明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」終了時に多くの方からいただいた「続きが読みたい」の声にお応えした第2シリーズです。
祖母はとても多くの話をしてくれた。
ここでは原則として物語の形になったもの(時には断片的な話を類推して繋げたもの)を連載してきたが、祖母が語った中には極々短く、前後が欠けた投げっぱなしのものもたくさんある。
今回はその中から三話を取り上げてみようと思う。
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【たぬき】
江戸時代中頃、岡山県の◯◯山に一匹のたぬきが住んでいた。
◯◯山には観音さんが祀られていて、麓から山頂の観音堂まで長くて急な石段が続いていた。
お参りする人が多いので、「自分も」とある日たぬきは観音堂まで行ってみることにした。
たぬきは前肢が短いので上がりの石段はラクラク、鼻歌のように「糞食え観音、糞食え観音」と唱えながらずんずん登って行った。
山頂のお堂のお供えをちょろまかし満腹になったたぬきは、ひと眠りした後石段を下り始めた。
登りと違ってまるで逆落としのような体勢、しかも思い切り飛び出したからたまらない。
「助け観音! 助け観音!」と叫びながらたぬきは石段を転げ落ちて行った。
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【猫の子】
祖母が子どもの頃、村では鼠除けとして猫を飼うのが流行った。
どの家にも猫が大切に飼われていたが、生まれた子猫は必ず他の家子猫と交換をするのが習わしとなっていた。
なんでも昔、村に泊まった徳の高い僧侶が「猫の跡取りは良くないから、二代続けて飼ってはいけない」と言ったことが理由だった。
祖母に「犬は?」と聞いたが、犬のことは誰も気にしていなかったそうだ。
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【臼】
祖母が五歳の頃。
近所に住む同い年の◯◯の家の納屋で遊んでいた。
◯◯はどこかから杵を見つけ出してきて、納屋に置いてあった餅つき臼を搗(つ)いた。
祖母も搗こうかと待っていると、家の中から◯◯のおばあさんが出てきて二人に言った。
「止めろ止めろ。空臼を搗くと死人(しびと)が来るぞ」
怖くなった祖母は後も見ずに飛んで帰った。
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小話三題、いかがだったでしょうか?
ご要望が多いようであれば第二弾、第三弾…と続けていこうと思います。
ご感想をぜひ、お聞かせください。
チョコ太郎より
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