幽霊が移民したら!? そんな独特の発想から生まれた神里雄大／岡崎藝術座のホラーコメディー「イミグレ怪談」が9月2日（土）と3日（日）、久留米シティプラザ（久留米市）で上演されます。作・演出を手がける神里雄大さんは南米ペルー生まれ、神奈川県川崎市育ち。幼少期から移民や外国文化に触れる機会が多く、国内外を旅することもしばしばで、国内外での体験エピソードをもとに「移動し越境する人々」をテーマに作品を発表しています。公演を前に、本作を書いた思いや久留米公演への期待などを聞きました。
タイ、ラオス、沖縄県に滞在して生まれた「イミグレ怪談」
今作「イミグレ怪談」は、神里さんが沖縄県で出合った本「琉球怪談」を読んで「幽霊が移民したら…」というアイデアが生まれ、タイやラオスに滞在中に聞いた怖い話をもとに制作したホラーコメディー。「タイの幽霊」「ボリビアの幽霊」「沖縄の幽霊」が、それぞれの土地にまつわるエピソードを語っていき…。人間、動物、虫、植物など生き物の「声」に耳を傾け、見る人それぞれの想像によって「見えない隣人＝幽霊」と出会う旅へいざないます。
＜あらすじ＞
同窓会があるからと集った3人。焼酎のルーツを求めてタイに渡り、そこで出会った女に魅せられた話をする者、遠くの地に移住した人たちの物語を話す者、沖縄の幽霊に幽霊のことを語り出す者。酒、年金、お祭り、戦争、未来、死、バーベキュー、前世、話は多岐に渡り・・・どうも3人の会話は噛み合わない。それどころか、どうやらお互いに見えているのか、見えていないのかさえ怪しい。頭上に輝くのは満天の星空か爆弾の光か…、彼らの語りから見えてくるものとは？
「最後の作品になるかもしれないと思って無心で書いた物語」
―“移動し越境する人々”をテーマにした演劇の創作を始めたきっかけは？
旅に出てさまざまな場所でいろんな話を聞くうち、自分の中にいつまでも残るエピソードや体験を作品にするようになりました。関東で育ち、東京都内に住んでいますが、故郷を離れて生活している人に対する憧れが強くあり、その憧れが今のスタイルになったと思っています。
―「イミグレ怪談」を書いた時の思いとは。
（その当時）社会や身の回りのさまざまな状況が変化していく中で疲れ果てていて、将来への不安や現状への不満などいろいろ感じることがあり、「これが自分にとって最後の作品になるかもしれない」という思いすらありました。とにかく無心で書くことに集中しました。決してポジティブではありませんが、特別に悲観的ということもなく、できたものを受け入れよう、無意識下にあるものを具現化しようと思っていました。
「久留米公演での出会いや反応を楽しみにしています」
―コロナ禍の2022年に初演された「イミグレ怪談」は、神里さんが出演者それぞれの元に赴きマンツーマンで稽古したそうですね。その稽古スタイルでメリットとして感じたのはどんな点？
最大のメリットは、ある程度予算が少なくても、いろいろな所に住んでいる俳優と仕事ができる、その可能性を強く感じたことです。同じ場所に住んでいなくても、あるいは集まらなくても創作ができるのは、とてもいいことだと考えています。
―2022年に沖縄、東京、京都の各地で公演されての手応えは。
毎回、観客からの感想で自分が全く考えていなかったこと、予想もしていなかったことを聞けるのがとても新鮮で楽しんでいます。いろいろな解釈が入り込める（作品に仕上がった）、ということを非常に前向きに捉えています。
―久留米公演に向けてのメッセージを。
久留米市での上演は初めてです。私も久留米に伺うのは初めてなので、どんな出会いがあるのか、どんな反応があるのか、とても楽しみにしています。一見とりとめのないような会話が続くシーンもありますが、観客の皆さんには五感をフル活用して楽しんでもらえたらうれしいです。
久留米シティプラザ「知る／みる／考える 私たちの劇場シリーズ」 vol.3
神里雄大／岡崎藝術座「イミグレ怪談」
日時：9月2日(土) 17:00 開演 ※終演後アフタートークあり
3日(日) 13:30 開演 ※終演後シアターカフェあり（申込優先／当日飛び入り参加可）
場所：久留米シティプラザ Ｃボックス（久留米市六ツ門町8-1）
料金：一般3,500円、U25（大学生～25歳）2,000円、小学生～高校生1,000円 ※税込み
※未就学児入場不可
※U25、小学生～高校生は入場時に要証明書提示
問い合わせ：久留米シティプラザ
電話：0942-36-3000（10：00～19：00/休館日を除く）
