私が勤めていた会社に新入社員としてやって来たのは、真面目そうな男の子。いい子に見えましたが… 割ったガラスを何度も隠す、とんでもない新入社員でした。彼の危険な行動で、社長が大怪我することになったのです。
不器用だけど真面目そうな男の子が入社
独身時代に働いていたのは薬品やガラス器具を使う職場で、常に緊張感がありました。
ある年、そんな職場に真面目そうな男の子が入社したのです。研修中に彼が薬品をはかり間違えた、器具を壊したという話を先輩から聞き、不器用そうだと感じましたが… 研修を見学すると真剣に取り組んでいることが伝わってきます。
私以外もそう思っていたようで、多くの従業員が不器用でも一生懸命な彼を好ましく思っていました。
割ったガラスをコッソリ処理?!
研修が終わり、彼は先輩のチェックを受けながら作業することに。ひとりでの作業時間が多くなり、今まで以上に薬品や器具の取り扱いに気をつけなければなりません。最初は慎重に作業していた新入社員ですが、2週間ほどで気が緩んでしまったようです。ガラス器具を割る回数が急増し、先輩に報告する姿を見かけるようになりました。
私は別の部屋で作業をしていたのですが、ある日ソワソワした様子の彼がやって来て、棚に器具を収納し始めました。彼の作業部屋にも収納場所があるので「なんでここに?」と不思議に思い、彼が去った後に棚を確認すると… 割れた器具が隠されていたのです。
危ないと思い先輩に相談した上で社長に報告しましたが、なぜか注意されず、その後も彼は何度も割れたガラスを隠しに来ました。
ついに社長が大怪我!
作業に使用する道具を破損した場合は、社長に報告した後に作業場に設置しているシートに破損内容を書くことが決まっています。社長に報告したり、破損個数を同僚に見られたりするのが嫌なのでしょうが… 割れたガラスを隠されると、何も知らず触った人が怪我をしてもおかしくありません。
注意しない社長に違和感を覚えた先輩が部署ミーティングを行い、誰とは指摘せず
「割れた器具が収納されていることがあるので、破損したら報告してください」と話すことに。
ミーティング以降、割れた器具を棚に収納されることはなくなりました。ですが、破損報告も0のままです。「割らなくなったのかな?」と思っていたのも束の間。数日後に、新入社員が隠したガラス片で社長が大怪我をしたのです。
社長は気まぐれでゴミ回収をすることがあります。本来なら終業前に従業員が回収しますが、暇なときに社長が勝手に各部屋のゴミ箱を回収し、収集所に運ぶことが。新入社員はそんな社長の癖を知らず、ゴミ箱の底にガラス片を隠していたのです。
引っかかったゴミを取り出そうとして社長がゴミ箱に手を入れたところ、底にあったガラス片で手をザックリ切ることに。病院で傷口を縫うことになった社長は新入社員の男の子を社長室に呼び出し、やっときつく叱ったのでした。
自主退職した新入社員
社長に怒られた翌日、新入社員の男の子は会社を休みました。次の日も、その次の日も出社せず… 1週間後には彼が自主退職をしたという話を聞くことに。正直、ホッとする気持ちが大きかったです。
割れたガラスが隠されているかもしれないとヒヤヒヤしながら器具を取り出していたので、彼の退職後は安心して働けるように。それ以降、割れたガラスの取り扱いに関するルールも厳しくなり、同じようなトラブルが起こることはありませんでした。
(ファンファン福岡公式ライター/水素)