32歳で結婚。子どもが欲しかった私は、夫に「6カ月経っても子どもができなかったら検査を受けたい」と結婚して早々に宣言しました。まさか、本当に検査を受けることになり、そのままトントン拍子で高度不妊治療につながっていくとはその時は思ってもみませんでした。仕事との両立、治療への不安、心身ともにダメージを受け夫婦関係にも亀裂が…。私の不妊治療体験記です。
まさかの不妊症発覚
20代は仕事に没頭し、32歳でやっと結婚。保育士をしていて、子ども好きなことや、私も夫も、2人兄弟だったこともあり、結婚当初から「子どもは2人欲しいね!」と話していました。
しかし、私自身の年齢のことも気になっていたので、
「6カ月妊活しても妊娠しなかったら検査を受けたい」と早々に夫に相談していました。その時、夫は快諾してくれました。
そして、あっという間に6カ月が経ち、授かる気配が全くなかったので、夫と一緒に近くの産婦人科を受診しました。すると、すぐに私に不妊の原因があることが判明。しかも、高度不妊治療である体外受精を行わなければ授かるのは難しいだろうと診断されてしまいました。
目の前が真っ暗になりました。まさか、わたしが不妊症!? 体外受精ってお金も時間もかかるんじゃないの? 仕事しながら通院なんてできるの? と不安ばかりでした。
夫に対しては申し訳なさがある一方、この不安な気持ちやどうして私が… という絶望的な気持ちを受け止めてほしくて、わざと
「私と結婚しなければよかったね…」
「赤ちゃんができなかったらごめんね…」と夫を試すようなことばかり言っていました。その度に
「大丈夫だよ」
「もし、赤ちゃんができなくても二人でも幸せだと思ったから結婚したんだよ」とはじめのうちは、夫も一生懸命私を励まし、慰めようとしてくれていました。
いざ不妊治療専門の病院へ
そして、不妊治療専門の病院へと通い始めました。治療の進行具合や身体のタイミングに合わせて、急に次回の通院日が決まります。治療がうまく進むのかという不安はもちろん、急に仕事の休みを取ることが増え、治療のことを同僚には伝えていなかったので、どう思っているのだろう、迷惑をかけてしまって申し訳ないという気持ちが膨らんでいきました。
薬を飲み続けたり、自分でお腹に注射を打ったり、診察に行くたびに結果に一喜一憂したり、高額な治療費にいつまで続くのだろうと、精神的に不安定な日々を過ごしていました。先の見えない治療を続けることへのストレスが溜まっていき、夫の前で号泣することが増えました。夫もだんだんと「またか…」と言った様子で、私は自分の気持ちを受け止めてもらいたいという思いばかりで、期待通りの言葉が返ってこないことにイラ立ち、お互いの溝が深まっていきました。
そして、少しでもストレスの要因を減らそうと、夫と何度も相談したのち、私は退職を決意しました。
ついに、妊娠!
退職することを決めてから1カ月後、胚移植(受精卵を子宮の戻すこと)をして検査結果を聞きに行く日がありました。病院に行くまで待ちきれず、夫にも内緒で一人で検査薬で使ってみました。
するとなんと… 陽性。仕事中の夫に写真付きのメールを送ると「本当に!? すごいじゃん」と歓喜のスタンプと共に送られてきました。帰ってくるなり大喜びで抱き合いました。このタイミングでの妊娠でしたが、好きな仕事を退職したことについて後悔はありません。あの時は退職という決断がベストだったと信じています。
しかし、不妊治療を終え、私たち夫婦の関係は変わっていました。
甘い新婚生活から一転して、不妊治療という大きな壁にぶつかってしまいました。「一緒に乗り越えた!」と言えば聞こえはいいのですが、結婚して徐々に見せていく本当の自分の姿を一気に見られ、お互い甘い気分から遠のいてしまい、良くも悪くも言いたいことを言い合える同志のような関係になっていました。
ただ、やはり不妊治療は結果が年齢に比例してくるので早く治療を始めることができてよかったと思っています。今はパートではありますが、保育士として再び働き始めました。これから、また新たに仕事や夫婦関係を築いていき、子どものいる新しい生活スタイルを楽しんでいきたいと思っています。
(ファンファン福岡公式ライター/加藤 麻衣子)