2019年、父の日のエピソードです。私はそれまでは実父に品物をプレゼントすることが多かったのですが、去年は違った形で感謝の気持ちを伝えたいと考えました。子どもたちに相談すると「おじいちゃんのためにパーティーがしたい」とのこと。そこで、サプライズパーティーを開くことにしました。
最高のおもてなしをしようと親族も誘って計画
この時の父の日は、ご飯を一緒に食べるだけではなく、何か特別なサプライズを用意したいと考えました。8歳の息子と5歳の娘に「どんなことをしたい?」と聞くと、「手紙をプレゼントしたい」と提案してきました。こういった機会がないと、なかなか手紙を書くことがありません。いい案だと思いました。 さらに「いとこも家に呼んでパーティーがしたい」と言います。確かに大勢でワイワイ過ごすのも楽しいかもしれません。そこで同年代の弟2人の子にもパーティーの参加と手紙をお願いしました。みんながどんな手紙を書くのか、私自身も楽しみでした。母にはパーティーの概要を伝え、父には内緒にしてもらいました。 待ちに待った父の日がやってきました。朝からリビングに大きなテーブルを置き、父の好きな赤飯や刺し身、天ぷらなどを並べていきます。子どもたちは、折り紙で作った輪っかで部屋を飾り付けました。父がどんな顔をするのか想像すると、ワクワクが止まりません。着々と準備が進むなか、姪(めい)や甥(おい)がやってきました。これで、子どもだけで7人もいます。みんなが集まるとてんやわんやの大騒ぎ! 母には少し時間をずらして来てもらうよう、お願いしていました。料理も部屋の飾り付けもバッチリ。あとは父母が来るのを待つだけです。ドキドキしながら待っていると「ピンポーン」インターホンが鳴りました。
寡黙な父の目からあふれる涙に胸が締め付けられ
「とうとう来た!」みんなドキドキしながら、クラッカー片手に玄関でスタンバイです。カチャ…。扉が開き、父母の姿が見えた瞬間、みんなでクラッカーを鳴らしました。 突然のことで、父は腰を抜かしてしまうほど驚いていました。孫が全員集合しているとは思いもしなかったのでしょう。普段は寡黙な父ですが、顔がほころんでいました。終始笑顔が絶えない姿を見ていると、どんなプレゼントより孫に勝るものはないと感じました。心を込めて手作りした料理も喜んでもらえました。子どもたちは部屋中を走り回り、なかなか落ち着かない状況でしたが、これも良し! 楽しい時間は、あっという間に過ぎてゆきました。 パーティーも終盤になり、子どもたちの手紙のお披露目です。私が「父の日のプレゼントは、子どもたちからの手紙です」と紹介すると「いつも優しくしてくれて、ありがとう」「おじいちゃん、大好きだよ」と、一人ずつ父に手紙を読んでいきました。「最高の…プレゼントをありがとう」。父は涙を流し声を詰まらせながら、お礼を言いました。 短い言葉でも、感謝の気持ちが伝わる手紙ばかりでした。父を泣かせるつもりだったのに、周りで見ていた私たち親の方が大号泣です。物のプレゼントもすてきですが、たまにはこうした人間味あふれる感謝の伝え方もいいなと感じた一日になりました。 (ファンファン福岡公式ライター/伊藤優香)