娘が大切にしているぬいぐるみを不注意で落としてしまったときでした。落としたぬいぐるみを見つけたときには、ぬいぐるみは車道の真ん中。娘の大事なぬいぐるみが車にひかれてしまう! と思ったとき、おじさんのクールな神対応に救われました。
娘のお気に入りのぬいぐるみ
娘が4歳のとき、お気に入りの白いうさぎのぬいぐるみがありました。
寝るときも一緒で、遊ぶときもずっと自分のそばに置いておくぬいぐるみ。「うさぎちゃん!」と呼び、娘はいつもうさぎちゃんにべったりでした。
お出かけにもうさぎちゃんを持っていきますが、まだ4歳の娘なので、落としたり、どこかに忘れてきたりすることもしばしば。そのため気づくと、
「ちゃんとうさぎちゃんは持ってる?」と確認するのがルーティンになっていました。
ある日そんなうさぎちゃんを連れて、近所のお散歩に行くことに。娘は専用のおんぶ紐にうさぎちゃんを入れ、うさぎちゃんを背中で揺らしながらお散歩に出かけました。
お散歩中ぬいぐるみがない!
お散歩をしている途中、信号のある横断歩道を渡りました。うさぎちゃんとのお散歩がうれしい娘は、ご機嫌にスキップをしながら横断歩道を渡ります。そして横断歩道を渡り切ったそのときでした。
いつもの癖で、
「ちゃんとうさぎちゃんを持ってるかな?」と娘の背中に目をやると、おんぶ紐に入っていたはずのうさぎちゃんがありません。思わず
「あれ?! うさぎちゃんは?!」と言うと、娘はすぐに自分の背中を確認し
「ない!!」と焦った顔になりました。
すぐに今歩いてきた道に目を向けると、今通ったばかりの横断歩道の上にうさぎちゃんが横たわっているではありませんか! 娘と思わず
「あっ!」と叫びましたが、歩行者用の信号はすでに点滅中。すぐに赤に変わってしまい、咄嗟に
「うさぎちゃん!」と飛び出そうとした娘の手を掴み
「ダメ!!」と止めました。しかし、娘は泣きそうな顔で
「やー!!」と腕の中でジタバタと抵抗。
すぐに車道側の信号が赤から青に。車に轢かれてぺたんこになったうさぎちゃんを想像すると、娘はどんな気持ちになるだろう… と悲しい気持ちになりました。
「かわいそうだけど、そのまま車に轢かれちゃうだろうな…」と思いながら、動き出すであろう車とぬいぐるみを見つめていました。しかし、信号待ちをしていたぬいぐるみの前の車はなかなか動きません。
ぬいぐるみが轢かれちゃう…!
思わずパッと顔を上げて、うさぎちゃんの前で止まる車の中を見ました。
車の中には怖い顔をしたおじさんがいて、こちらを見ています。そして車の窓があいて歩道にいる私たちに向かって
「止まってるから! 落とし物とりなさい!」と言ってくれました。
その声にハッとし、私は娘を抱っこしながら止まっている車の真ん前まで大股でダッシュ。ガシッとうさぎちゃんを掴みあげ、またすぐにダッシュして歩道まで戻りました。そしてその勢いのまま振り返り「ありがとうございます!!」と、思い切り頭を下げました。
すると止まっていてくれた車のおじさんは、ニコっと笑顔。スッとこちらに手を上げてひらひらと手を振りながら、クールに去っていきました。
停まってくれた車の後ろには何台か車が並んでいましたが、クラクションなどを鳴らさずに止まっていてくれました。おじさんが止まってくれていなかったら、車に轢かれて汚れていただろうぬいぐるみ。
怖そうな顔をしたおじさんでしたが、ぬいぐるみに気づいてくれたことや、ぬいぐるみを通して娘の気持ちも大事にしてくれたことが本当にうれしかったです。娘は
「おじさん、やさしかったね!」と無事にもどってきたぬいぐるみを嬉しそうに抱きしめていました。
(ファンファン福岡公式ライター/K)