【守る米づくり】参加者大募集! 玄海町みんなの地域商社 橘髙ちひろさんに聞きました。

 佐賀県玄海町にある浜野浦の棚田をご存知ですか? 急な斜面に切り拓いた大小283枚の田んぼが、海に向かって連なっている景色は、声をあげたくなるほど美しく、大迫力です。 今回はその浜野浦の棚田を訪ね、「守る米づくり」の活動の中心人物のひとり、橘髙ちひろさんにお話しをうかがいました。

―橘髙さん、今日はよろしくお願いします! 最初に橘髙さんのプロフィールを教えてください。


 玄海町役場の地域おこし協力隊のひとりで、今は「一般社団法人 玄海町みんなの地域商社」に出向中です。地域商社のプランナーとして多様な方にご協力いただきながら、事業のプランニングを行っています。

プライベートでも棚田に田んぼを借りている橘髙さん。棚田で農作業にいそしんだ後に、夫のJupさんと記念撮影。いい笑顔!

玄海町みんなの地域商社って、どんなことをやる会社なのですか?
 玄海町みんなの地域商社とは玄海町がつくった会社で、ふるさと納税の事務委託を受けながら、観光事業や玄海町内の事業者さんを支援するのが主なミッションです。まちの特産品を町外に広めるのも大切な仕事ですね。
 一企業ではあるのですが、たとえば「玄海町の農家の誰それさんが天神のマルシェイベントに出店するから手伝いに行こう!」なんて、フットワーク軽く動くこともできます。販売のノウハウがない生産者さんを地域商社でサポートするのも仕事なんです。
 そんな素敵なことをお手伝いできる会社って、あんまりないでしょう? 地域から頼られて、それに応えられる地域商社が私はとても好きですし、そんな商社をつくってしまう玄海町もすごいなあって、感動しながら働いているんですよ。

取材時、浜野浦の棚田を案内してくれた橘髙さんと玄海町の地域おこし協力隊の武藤 敬哉さん。棚田が美しい!

「守る米づくり」も玄海町みんなの地域商社の事業なのですか?
 そうですね。地域商社主催の事業ではありますが、地域おこし協力隊の“棚田クリエイター”武藤 敬哉くんが手伝ってくれている…というか、がっつりメンバーとして支えてくれています。

「守る米づくり」は浜野浦の棚田の守り手を「玄海町の外の人にも手を借りよう!」という取り組みだとお聞きしています。具体的にはどんな活動をしているんですか?
 浜野浦の棚田にある田んぼ6枚を「守る米づくり」の会員みんなで、農作業をしながら守っています。会員には1シーズン10回の作業に参加する「守りびと」がいます。そして”応援したいけど作業に参加するのは難しい”という声を受け、今年、活動費を応援いただく「かかし会員」のプランを追加しました。
 「守りびと」たちは、4月から8月までの稲作のシーズンに、月1〜2回ずつ棚田で作業をします。浜野浦の棚田は、いつ来てもとにかく景色が素晴らしい。みなさん「こんな景色のなかで農業体験できるなんて幸せ!」と喜んでくれています。いつもここにきている事務局の私たちもそう思ってしまうほどです。

「かかし会員」って素敵なネーミングですね! ちなみには橘髙さんがいちばん好きな棚田の風景は、何月くらいのものでしょう?
 私は苗が少し成長した頃、6月下旬から7月に入るくらいかなあ。その時期の棚田が大好きです。梅雨でもあり夏も感じられて、風が吹いたらまだ柔らかい苗がふわぁ〜っとなびくんですよ。風が走るのが目に見えるっていうのかな。それを眺めるのが大好きです。
 また、4月の中下旬あたり、水を張った田んぼの水面に、夕陽が映る時期があります。この風景も幻想的でとても人気。遠くから撮影に来る人がいるほどです。5月の田植え後は苗の成長が楽しみだし、夏の終わりにはもう稲穂が黄金色に実った田んぼが眺められます。
 つまり、シーズン中はずっと様々な表情の棚田を楽しめるんですよ。

橘髙さんが好きな緑の棚田。稲の上を風が走る様子をこの目で見てみたい!

それは気持ちよさそう! 農作業の疲れも吹き飛びそうです。ただ、毎回田んぼでどろんこになりますよね? 慣れない人にはハードルが高くないですか?
 とにかく気軽に参加してほしいので、その対策もばっちりです。田んぼで作業をする時に必要な長靴や作業着はすべて、私たち事務局で準備しています。作業着の洗濯も事務局でやってしまうのでご心配なく。そのための洗濯機も新調しましたから(笑)。
 「守りびと」のみなさんは手ぶらで来ていただければOK! 田んぼの後は、玄海町のなかにある素敵なスポットをのんびり楽しんでほしいです。汗を流してさっぱりしたいときは「玄海海上温泉パレア(リンク:https://www.genkai-parea.com)」もありますよ。

