ぶ楽しさみたいなものがあればさらにいいなと思いますね。」 九州食材とマスタード、とっても意外な組み合わせですが、これまでにないまろやかで和のテイストが光る絶品。グルメタウン福岡から、新たに誕生した“うまいもん”に秘められた可能性にワクワクが止まりません。「食べる大粒マスタード 極Tsubu 大葉醤油味」は、店頭またはECサイトから購入することができます。あなたもぜひ、新たな博多名物を味わってみませんか。 文=戸田 千文

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【博仏ダイニング KINOSHITA】 ■住所:福岡市中央区大名1-13-12ことうビル ■電話番号:092-725-7225 ■営業時間:18:00〜20:00(コロナウイルスの影響で、現在時短営業中)

博仏ダイニング KINOSHITA

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※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

成長する地方都市 #福岡 のリアルな姿を届けます。福岡のまちやひと、ビジネス、経済に焦点をあて、多彩なライター陣が独自の視点で深掘り。 「フクリパ」は「FUKUOKA leap up」の略。 福岡で起こっている、現象を知り、未来を想像し、思いをめぐらせる。 飛躍するまちの姿を感じることができると思います。 https://fukuoka-leapup.jp

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