「おもちゃ買って~!」とおねだりするのが子どもと思いきや、長男は全くねだらない子どもでした。そんな息子がかわいくて、買い続けた数々のおもちゃ。しかしそこには、幼いながらも策士な息子の考えがあったのです。
おもちゃ屋 母と子の闘い
最寄りのショッピングモールの3階には、おもちゃ屋がありました。所狭しとおもちゃが並んでいましたが、小さな子の目線の高さにおもちゃを並べるそのテクニックは、大人である親でもつい引き寄せられてしまうほど。地元の子ども達は皆、そのおもちゃ屋を利用していました。
当時3、4歳だった息子も、決まっておもちゃ屋に吸い寄せられて行きます。ちょこんとしゃがんで、おもちゃのバスにご執心な姿はほんとに可愛く、今も忘れられない光景です。
でも不思議なことに、私が
「帰るよー」と声をかけると、いつも息子は未練なく、すっとこちらに向かって来ました。
「買ってー!」とぐずる子が近くにいても、真似もせず、息子は「ねだる」という攻撃をしかけてきませんでした。
「欲しい」と言わないから、買ってしまう
一途におもちゃのバスを見る姿に、可愛らしさがこみあげて、特別欲しがってもいないのに無性に買ってあげたくなる衝動に駆られる私。結局、いつも息子におもちゃを買い与えていました。
幼稚園に入っても変わらず、他のお友達がねだる姿を見ても、無言。お友達はというと
「お母ちゃんのケチ!」とある意味子どもらしく、母親に文句を言い続けていました。
欲しいと言われず、「ケチ!」とも言われず…。でも私から
「欲しいの?」と問いかけると、はにかんだ表情でコクンと頷く息子。ついつい買い与えてしまったおもちゃは、いつしか部屋いっぱいになりました。
買ってもらう度に、こちらからすると「喜んでいるのかな?」といった反応しか見せない息子でしたが、新しいおもちゃもしっかり仲間に入れて楽しそうに遊んでいました。
下の子が生まれて違いにびっくり
逆に、次男はなんでも欲しがるタイプでした。14歳離れた子育ては、私もすっかり肝がすわっており、おもちゃを欲しがられても
「お兄ちゃんのがあるでしょ!」と一刀両断。
実際におもちゃがたくさんあるだけでなく、なぜか「買って」と言われると無性に買いたくなくなるのです。さすがに
「お母さんのケチ!」とふてくされはしませんでしたが、次男のおねだり攻撃は引き下がりません。
口が達者で知恵者の次男は、5歳にもなると欲しいおもちゃの価値と、自分にとってどれだけ必要かを延々アピールし続け、最後は布団の中で涙を浮かべて
「買ってほしいのに…」と手に入らないことを悲しむのです。
結局根負けし、お兄ちゃんが持っていないおもちゃを、たまに買ってあげることにしました。
私は、当時大学生になった長男に子育ての愚痴話を聞いてもらうことに。
まさかの真実! あの可愛らしさは罠だった
「なんでだろう。欲しいって言われると買ってあげたくなくなるのよね。あなたの時は欲しがらないのに買ってしまったのに」とぼやくと、長男は、してやったりと言わんばかりの笑顔を向けて、勝ち誇ったかのように告白しました。
「僕は、おもちゃを欲しがっている子が買ってもらえないのを見て、『買って』と言うと買ってもらえないと思ったんだ。だから言わなかっただけなんですよ」と!
まさかの息子の告白に、あれは戦略だったことを初めて知りました。愛らしさの裏側で、母親におもちゃを買わせるテクニックを持ち合わせていたのです! 正直、結構心に堪えました…。
欲しいと言わない姿がいじらしくて、かわいかっただけにショックは大きかったです。そして
「弟は、お母さんという人間を理解していないから、しょっちゅう地雷を踏んでいますよね!」と幼い弟の戦略の甘さを高らかに笑う兄。
それから更に10年
この心理戦は、息子たちが大きくなった今も続いています。欲しがる弟に、欲しがらない兄。心配になってあれこれやってしまうのは、何も訴えない長男のほうなのです。
そんなやりとりを見てきたせいか、最近高校生になった次男が“欲しがらない戦法”を使い始めたのは言うまでもありません!
これからも兄弟の違いを微笑ましく思いながら、成長を見届けたいと思います。
(ファンファン福岡公式ライター / 文月)