「ついつい子どもにイライラしてしまう。」「今日も子どもを叱ってばかりだったな。」など育児について悩んでいる親も多いのではないでしょうか。きつく怒ってしまった場合は罪悪感も感じますよね。
本当はパパママだって怒りたくないし、いつもニコニコしていたい。そんな中で巷では、「叱らない育児」を推奨している専門家も多くいます。この「叱らない育児」ってどういうことをさすのでしょうか。今回は元保育士ライターが、叱らない育児の良し悪しや、親子で笑顔になれる子育てのポイントについてご紹介します。
ついつい感情的に子どもを怒っていませんか?
子育てをしていく中で一度も子どもを怒ったことがないという人はすごく少数なのではないでしょうか。普段はあまり叱ることのない子でも、何か危険な場面やいけないことをしてしまった時には親も強くしかりつけたり思わず感情的に注意してしまうこともあるでしょう。
令和2年に文部科学省が委託調査をした「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」では、0~18歳の子を持つ親3,421 人にアンケートを実施。その中で育児についてどんなことに悩んでいるかという項目では、しつけの仕方がわからないという回答が非常に多く寄せらせました。
叱り方や褒め方などさまざまなしつけの仕方がありますが、多くの親が今もとまどい試行錯誤しながら育児をしている様子がみてとれますね。
叱らない育児とは?
そもそも、叱らない育児とはどのような育児方法をいうのでしょうか。簡単にいうと叱るのはやめて「褒めて伸ばす育児方法」。子どもがのびのびと情緒豊かに育つには叱るより褒めることの方が大事だという考えのもとにできたものです。
自己肯定感を高めるためにも、子どもにたっぷりと愛情を注いで沢山褒めてあげることはとっても大切ですが、間違った解釈で叱らない育児を目指していると危険です!
叱ると怒るの違い
子どもに親が注意する際に使う言葉として「叱る」と「怒る」がありますが、この違いをご存じでしょうか。「叱る」は、子どもや生徒などに対して必要な助言・指導を行うこと。相手のためによりよくなるようにアドバイスすることをいいます。
対して「怒る」は自分の感情を相手にぶつけることをいいます。起こってしまった出来事に対しての怒りの感情を一歩的に発散させているともいえます。
叱らない育児はこのどちらも極力せずに子どもを褒めて育てようという考えが主になっています。
叱らない育児の良い点
では、実際に叱らない育児をしていくことで子どもや親にとってどんなメリットがあるのでしょうか。
自己肯定感を高める
子どものありのままの姿を受け入れて、沢山褒めて育てることで自己肯定感を高めることができます。親から愛されている・自分は大切な存在なんだと実感する体験を多くすることで、心も安定し情緒豊かな子に育つともいえます。
穏やかな子に育つ
お母さんお父さんが常に穏やかで優しい家庭は、子どもも思いやりをもった穏やかな子に育ちやすいです。親から頭ごなしに怒られるのではなく、きちんと話を聞いてもらっていると、子ども自身が友達とトラブルになった時も落ち着いた対応が身についています。
自主性が身につく
叱られるより褒められる経験が多い子は、成功体験を多く積むこともでき自分に自信が持てて自主性が身についたり、能動的に行動する力も身に付きます。
叱らない育児の問題点
叱らずに毎日の育児が済んだらどんなに楽なことでしょう。子どもを褒めて伸ばすことにはとても魅力的な効果が期待できますが、叱らないという解釈を勘違いした育児をしていると逆に子どもにとって悪影響を与える恐れもあります。
社会のルールが守れない
叱らない = ほっておくという考えをしてしまうと、子どもがお友達とトラブルを起こしやすくなります。おもちゃをとってしまう・順番が守れないということがあっても、悪いことだと認識できず、相手の気持ちを考えられないまま育ってしまうかもしれません。
そのようなことが続くと、小学生になってからも学校のルール、社会のルールが守れない子になる心配もでてくるでしょう。
親子で孤立する場合も
