これは、自宅でピアノ教室を始めた友人の話です。生徒の中に、元気がない小学1年生の女の子がいたそうです。気になって話を聞くと、驚きの家庭環境が。そして後日知った事実とは…。仕事が忙しいママなら、何でもありなのでしょうか? 考えさせられた体験談です。
ピアノ教室を開いた友人
私の友人は、子どもが中学生になったのを機にピアノ教室を開きました。といっても近所のピアノ教室の生徒を引き継ぐ形で、週3日のんびり働いていました。
毎年4月になると、小学1年生が何人か入ってきます。家庭の状況に合わせてレッスンを進められるよう、最初に保護者を交えて面談したり、家族構成や自宅のピアノ環境の有無などを、1人1人ファイルに書き込んだりしていたそうです。
ある梅雨の日のこと。小学1年生の割に背も高く、大人びて見えるAちゃんが、元気がないことに気づきました。通い始めて2カ月くらいすると飽き始める子もいる中、1人傘をさしてやってきて、40分のレッスンをおしゃべりもないまま真面目に受け、また1人で帰って行きます。
Aちゃんは保護者の送迎がないため、他の生徒のようにレッスン後に様子を話すなどコミュニケーションも取れません。
翌週も元気のないAちゃん。心配になった友人はレッスンの手を止め、ジュースとお菓子を用意して少し話をすることにしました。レッスン以外の事に立ち入るべきではなかったと、後になって後悔することも知らず…。
Aちゃんの家庭環境
「いつも何して遊んでいるの?」と友人が話を振ると、
「習い事があるから遊んでない…」ぽつりとつぶやくAちゃん。
「他にも習い事してるの?」と尋ねると
「月曜日はピアノ、火曜日は習字とそろばん…」と月曜から土曜まで毎日1~2つの習い事を連ねたそうです。
「それはすごいね!」と褒める友人に、Aちゃんは
「お母さんは学校の先生をしてるから帰ってくるのは遅いし、家にはお父さんがいて私がいると邪魔になるから…」と語りだし、何やら不穏な空気に。
「お父さんはおうちでお仕事してるのかな?」と尋ねると、
「『自分探し』だって。毎日パソコンとスマホ見てる…」と返ってきたとのこと。
「そうか、お父さんお母さんも、Aちゃんも皆で頑張っているんだね!」と友人が何とか励ましの言葉をかけると
「うん、暇なのはおじいちゃんだけ」と、いきなりおじいちゃんが登場。
暇なのはおじいちゃんだけ
「習い事が終わったらおじいちゃん家に行くの。
ご飯を食べてお風呂に入ったら、おじいちゃんが送ってくれるんだ。いつも車の中で寝ちゃうから、気がつくと朝なの」と照れ臭そうに語ってくれたAちゃん。
両親とあまり過ごせていないと語る姿に、思わず涙が出そうになる友人。Aちゃんのファイルを横目で見ると、『父母と3人家族。母親の実家にピアノあり。祖父母のすすめで始める』と書いてあったそうです。
「じゃあ、いつも夜はおじいちゃん、おばあちゃんと一緒にごはんを食べるのね!」と話題を変えようとすると、
「ううん、おじいちゃんだけ。おばあちゃんは習い事が忙しいの… 暇なのはおじいちゃんだけなの」と一言。
暇な人がいなくなった?! Aちゃんのその後
その後も様子を見守っていましたが、1年程してAちゃんはピアノ教室を辞めてしまいました。「家庭の事情」という理由でしたが、実際はおじいちゃんが亡くなって、習い事の費用を出してくれるスポンサーがいなくなったからだとか…。
そして私は意外な事実を知ります。なんと世間のせまいこと、「Aちゃん」は私の子と同じ保育園に通っていたのです! そしてママさんは、保護者の飲み会に必ず参加しては
「仕事が1番、お酒が2番、誰より夫が理解者なの!」と、熱く語っていました。
すべての習い事を辞めたAちゃんは、小学校に併設された放課後のキッズスクールで過ごしていたと保育園時代のママ友から聞きました。
私も友人も
「子育ては、暇な人がすることではない!」と憤慨してしまいました。
仕事をしながら子育てをするのは大変で、すごいと思います。でも自分の都合や気持ちしか見ていない人間が、教育者として評判がいいらしいのもちょっと不思議です。
「そんな人が小学校の先生なんだ…」と子どもたちの将来的な影響までも心配してしまった出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター / 文月)