續・祖母が語った不思議な話:その参拾陸(36)「乗れますよ」

 明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」終了時に多くの方からいただいた「続きが読みたい」の声にお応えした第2シリーズです。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

 雨の夜、歩いていると突然車が目の前に止まった。
 「乗れますよ」とドアを開け見知らぬ女が言う。
 何のことだか分からず迷っているうちに車は猛スピードで走り出し、前方で止まっていた車の列に突っ込み炎上する。
 Mさんはこんな夢を何度も見た。

 そんなMさんは、ある日エレベーターを待っていた。
 ドアが開くがほぼ定員に近い人数が乗っている。
 躊躇(ちゅうちょ)していると「まだ乗れますよ」と言う声。
 見ると夢に出てくるあの女だった。
 思わず一歩下がった瞬間ドアが締まった。

 なぜ夢の女がと思っていると轟音とともにビルが揺れた。
 ケーブルが切れてエレベーターが落ちたのだ。

 …この話は小学生のときに祖母から聞いたものだが、これを思い出すような体験をしたことがある。

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 十数年前、出張で大阪にいた。
 要件を済ませた後、先方の担当者と食事をしたため、ホテルにチェックインしたのはかなり遅い時間だった。
 2機あるエレベーターの片方は調整中だったので、もう一方に乗り込んで部屋のある8階のボタンを押した。
 エレベーターは5階で停止し、ドアが開いた。

 誰も乗ってこない。
 
 よくあることなので気にもせずドアを閉めて8階で下りた。

 翌朝、朝食会場の2階のレストランまで下りていたとき、また5階で止まった。
 
 やはり誰もいない。
 
 「また5階か… 昨日もこの階で止まったのに誰もいなかったんですよ」
 「私も昨日同じ事がありました。変ですよね… 故障かな?」
 乗り合わせた年配の男性も怪訝(けげん)そうな顔をしていた。
 フロントに伝えると、そこにいたホテルマン全員がこちらを見たのが気になった。

 その日は取引先の数社をまわり挨拶を済ませホテルに戻った。
 食事は済ませてきたので部屋に荷物を置くと地下1階の大浴場に向かった。

 またしても5階で止まった。
 誰もいない。

 他の客は乗っていなかったので、ちょっとふざけて「乗れますよ」と小さく言ってみた。
 そのとき誰かが乗り込んだようにエレベーターがガクンと下がった。
 鳥肌が立った。
 急いで次の階のボタンを押し、ドアが開いた瞬間飛び出した。
 大浴場どころではない!
 階段を使い部屋まで戻ると、朝まで外に出なかった。

 後からウェブサイトでそのホテルを調べたが特に怪しい噂はなかった。
 ただ数年前、火事があり半年間休業したという記事を見つけた。

 そのホテルは今も営業している。

チョコ太郎より

 99話で一旦幕引きといたしました「祖母が語った不思議な話」が帰ってきました!この連載の感想や「こんな話が読みたい」といったご希望をお聞かせいただけるととても励みになりますので、ぜひ下記フォームにお寄せください。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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