親にとって夏休みの憂鬱といえば、子どもの自由研究ではないでしょうか。今回は、母である私のひらめきで作った工作を宿題として提出した結果、学校代表として科学館に展示されることになってしまった話です。科学館の展示を見て、思い出した時代のこととは…。
1年生ママの憂鬱「夏休みの宿題」
小学1年生の息子は初めての夏休みを迎えました。私に課されるのは、昼ごはんの用意と、夏休みの宿題チェック。
でも日々ぼんやりと生きている息子に、宿題をコンスタントにこなすことを教えるのはまさに至難の業です。
最大の難関は「自由研究」と「読書感想文」。幸い1年生は読書した本のタイトルと読んだ日を書くだけで、自由研究は「日記7日分」「工夫して作る工作」「思い出を絵に描く」の3つの「自由課題」と呼ばれるものでした。
どれも苦手なことばかりの息子に、どうやらせるか。まさしくこれが母親である私の“夏休みの宿題”でした。
思わず親がやってしまった「夏休みの自由課題」
私の仕事がお盆休みに入り、腰を据えて宿題を確認することにしました。すると、自由課題だけが手つかずのまま。
部屋にある空き箱をじっと眺め、息子にやり方を教えようと思った私でしたが、突如閃きました。そして家にあった色画用紙とBB弾の玉を使って、思いつくままに工作を始めました。
途中で息子に声をかけ
「この色画用紙に描いてある波やお魚たちを形通りに切っておいて」と頼むと嫌がらずに切ってくれました。
そうしてわずか2時間足らずで、空き箱を使った「夏の海」と命名した作品が完成したのです。
一面の青空と白い雲を色画用紙を使って表現。箱の底にはBB弾の玉を入れ、箱を傾ければ波の音を思わせる仕掛けです。
水色の色画用紙を使って、いくつもの波の形に切り取って貼り付けた海の隙間から、魚たちが見え隠れする、箱庭風な作り。魚は紙のバネを付けたので、ゆらゆら動きます。
自画自賛する私に、息子は
「すごいねぇ」とぽやんとしたひと言をくれました。
結局、それを“わずかでも作った”ということで、息子の宿題として出すことにしました。
まさかの学校代表!? 科学館に展示されることに
夏休みが明けたある日。息子が「市内の科学館に作品が展示されます」という通知を持ち帰ってきたのです! 息子に尋ねると
「校長先生が僕の作品を科学館に送ったんだって~。『波の音がいいね』ってほめられたよぉ」とちょっぴり嬉しそうに話す息子。
「え〜、そんな理由で科学館に送ったの?!」と驚愕する私。
「お母さんの作ったものが、選ばれたの? あらまあすごいわねぇ」と笑うおばあちゃん(私の母)。そんなこんなで、私と息子、実母の3人で、隣駅にある科学館に出かけました。
「工作コーナー」は、大小さまざまな作品が所狭しと展示されていました。ほとんどが「本当に小学生のスキル?!」と思うような立派な作品。その中に、ひっそりと肩身が狭そうに息子(私)の作品が飾られていました。
「周りがすごいせいかしら? なんだかちょっとさみしいわね」と実母。息子は特に言葉もなく、箱を動かしてザザーと波の音を鳴らしていました。
その他のすごすぎる作品をひと通り見てまわり、私は
「『学校代表』とはいえ、1年生。こんなものよね!」と言いながら、すっかり意気消沈した気分で、科学館をあとにしました。
子ども時代を思い出しながら気づく「作品レベル」
小・中学校時代、私は図工や美術が大の苦手でした。絵も思うように描けないし、はさみや彫刻刀もまともに使えない不器用な私は、教室の後ろに飾られる作品を見ては恥ずかしい思いをしていました。
そんな私が、子育てや幼稚園バザーなどで培った製作スキルが今回の作品。とはいえ、30歳を過ぎて「小学1年生にしてはすごい」と賞される作品を作れるようになったということです。
なんだか虚しい気分になりましたが、それでも、苦手だったことが出来るようになった喜びもあり… そんな気持ちも息子に話しました。
それ以降、息子にも変化が。相変わらず工作に興味はないようですが、はさみを使うことが楽しいらしく、なんでもきれいに切り抜くように。その出来映えたるや、私の上をゆくレベル! 7歳息子のはさみ使いは、急速に上達していったのでした。
(ファンファン福岡公式ライター / 文月)