「わが家の教育方針は叱らない育児なので」という考えが強すぎると、幼稚園や小学校で他の保護者や友達から孤立しやすくなりことも。
各家庭、教育方針は育児の考え方はさまざまです。子どもに対してぶれた態度はよくありませんが、時には柔軟に接していく必要もあるかもしれません。
親以外に叱られたときうまく立ち直れない
今まで親に叱られた経験がないという子どもは、学校へ行って先生に𠮟られた時になかなか立ち直ることができない。パニックになってしまうという場合も。
先生が怖くなり、学校や幼稚園へ通うことも拒否してしまうという話も聞きました。
今日から実践したい子どもへの関わり方
叱らない育児は良い面悪い面両方持ち合わせていると思います。親が大事にしたいのは、子どもを一人の人間として尊重し、生きる力をサポートすること。できるだけ叱らずに、親子で楽しく過ごせるような関わり方のポイントをご紹介します。
怒るのはNG。きつく叱った後は必ずフォローを
子どもに対して感情的に「怒る」のはできれば我慢。しかし、何か危険なこと・人を傷つけてしまった時などにはきちんといけないことを伝える必要はあります。その際は、一呼吸おいて、何がいけなかったのか、どうすればよかったのかを子どもが分かりやすいように伝えましょう。
まだ相手の気持ちを考えることが難しい年齢なら、「お母さんは悲しかったよ」「お友達はショックだったんじゃないかな?」など気持ちを代弁して想像させるというのもあり。
親も人間なので、思わずカッっとしてしますこともあります。そんな時は必ずフォローしてあげましょう。
ありがとう・ごめんねは親も大切に
親子関係は主従関係ではありません。子どもにも「ありがとう」や「ごめんね」などを素直に伝えられると素敵です。簡単な言葉ではありますが、なかなか親からごめんねと伝えられていない人も多いようです。
このような言葉を親が大切にできていると、子どもも友達や周囲の人へ自然と優しく素直に接することができるようになりますよ。
短所を長所に言い換えてほめてみよう
ついつい子どもの悪い面が気になって叱ってしまうと悩んでいるなら、その短所と思っていることを長所に言い換えてみましょう。長所と短所は紙一重なので、言い方を変えてみると叱るのではなく褒めることもできるようになります。
例えば、
・頑固でいうことを聞かない → 自分の意思をしっかり持っている
・短気でうるさい → 自己表現ができている
・おとなしい → 冷静で周りをよくみている
・しつこい → 粘り強い、諦めない気持ちを持っている
などとも言い換えられますね。子どもの性格を否定せず良さを見つけてあげてください。
上からではなくお願いベースで伝えみて
お出かけする時になかなか準備をしてくれない、遊んでばかりで次の行動に移せないという時は思わず「早くして! 急ぎなさい!」と言ってしまうことありますよね。しかし、この「急いで!」という言葉はあまり使わない方がよいとされています。
結局急いでほしいのは親の都合が原因なことが大きいのですから、そんな時には、叱るのではなく「新幹線の速さでできるかな?」「お片付けできるとお母さんすごく助かるな」などとお願いベースで対応してみてはいかがでしょうか。
甘やかさず甘えさせる
叱らない育児は放任主義でも、甘やかしているわけでもありません。子どもを必要以上にあまやかさず、たっぷりと甘えさせてあげましょう。親に大事にされている・愛情をしっかりともらっていると感じられることで子どもの自己肯定感も高まり、叱る場面もおのずと少なくなっていくかもしれません。
怒った自分を責めず愛をもって接しよう
親だって人間ですから、思わずイラっとしてしまうこともあります。そんな時は自分を責めすぎないでください。言い過ぎてしまったり子どもに悪いことをしたと感じた時には素直に謝る。そしてリカバリーを忘れずに。
できるだけ怒った顔よりもお母さんお父さんの笑顔が沢山子どもの目に映るように、親子で楽しくHAPPYな毎日を過ごしてくださいね!
【参考文献】
・お母さんの心がラクになる!怒らない子育て 水島広子 青春出版社
・尾木ママ流 叱らない子育て 尾木直樹 KADOKAWA