よく耳にする、初孫誕生で大張り切りする祖父母。20年前、息子が誕生した時の実母がまさにそうでした。思い返せば、妊娠中から既に予兆があり、退院後里帰りした時には完全に「初孫ハイ状態」。母は元々子どもが大好き。そんな背景もあり、初孫にあたる息子の育児に対し、並々ならぬ理想を持っていました。
布おむつと母乳育児を崇拝?
息子が生まれる前から、母は
「おむつが早く取れるから!」と、大量の布おむつを準備していました。もちろん母の善意であることも理解していましたが、内心は「布おむつは洗濯大変だし、紙おむつが良いんだけどな…」と思っていました。
さらに、母は母乳育児に強いこだわりを持っていました。息子が泣くと息子を抱っこしながら
「お腹ちゅいたよ〜おっぱいが欲しいよ〜」とまるで腹話術の様に声色を変えて話すのです。その度に私はイライラし、「母乳じゃなきゃいけない!」というプレッシャーに押しつぶされそうになっていました。
出産直後で心身ともに疲れている中、母の「良かれと思って」という免罪符に繰り広げられる過干渉が、私にとっては大きなストレスでした。
中古のベビーカーを見つけてきた母
当時は私たち夫婦はアパートに住んでいた為、ベビーカーもコンパクトなものを購入する予定でした。しかし母はネットワークを駆使して自分の友人からお下がりを譲り受け、
「節約になるわね~」と嬉しそうに言ってきました。
節約も大切ですが、そのベビーカーはあまりにも古く、周りの赤ちゃんたちのベビーカーと比べると、異様な大きさです。
ベビーカーに息子を乗せ、一緒に1カ月検診に行った主人が、周囲を見渡した後
「なんかうちのベビーカー、超合金ロボットに変身するの? ってぐらいの圧だよね…」と苦笑していたのを覚えています。私自身も、見た目や使い勝手に納得できないベビーカーにストレスを感じ、早々に自分好みのコンパクトなベビーカーを購入しました。
息子に似合わないベビー服
母はベビー服も大量に用意してくれました。
息子は生まれた時から髪の毛がフサフサで、凛々しい眉毛のキリッとした顔立ち。しかし、母が
「似合うと思って!」と購入してきた洋服は全て、可愛らしいパステル調のくまやウサギが刺繍されたメルヘンテイスト。私は息子に合うシンプルで元気な色合いの服を着せたかったのですが、母の好みの押しつけに我慢する日々が続きました。
里帰り出産し育児が始まってからというもの、睡眠不足が続き、私のストレスはどんどん溜まっていきました。
そしてある日、ウサギの刺繍されたパステルイエローのベビー服を着た凛々しい眉毛の息子を見ていると、突然涙がポロポロ溢れ、気付くと声をあげて泣いていました。
母の価値観を押し付けられることに耐えられなくなり、ついに不満が爆発。泣きながら大声で母に
「お母さんの赤ちゃんじゃない! ミルクや紙おむつの何がダメなの? 私は失敗しながらも自分で考えたり試したりして、この子に一番良い方法を見つけたいの!」と訴えたのです。
家族でも適度な距離感が大事
結局、里帰りの予定を大幅に短縮し、早々に自分達のアパートへ戻ることに。私にとっても、息子にとっても、そして母にとっても適度な距離感が大切だと痛感した出来事でした。
初孫ハイになった母とのエピソードを振り返ると、20年経った今でもいろいろな感情が蘇ってきます。
母の愛情はもちろん感じていたのですが、当時の私は母親になったばかりで、心の余裕がありませんでした。でも、目の前には自分がいないと生きていけない生まれたばかりの息子がいる。だからこそ、育児に関して試行錯誤しながらも、自分で考えて、自分で選択する「自由」が欲しかったのです。
みなさんも、もし実家に帰って育児をしているのであれば、適度な距離感を持つことを心がけてくださいね。感謝の気持ちを持ちながらも、自分の育児スタイルを大切にすることが大事です。
親の愛情はありがたいものですが、過剰な干渉は時にプレッシャーとなることもあります。そんな時には、感謝の気持ちと一緒に、自分の思いも伝えてみてくださいね。
(ファンファン福岡公式ライター/さくらえ)