大好きだった祖父の葬儀。悲しい気持ちの中、葬儀を忘れてしまうほど唖然とする出来事が! 食べ物の恨みは怖いと言いますが、今でも忘れられないエピソードをお話したいと思います。
亡くなった祖父
10年程前、東北に住んでいた、父方の祖父が亡くなりました。
知らせを聞いてすぐに向かおうとしましたが、遠いことと子どもたちがまだ小さいことを理由に、葬儀の日に合わせて後から来るように父に言われました。
葬儀までの数日間、祖父との思い出がよぎります。東北の訛りを聞き取れず、全てに
「うん…!」と答えていた小学生の私を、目を細めて笑っていた祖父。遊びに行くと必ず
「アイスを買いなさい」と一万円をくれる祖父に、
「そんなに食べきれない…」と戸惑っていた幼い頃を思い出し、思わず笑みがこぼれます。
祖父は99歳の大往生。寂しい気持ちはありましたが、元気に長生きしてくれたこと、ひ孫を二人見せることができたことはよかったと感じていました。
美味しそうな高級御膳
数日後、旦那と子どもたちを連れて新幹線に乗り、祖父の家へ。よくわからずはしゃぐ息子たちをなだめながら、翌日の告別式まで過ごしました。翌日、式は順調に進み、火葬を待っている間の食事の時間のこと。
控室の和室に入ると、長テーブルに並べられているのは、旅館かと思うほど豪華な食事!! お刺身に天ぷら、自分で火をつけるお鍋は霜降り和牛のすき焼き。長旅と、子どもたちが騒がないか気を張って疲れきっていた私の目が輝きます!
美味しそう! ウキウキしながら、一番端の席に子どもたちと一緒に座ります。その隣に、旦那も座りました。すると…
父の姉である伯母が、私を呼びました。
「なっちゃんは、こっちだよ」
「あ! 席、決まってたんですね」ついていくと、和室の隅っこに、古びた長テーブルが。子どもたちが騒がないよう、気を遣ってくれたのかな?
「女はこっち。あっちは男の席だ」そう言いながら、伯母が私の目の前に何かを置きました。これってもしかして…? おそるおそるふたを開けると、お弁当でした。
えっ! 目が点になる私に、「ごめんね」とでも言いたげに、気の毒そうな表情を見せる伯母。
お弁当はいわゆる“のり弁”で、中身は魚のフライやコロッケが。付け合わせに、高級御膳の小鉢だった煮物が申し訳程度に入っていました。男性は高級御膳で、私たち女性はお弁当!? しかもお弁当は冷え切っています。
食事の格差に思わず唖然。普段は大好きなのり弁ですが、なんで目の前に高級御膳があるのに食べられないの!? とものすごく不満でした。
男女の差
思い切って伯母に聞きました。
「食事が違うのは男女差ですか?」
「男か女かだねぇ。昔っからだなぁ」困った表情で言う伯母の言葉を聞いて、がっかりした気持ちに。目の前でお預けをくらい、食べられない理由が“女”だからなんて信じられない!
男性席では、父も、父の兄である伯父も、親戚もみんな、女性席を見ることなくワイワイ料理とお酒を楽しんでいます。そして、私はあることに気づきます。忙しく動き、雑談の相手をしながら男性にお酌をしているのは、出席していた親戚の女性達だったのです。
しばらくすると火葬が終わり、葬儀の続きが始まりましたが、お酌をしていた女性たちももちろん参列。お昼ご飯を食べた様子はありません。祖父には申し訳ないですが、モヤモヤして葬儀どころではなくなってしまいました。
田舎に残っていた男尊女卑
普段優しい父や伯父も、女性側を一切気にしないで、お酌をさせながらふんぞり返っているのを見て、ドン引き。思えば喪主は伯父なので、昔からの風習とはいえ、男女差をつけて料理を注文したのも伯父です。父や伯父に対して、見る目が変わってしまいました。
ちなみに、可哀想だったのは旦那。
“男”というだけで、全く知らない血の繋がっていない親戚に囲まれ、苦手なお酒を無理矢理飲まされながら雑談を強いられ、せっかくの高級御膳も味どころではなかったようでした…。
田舎は男尊女卑があるという話は聞いたことがありましたが、葬儀のときにも料理に格差があり、女性がお酌をして男性をもてなすところを間近で見て、残念な風習だなと感じた出来事でした。
私も高級御膳食べたかったです!
(ファンファン福岡公式ライター/さとう なつこ)