反抗期がないのはダメ?!原因や影響から考える親の関わり方

小学生高学年から中学生にかけて訪れる第二次反抗期。親世代に比べて、現代の子ども達は反抗期がない子が増えているといわれています。

実際、反抗期は子どもの成長過程にとって大切な通過点ですが、反抗期がない子は今後大人になるにつれて何か影響がでてくるのでしょうか。今回は「反抗期がない」ことについて原因や子どもに与える影響・適切な親の関わり方について元保育士のライターと共に学んでみましょう。

目次

反抗期とは?

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子どもの反抗期は大きく分けて2回訪れます。発達心理学などではこれを第一次反抗期、第二次反抗期と呼んでおり、同じ反抗期といっても成長過程における子どもの発達の様子や反抗の仕方などは異なります。

第一次反抗期

第一次反抗期は、“魔の2歳児”とも呼ばれる2歳から3歳くらいに訪れます。この時期の反抗期は自我が順調に発達している証拠。

お着換えや、食事など生活の中で自分ひとりでやりたいという気持ちが強くなります。しかし、やりたいことと、実際に自分ができることの差が生まれ、心の葛藤が生まれるのです。やりたいけどできない!これが欲しい・やりたいのに親がダメっていう!そうやって思いどおりにならないことのもどかしさから癇癪を起したりしています。

俗にいう「イヤイヤ期」=第一次反抗期と捉えられるでしょう。この時期の子ども達は言葉が出始めてはいますが、まだまだ相手に思いをうまく伝えられずにいます。個人差はありますが、言語の発達と共に次第に落ち着いてきます。

第二次反抗期

第二次反抗期は、イヤイヤ期から約10年ほどたった小学校高学年から中学生にかけて訪れます。今までは、親と兄弟や自分といった狭い社会で過ごしてきた子ども達。小学校・中学校生活を通して、多くの友人や先生たちと関わりさまざまな価値観や思考を学んでいくようになります。

そこで、感じた親の価値観の矛盾や、親とは違う自分の信念や価値観を確立していこうという精神的な側面から反抗が始まることが多いようです。

親から自立していく過程でおきる発達段階の一つとしていわれている“心理的離乳”がちょうど第二次反抗期位の子ども達に起き始めるのです。今までの親子関係が大きく変化し、新たな親子間系を構築していく時期になります。

第二次反抗期の子どもの様子

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小学生から中学生頃に始まる第二次反抗期は、心の発達に伴い、親からの精神的な自立が始まるころ。西日本新聞が2019年12月に発表したデータによると、子どもの反抗が始まったと思う時期として小学生が57.7%、中学生が30.6%と全体の80%以上の子ども達が小学生・中学生で反抗期を迎えていることがわかりました。

反抗期は親の意見に反発したり、干渉してくる親がうっとしく感じて反抗的・批判的な態度をとるようになります。反抗期の期間や激しさは個人に差がありますが、反抗期の子どもの様子は大きく2種類に分けられます。

親とのコミュニケーションの遮断

反抗期の時期は、親との積極的なコミュニケーションを回避し、殻に閉じこもるタイプの子どもがいます。親が「学校でなにかあった?」「誰と遊びにいくの?」など子どもにしゃべりかけても「別に…」などといって会話を遮断し自分のことや友達のことを話したがらなくなるように。

西日本新聞のデータでも、反抗期で親が困ったこととして14.4%の人が「子どもとの会話がない」と回答しています。

元々口数が少ない子などに対しては反抗期なのか親が分かっていない場合も多く、態度で示さないために子どもの悩みや問題に気づきにくいという面があります。

言葉や態度で親を攻撃・反抗する

ドラマなどでもでてくるいわゆる反抗期真っ最中というようなタイプが、言葉や乱暴な態度で親に攻撃する子ども。なんだかイライラがおさまらず「ウザイ!」「うるさい!」など強い口調で親に反抗したり、ものを投げたり、物の扱いが乱暴になったり荒っぽい行動が目立ってきます。

親だけでなく、教師に対しても同じような態度をとってみせたり仲間と群れて一緒に反抗することで問題が起きたりします。
【参照:反抗期「小学生から」6割 | アンケート | 西日本新聞 10分トレーニング (nishinippon.co.jp)

元保育士ママ

反抗期はこの二つの特徴を併せ持つ子も多くいます。特に言葉使いなどは周囲の友達の影響を受けやすく、突然強い口調になる我が子に驚く親も多いでしょう。

反抗期がない子が増えている?

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我々親世代と比べて今の子ども達は反抗期がない子が増えているといわれています。2016年に明治安田総合研究所が全国の親約1万人と子ども6,000人を対象に行った「親子の関係についての意識と実態に関する調査」では、親世代が子どもの頃と現代の子ども達を比べて、反抗期がなかったと自分で思う人が今の子ども達の方が増えているという結果になりました。

親世代は男性・女性共に反抗期がなかったと思う割合が30%以下。これに対し子ども世代は、反抗期がなかった思う割合は男の子が40%以上あり、女の子も35%いることが分かりました。

【参照:2016年 親子の関係についての意識と実態 | 調査研究・レポート | 明治安田総合研究所 (myri.co.jp)

反抗期がない子が増える背景

昔と比べて反抗期がない子が増えている現状には、親の育て方や、親子関係に変化ができているのも要因の一つです。どんな背景があるのでしょうか。

叱るより褒める育児をしている

昭和世代の親は、頑固おやじなイメージで何か悪いことをしたり、親に反抗すると親から厳しく𠮟責されたり、きつく怒られることもありましたね。特に父親は息子に厳しく時には手がでることなどがあったという家庭もあるでしょう。

