福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。68回目は「本灯社(ほんとうしゃ)」(福岡市中央区)の見月香織さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の6冊を紹介します。
福岡出身の歌人が詠む“胸のうち”
「心は胸のふくらみの中」菊竹胡乃美 著
―こんにちは! 今回見月さんが紹介されるのはどんな本でしょうか。
福岡県出身の歌人・菊竹胡乃美さんの「心は胸のふくらみの中」(2023年4月書肆侃侃房発行、1,650円、税込み)です。“人にわざわざ言わないけれど、こんな風に思ったことがあるな”という気持ちが短歌で丁寧に表現されています。女性の体や心についての歌もたくさん収録されています。
―実際に読んでみた感想は?
菊竹さんの短歌では、 人間の生々しい感情や傷、 痛み、欲、怒りなども表現されていて、そこにひかれます。生活をしていて傷ついたり、怒ったりすることがあると思いますが、蓋(ふた)をしていた本音と重なる歌を読んで、自分が感じていることを大切にするきっかけになりました。
また、ネガティブな言葉をユーモラスに、明るく表現している歌もあります。社会に対する違和感を自分の言葉の力で改めていくところが面白く、かっこいいなと思いました。
―中でも気に入っている歌は?
好きな歌はたくさんありますが、1つ挙げるとしたら「素敵なことと思う友達の妊娠は知らない国の夜明けみたいな」がお気に入りです。きれいなことばかりじゃない世界だからこそ、たまに訪れる静かできれいな気持ちを捉えた歌に心を動かされます。
―どんな人にオススメしたいですか?
今自分が感じていることに目を向けたい人へオススメしたいです。詠まれている歌のその1行、その言葉の並びに1つ世界が詰まっているので、気になった歌を眺めてみることで、自分の気持ちと向き合えると思います。
―「本灯社」のオープンは?
2023年6月に生活雑貨店とカフェを営む「ごはんとおやつ、雑貨の店 くらすこと」がリニューアルし、その一角にオープンしました。約3,500冊の書籍を取り扱っています。
―店名の由来は?
「1冊の本が宿す灯りを、読者の手元まで絶やさずに届けたい」「ひとつひとつ色もかたちも異なる本の灯りがひしめくような本屋でありたい」という思いを込めて名付けました。
運営元である「くらすこと」では「わたし自身のものさしをみつける」をテーマに活動しています。外から押し付けられる“ものさし”ではなく、自分の“ものさし”を持っていると生きやすくなるのではないでしょうか。当店でも、それぞれの人が自分の“ものさし”を形作っていく中で、ものさし作りの助けとなるような本を見つけてもらえたらうれしいです。
―どんな本を取り扱っていますか?
本棚がテーマごとに分かれています。テーマは「こころ・からだ」「自然・目に見えない世界」「生き方・考え方」「子ども・家族」「暮らし」「文学・言葉」「絵本」。選書はスタッフで行い、一生活者である私たちの興味、関心、悩みなどの延長線上にある本を置いています。なので、生活に役立つ本が多いですね。ちなみに本棚は“本が好きな人の書斎”をイメージして設計されています。
―ありがとうございました! 人間味あふれる短歌集に心ひかれます。続けて話題の6冊を紹介します。
「経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて」【Gakken】
山崎元 著/1,760円(税込み)
大反響8万部突破。経済評論家・山崎元さんが最後に書き下ろした、働き方、稼ぎ方、そして幸福について。これからの時代をお金の心配をせず、自分らしく生き抜くために伝えたかった、大切なことが詰まっています。大学生、就活生、社会人、子を持つ親…すべての人の人生に寄り添い、役立つ一冊です。
「たるみ改善!『肌弾力』を手に入れる本」【青春出版社】
中澤日香里(著)、中島由美(監修)/1,650円(税込み)
40代からの「たるまない」顔と体のつくり方とは? そのカギを握るのは、肌のハリに欠かせない美容成分「エラスチン」と本書。1日5分のエラスチンを守る生活習慣によって、たるまない体(肌のハリ・バストアップ・ヒップアップ)を手に入れ、女性の老化の悩み(更年期症状・冷え・むくみ)を解消へ導く一冊です。
「ゲームの名は誘拐」【光文社】
東野圭吾 著/649円(税込み)
クライアントの葛城(かつらぎ)にプロジェクトを潰された敏腕広告プランナー・佐久間。葛城邸に出向いた彼は、家出してきた葛城の娘と出会い、「ゲームの達人」を自称する葛城にプライドをかけた勝負“娘を人質にした狂言誘拐”に挑むのだが―。亀梨和也さんを主演に迎えたドラマ化で話題沸騰中のノンストップ・ミステリー!
「増補版 九十八歳。戦いやまず日は暮れず〔文庫〕」【小学館】
佐藤愛子 著/803円(税込み)
国民的エッセイがまさかの映画化!「九十歳。何がめでたい」がバカ売れして怒濤狂乱の日々を送るうちについに昏倒!? それでも病院に行かない理由から再びの断筆宣言まで、現在100歳の愛子先生“暴れ猪人生”の集大成です。林真理子さん、綿矢りささんとの対談、秘蔵写真満載の100年アルバム、群ようこさんの寄稿など100頁超が新たに収録されています。
「鎮魂」【双葉社】
染井為人 著/957円(税込み)
世間を騒がせている半グレ集団のメンバーが殺され、警察は暴力団や半グレ同士の抗争と見て捜査を始めるが、それを嘲笑うかのように次々にメンバーが殺害されていきます。疑心暗鬼になっていくメンバーたち。そして、犯人を持ち上げるSNSの住民。意外すぎる犯人と絡まり合う人間関係が驚愕を誘う、社会派サスペンスの傑作です。
「自分で地域で 手づくり防災術」【農文協】
農文協編/2,200円(税込み)
手づくり防災術とは、国や公共のインフラ(公助)に頼りすぎず、自給の力(自助)や地域の力(共助)で自然災害に備える工夫のこと。オフグリッドソーラーやロケットコンロによる小さいエネルギー自給、早期避難のための手づくり防災マップなど、土砂災害や豪雨災害、地震から地域を守る40のアイデアが収録されています。
いかがでしたか? お気に入りの場所でのんびりと読書を楽しんでは。次回もお楽しみに!