續・祖母が語った不思議な話:その漆拾弐(72)「小話三題 その弐」

 明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」終了時に多くの方からいただいた「続きが読みたい」の声にお応えした第2シリーズです。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

 祖母はとても多くの話をしてくれましたが、その中には極々短く前後が欠けた投げっぱなしのものもたくさんあります。また筆者が体験した理由が分からない不思議な出来事もたくさんあります。今回はその中から三話を紹介します。

 【大楠】
 村の外れにある神社の大楠は夜になると時々場所を変える。
 ある人が宴会の帰りに近道しようと神社の中を抜けていると、参道の真ん中に立ちふさがって通さない。
 頭にきて大楠を蹴ると枝に掴まれ跳ね上げられた。
 帰って来ないのを心配した家人が探しに来たら「ここだここだ」と声がする。
 駆け付けてみると降りることも出来ず鳥居の上に座っていた。
 
 祖母が子どもの頃に母親から聞いた話である。

………………………………………………

 【チロ】
 子どもの頃から飼っていたチロは不思議なところのある犬だった。
 両親が車で出かけたとき、帰って来る前になるとある方角(その時々で方角は変わる)を向いて吠える。
 どんなにグッスリ眠っていても必ず起きて吠える。
 するとその方角から10分で車が帰って来る。
 距離にして6〜7km先に特定の車が来ているのがなぜ分かったのだろう。
 一度も外れたことはなかった。

………………………………………………

 【雨音】
 幼稚園に入った頃。
 母親が出産の為に入院したので、隣町に住む伯母が家の手伝いに来てくれた。
 それから十日ほどして無事出産を終えた母が帰って来た。
 役目を終えた伯母が帰ることになったが、なんだか寂しかったので伯母の家に泊まりに着いて行った。
 伯母の家は古く大きかった。
 中でも広い座敷に大人ぶって一人で寝ると言った。
 伯母は「怖くなったらおばさんのとこにおいで」と笑った。
 柱時計がコチコチと時を刻む音を聞いているうちに眠りの闇に落ちていた。

 「?」
 夜中にパラパラという音で目が覚めた。
 雨が降っている…
 起き上がると外は明るい。 
 庭を見るとカラッカラで空には月がかかっている。
 なんだか気味が悪くなって伯母が寝ている布団に潜り込んだ。

 それから何度か同じ座敷に泊まったが、やはり夜中に雨音がする。
 いつかその謎を解明したいと思っているうちに、その家は改築されてしまった。
 新しくなってから一度泊まってみたが、あの音はもう聞こえなかった。

………………………………………………

 ご要望をいただきましたので小話三題の第二弾を書きました。
 こちらも今後続けていこうと思いますので、よろしくご愛読くださいね。

チョコ太郎より

 いつもお読みいただき、ありがとうございます。皆さんの感想やコメントにとても励まされています!「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」といったご希望や、ひと言感想でも良いのでお聞かせいただけると連載の参考になりますので、ぜひ下記フォームにお寄せください。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

子ども文化や懐かしいものが大好き。いつも面白いものを探しています!

目次