写真は「守る米づくり」で田起こしをする様子。まだ田んぼに水を張る前です。

田植えでどろんこになっても気にしない!作業着のお洗濯は「守る米づくり」の事務局がしてくれます。

いたれり、つくせりですね。ちなみに玄海町のなかを巡るならどこがいいでしょうか。橘髙さんオススメのスポットを教えてください。
 玄海町は名も無い景色がすごくいいんです。特に棚田に向かって右手にある集落から、海の方に降りていく道が好きですね。坂を歩いて下ると、しだいに視線のなかへ青い海が広がってきて。すごく気持ちいい。
 また展望台がないからあまり知られていないのですが、値賀川内(ちかがわち)、座川内(そそろがわち)の棚田もあり、田舎の原風景といった感じでいいですよ。
 港がある仮屋の方に行くと、家々がぎゅっと密集している路地があり、とてもいい雰囲気。気分がほっこりします。

橘髙さんが好きな海が見える道。棚田に向かって右手にある路地を下ります。

これは気持ちよさそうな道! 玄海町の人の暮らしが見えてきそうですね。
 そうなんです。地域の人々を守り、守られている、大歳神社(おおとしじんじゃ)にもぜひ足を運んでほしいですね。
 神社の参道がとても長く雰囲気があって、春には桜が咲きます。桜は老木で、地域のみなさんが神社に集まると「この木は〇〇さんが何歳の時に植えたんよね〜」といったお話しも聞こえてきます。今も年に4回、小さなお祭りが開催されていて、地域のみなさんが集まっていますよ。

長くて雰囲気のある大歳神社の参道にて。こちらも浜野浦の集落にあり、素敵なお散歩コースになっています。

橘髙さんは玄海町に暮らして、約4年がたったとお聞きしています。地域に根づいた文化や、玄海町の方との関わりに、すっかり愛着を持っていらっしゃるようですね。
 「私って、小さい頃からここに住んでいたんだっけ?」と錯覚するくらい、浜野浦のみなさんに可愛がってもらっています。そんなみなさんが守っている浜野浦の棚田を一緒に守っていきたいという気持ちも大きいんですよね。
 傾斜面に小さな田が連なる棚田でのお米づくりは、危険も伴えば、収穫量も少ない。そんな棚田を守り続けるのは、江戸時代から代々受け継いできたものを守る気持ちと、その棚田を遠方から見に来てくださる方へのおもてなしの気持ちだと思います。

古くからの石垣は低く、石も小さなものを使っています。棚田をじっくり観察するとまた違ったおもしろみもあります。

その想いが「守る米づくり」という活動名につながったのですね。 
 そうですね。「この棚田をみんなで守り、次の世代へバトンをつなげたら」の思いは、事務局のメンバーみんなが抱いています。
 また地元の方たちも「守る米づくり」をしっかり見守ってくれていますし、あらためて「棚田を守ろう」の思いをより強くした方もいらっしゃって。「棚田を観に来てくださる方がいるから」と、これまで休耕田になっていた田んぼをコツコツと耕し、再生してくださっている方もいるんです。すごい労力がかかるのに、その熱意に心打たれます。

「守る米づくり」の活動で、玄海町の外の人、中の人、そして棚田に、少しずつ変化が訪れているようなイメージでしょうか?
 そうですね。この活動がこれからもっと様々な方に知っていただけるとうれしいです。
 「守る米づくり」の活動は今年で3年目を迎えます。まだほんとうに始まったばかりのヨチヨチ歩きではありますが、10年、20年と継続していけるようになりたいです。これからも浜野浦のみなさんからアドバイスをいただきながら、続けていきますね!ぜひご参加ください。

橘髙さん、今日はありがとうございました!
 「守る米づくり」については下記に詳しく記載しています。興味のあるみなさん、ファンファン福岡読者のあなたも「守りびと」になってみませんか?

【守る米づくり参加者募集】
玄海町の人や風景、食に触れながら、浜野浦の棚田の休耕田約10aで計10回の米づくりの農体験をして、一緒に棚田を守りましょう。作業着や長靴など必要なものは事務局で準備するため、手ぶらでご参加いただけます。農業未経験者も大歓迎!

【参加プラン】
守りびと 20,000円/人
・お米づくり(計10回)
・作業着・水田用長靴
・玄海町内温泉入浴券
・収穫米(10kg程度)
※企業やグループ向けプランもあり!お問い合わせください。

かかし会員 5,000円/口
・守りびとの活動や田んぼの様子をメール等でお届けさせていただきます。

【登田日】
◆4月7日(日)AM/田起こし
◆4月12日(金)PM ・ 4/13(土)AM/荒代搔き
◆5月6日(月・祝)終日/田植え
◆6月中(2回程度・日程未定)/草刈り
◆7月中(2回程度・日程未定)/草刈り
◆8月24日(土)終日/稲刈り
◆9月7日(土)昼下がり/ちいさな収穫祭
※全日程、登田できない場合も参加可能です。
※天候や生育の状況で、日程が変更になる場合があります。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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