幼少期、私は古い家に住んでいました。平日は夜まで祖母宅で過ごし、仕事が終わった母と一緒に自宅へ帰っていたのですが… ある日、恐ろしい経験をすることに。誰もいないはずなのに、家の中からしか閉められない内鍵がかかっていたのです…。
古い家に住んでいた私
私は小学校入学から高校卒業まで、母と兄と3人で古い家に住んでいました。雨漏りする天井に隙間風が入る窓。虫が出るのは日常茶飯事、ときどきネズミまで出てくるような家でした。全体的に薄暗くてオバケが出そうな家なので、住み始めたときから怖かったです。
母は夜に仕事をしていましたが、私と兄は車で5分ほどの距離にある祖母宅で過ごしており、怖い家で留守番をする必要はありませんでした。22時頃に母の仕事が終わり、毎日夜遅くに母の車で自宅に帰っていたのです。
誰もいないのに内鍵がかかっている?!
ある日、母の仕事が長引いて23時過ぎの帰宅となりました。いつもより遅い時間だったので「はやく帰って寝たい」と思いながら、うとうとしていたことをよく覚えています。
「ほら、着いたよ」という母の声を聞き、眠気と闘いながらランドセルを背負って車から降りました。
先に降りた兄が玄関の鍵を開けていたのですが、なかなか開きません。
「何回やっても開かないよ?」と不思議そうな顔をする兄から鍵を受け取った母も試してみたのですが… なぜか開きません。引き戸の玄関には真ん中にメインの鍵、両端に室内からしか施錠できない内鍵がついています。本来、真ん中の鍵を開ければ玄関が開くはずなのですが、その日はびくともしなかったのです。
男手を集めて突入!
「まだ?」と思っていると、顔をこわばらせた母に小声で
「車に乗って」と言われて眠気が吹っ飛びました。状況が飲み込めませんでしたが、ただごとではないと感じ、急いで車に戻ったのです。
車の鍵を閉めた母は自分の兄、つまり私の伯父に電話をかけ
「家の中に誰かいるかもしれない」と伝えます。やり取りを聞いて、ようやく何が起こっているのか理解できました。話を聞いた伯父はすぐ駆けつけてくれることに。5分ほどで到着した伯父は近所の家に足を運び、顔見知りの男性を3人連れて来ました。
伯父が
「女子どもは危ないから車にいなさい」と言い、男性4人が家の中に突入することに。裏口にも鍵はありますが、簡易的な内鍵だったので、棒を使えば裏口の隙間から内鍵を外すことができたようです。玄関の明かりがつき、男性陣が突入したのだとわかりました。
10分ほどして男性陣が戻ってきたのですが… なんとも言えない表情です。伯父がゆっくり口を開き
「誰もいないのに、内鍵はしっかりかかっていた」と言いました。私たちも部屋を確認したのですが、どの部屋も荒らされていませんし、なくなっている物もありません。その日は必要なものだけ持ち、祖母宅に泊まることにしました。
内鍵がかかった理由は謎のまま
翌日、鍵屋に見てもらいましたが、内鍵は故障しておらず「勝手に閉まることはない」とのこと。指で押し下げるタイプの鍵だから振動で閉まったのかと戸を激しく揺らしてみましたが… 勝手に閉まることはありませんでした。
怖くても金銭的な理由で引っ越しできず、家を出られたのは大学進学時でした。1年後には兄と母も別の家に引っ越し。結局、内鍵がかかった理由は今でも謎のままです。その家の前を通って帰省することになるのですが、私たちが退去したときのまま建物が残されており、通るたびに背筋が寒くなります。
(ファンファン福岡公式ライター/水素)