「ご近所からおすそ分けをいただく」というのは、私の家の近所では特に珍しくもなく日常的な出来事でした。しかし、一度野菜をいただいたことがキッカケで、まさかこんなご近所トラブルに発展するとは、夢にも思いませんでした…
野菜をおすそ分けしてくれた近所のおばあさん
ある日、息子の自転車の練習で裏手の住宅地に出かけた私。そこで70代ぐらいのおばあさんと遭遇しました。
「自転車の練習?エライねぇ!どこの子?」
と声をかけてくださったので、私が近所に住んでいることを伝えました。するとおばあさんは
「野菜を育てているんだけど、私一人じゃ食べきれないから、持って帰って」
と、たくさんの野菜をくれたのです。「いただいても良いんですか?」と尋ねると、「腐らせるのももったいないから」とのこと。お言葉に甘えて持ち帰ったのですが、残念ながら野菜の大半が傷んでいたのです。仕方なく、食べられない部分を捨てることにしました。
知らないうちに悪口を言われていた私
数日後、近所を歩いているとまたおばあさんに「野菜どう?」と声をかけられました。傷んだ野菜が頭をよぎったこともあり、あまり乗り気ではなかったものの断りきれずもらってしまいました。ちょうど買い物帰りで焼きたてのパンを持っていた私は、その場でおばあさんにお礼としてパンを渡したのです。おばあさんは
「お礼なんていいのに~」
と言いつつ、喜んで受け取ってくれました。その後もたまに会っては野菜をいただいたり、何か手元にある時はお礼を渡したりが数回ありました。いただいた野菜はやはり傷んだものが含まれており、廃棄せざるを得ないものも多かったのですが…
しばらくして、自治会の集まりに参加した時、ご近所の奥さんが、人目を気にするようにコソッと私に「裏のおばあさんから野菜もらってる?」と聞いてきたのです。「うん」と答えると、「おばあさん、あなたのこと『野菜をあげてもお礼がない』って町内で言ってるらしいよ」と!
思わず「え!?お礼は何回か渡してるよ?」と言うと、
「あの人、嘘つきで有名で揉め事も起こしてるから、あまり関わらない方がいいよ」
と。しかも、「生ゴミもチェックしてるらしいから気をつけて」と言うのです。
そのとき、私はハッと怖くなりました。もしかすると、私が傷んだ野菜を生ゴミに捨てているのをおばあさんが見てしまい、それが悪口へと発展したのかもしれません…。
強い気持ちで距離を置くことに
これ以上のご近所トラブルを避けるため、私は菓子折りを持っておばあさんの家を訪問しました。ご本人が出てきたので私は「実家からもたくさんの野菜をもらうようになったので、もう野菜は大丈夫です。これまでありがとうございました」とお伝えしました。
すると「えぇ?うちの野菜も余ると腐っちゃうんだけど」とおばあさん。心の中で「腐った野菜ばかりもらってたけど…」と思いつつ、グッとこらえて丁重にお断りしました。おばあさんは菓子折りを奪うように受け取り、しかめ面のまま玄関のドアをピシャッ!と閉めたのです。
その後は野菜をいただくことはありませんが、挨拶してもこちらを睨むように無視をされるので「やっぱり縁を切って正解な人だった」という印象です。私の中では、知らない人から物をもらうことがどれほどリスクを伴うかを痛感した出来事でした。これからは、善意を持っても相手の背景をよく見極めて行動しようと心に誓いました。
(ファンファン福岡公式ライター/餅キナコ)