しかし、平成から令和になり、今の育児は“褒めて伸ばす”ことを大切にしている家庭が増えています。優しい親のもと、子どもが親に対してストレスがたまりにくいということも反抗期が考えられます。

友達のような親子関係

ライターの周りでもよく見られるのが、親子関係がとてもフレンドリーで友達のような関わり方をしている家庭。好きな芸能人や好きなドラマの話で親子で盛り上がったり、子どもの恋愛相談に親がのったりするなど友達付き合いのような楽しい親子関係を築いている家庭も多いでしょう。

親が子どもの良き理解者になっており、心を閉ざす必要も反抗する必要もないということから反抗期を迎えずに大人になる人もいます。

親が子どもを支配しすぎで反抗できない場合も

上の二つの理由とは逆に、親が厳しすぎて子どもが反抗すらする気になれないという家庭もあるでしょう。親が支配的な存在である場合は、子どもは「どうせ言ってもしょうがない」「反抗したら何倍にもなって怒られるのが怖い」などの気持ちから反抗せずに我慢して良い子を演じていることもあります。

元保育士ママ

素直で良い子だから反抗期がないのは安心ですが、我慢して自分を押し殺してしまっているために反抗期がないお子さんには注意が必要です。

反抗期がない子に起こる影響とは

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反抗期は子どもの自律心が芽生えて、自主的に考え行動できるようになる成長・発達において大切な時期でもあります。この反抗期がないまま大人になってしまうと、子どもに何かしらの影響がでてくるのでしょうか。

感情を相手にうまく伝えられない

反抗期がないまま成長しても、上手に社会性を身につけ自己肯定感も高く素直な大人になる子もいる一方で、自分の気持ち・感情を相手にうまく伝えられずに悩んでしまう人もいます。

第二次反抗期では、相手の思考・行動を自分と比べて疑問に思ったり、考えることで自我を確立していきます。反抗期の経験がない場合、自己主張の仕方が分からないまま成長して大人になり、感情を相手にうまく伝えられずにコミュニケーションに悩むなどの影響があります。

大人になってから反抗期の反動で荒っぽくなる

親や教師、目上の人へ反抗する機会がないまま成長した子どもの中には、大学生や社会人になってから遅い反抗期を迎える人も。

成人になって、親孝行をし始める友人たちが多い中、いつまでも甘えた考えを持っていて親へ依存したり、年老いた親への暴言や行動が荒っぽくなり親を傷つけてしまうなどの危険も。親だけでなく、上司や周囲の人間に対しても反抗的・挑発的な態度で威嚇してしまうこともあるようです。

自分で自分の人生を決められない

親が厳しく支配・管理していて反抗期に反抗ができなかった子どもは、大人になっても自分の人生を自分らしく生きられずに悩んでしまうこともあります。

学生時代に親に敷かれたレールをそのまま進んでいくと、分岐点や、進路変更があった場合に自分自身でどこに進んでいけばよいのか分からなくなってしまうのです。

元保育士ママ

子どもの人生は親のためのものではありません。子どもが自分の道を自分で切り開いていけるような力をつけるのも反抗期が重要な役割となっているのですね。

隠れ反抗期に注意!

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親からみて、一見この子は反抗期がないのかしら?と思っていても実は「隠れ反抗期」を迎えているという子もいます。このような子は、親が子どもを支配しすぎで反抗できない場合に起こりやすく、むしゃくしゃした気持ちを陰で発散している子がみられます。

SNSで隠れて反抗する

最近の子ども達によくみられるのが、SNSなどを使用して親の悪口をつぶやいたり、暴言を吐くなどの反抗的な投稿。親に面と向かっていえない思いを、SNSを通じて表現しています。親が知らない裏アカウントで投稿するため、親がきづきにくいことも多いでしょう。

SNSにアップされる言葉などは、どんどんエスカレートしやすく、知らぬうちに子どもの内面に隠されている攻撃的な性格が強まってしまう心配があります。

子どもが自分らしくいられる適度な親子関係を

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激しすぎる反抗期に悩む親も、反抗期がなくて悩んでいる親も、子どもとの親子関係は適度な距離感で見守ることが大切です。

言いたいことが言える親子関係

反抗期がない子には、子どもが言いたいことを遠慮せずに言えるように親が関わっていきましょう。子どもの話を遮らず、何か話したい様子ならば最後まで話しをきちんと聞いてあげましょう。

そのうえで、子どもの意見を受け止めつつ、「お母さんはこう思うな」「お父さんだったらこうするかな」などと違う考え方もあることなどを教えてあげてください。

親は何があってもどしっと構える

反抗期がないのが心配だからといって、わざと反抗させるように強気口調になる必要はありません。そして、思ったより少し遅れて反抗期が来た場合も、親はどしっと構えていてくださいね。

反抗期があってもなくても、基本的な信頼関係を小学生・中学生の時期に築きあげていくことが大切です。過干渉・過保護になりすぎず、子どもの自立心を尊重してあげられるように温かい目で見守ってあげましょう。

【参考文献】

・「反抗期子育て乗り切りマニュアル」主婦の友社

・「完全カラー図解 よくわかる 発達心理学」監修者 渡辺弥生 ナツメ社

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

6歳と11歳の娘の育児真っ最中のママライターです。結婚前は保育士として私立保育園で約3年間勤務経験あり。保育士目線と母親目線で子育ての悩みに寄り添えるような記事を書いていきたいと思っています!

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