笑えない状況なのに、思わず笑ってしまうエピソードってありませんか? 今回は、合宿帰りに交通事故に巻き込まれた時の、全身が痛いにも関わらず、思わず笑ってしまった信じられないエピソードをお話しします。
バレーボールサークルの初めての夏合宿
これは私が社会人バレーボールサークルに参加していた時の話です。
夏のビーチバレーボール大会に出場するため、サークルメンバーと合宿に行くことになりました。初めての合宿参加に胸を躍らせながら、15人ほどのメンバーと車3台に分乗し、目的地の貸し別荘へ向かいました。みんなで買い出しに行き、カレーライスを作ったり、夜には花火大会を楽しんだり。まるで学生時代に戻ったかのような楽しい時間を過ごしました。
翌日のビーチバレーボール大会では、全チーム予選で敗退。結果は残念でしたが、楽しい思い出がたくさんできて、サークルの仲間たちとの絆も深まりました。合宿に参加して本当に良かったなと思っていた、その帰り道に事件が起こりました。
突如襲った衝撃! 追突事故で窓ガラスが大破
帰りの車で私は3列シートの1番後ろに座っていました。突然、運転手が
「危ない!」と叫んだ瞬間、車の後部に激しい衝撃が走り、窓ガラスが「パリンッ」と音を立てて大破! 何が起こったのか理解できず、「死ぬのかも…」と一瞬頭をよぎりました。
衝撃が収まって周りを確認すると、どうやら後ろから車に追突されたようでした。ふいの出来事だったため、むち打ち状態になり首や背中に激しい痛みが。私たちの車には運転手を含めて5人が乗っていましたが、他の4人は幸いにも無事で、強いむち打ち症状が出たのは私1人だけでした。
追突してきたのは20代の若い男性が運転する軽自動車で、どうやら脇見運転をしていたようです。助手席には友人男性が同乗していたのですが、彼らに怪我はありませんでした。私たちの車の運転手であるA君がすぐに警察に連絡し、救急車が来るのを待ちます。先に帰っていた別の車に乗っていたメンバーには、事情を説明し先に帰ってもらいました。
鳴り止まないサイレン
時間が経つにつれ、私の首の痛みはどんどんひどくなり、車の中で
「痛い、痛すぎる…」と苦しんでいると、他のメンバーが
「もうすぐ救急車が来るから頑張って!」と励ましてくれました。しばらくして救急車が到着し、ほっとしたのも束の間、サイレンの音が止まりません。
1台だけかと思っていたら、次々とサイレンを鳴らしながら救急車が集まってきます。辺りはサイレンの音で埋め尽くされ、気がつくと、9台もの救急車に囲まれていたのです。
救急隊員たちが次々と車に駆け寄り、事故の状況やけがの具合を確認します。1番重症なのはむち打ち状態の私。すぐにストレッチャーに乗せられて救急車に運ばれました。救急隊員から
「怪我をしているのはこの方だけですか?」と尋ねられます。車に乗っていたのは5人で、相手の車には2人、当事者は合計で7人しかいません。それなのに、救急車は9台。
「参ったなぁ、なんでこんなに救急車がいるんだ?」と救急隊員のうちの1人が吹き出しました。
「怪我人9人っていう話じゃなかったでしたっけ?」と別の隊員。救急車を手配したA君は
「車に乗っていた人数は5人で、怪我人は1人とちゃんと伝えましたけど…」と困ったように答えます。
体中が痛くて仕方ないはずなのに、むち打ちに9台もの救急車が集まり、何とも言えない空気に思わず笑いが込み上げてきて、みんなでクスクスと笑いあいました。救急隊員たちも
「一体どうなってるんだ?」
「もう仕方ないな…」と苦笑しながらも安心したように、8台の救急車は撤収していきました。
むち打ちとの長い戦い
その後、私は残った1台の救急車で病院に向かいました。病院で検査を受けた結果、私はむち打ち症との診断。あまりの首の痛みに1週間仕事を休むことになり、しばらくコルセットを巻いての生活が続きました。
むちうち症状が落ち着いてバレーボールサークルの練習に復帰できたのは交通事故から約3カ月後のことでした。
あの日救急車が9台も集まってしまったのかは、結局わからないままでした。とても痛い思いをしましたが、あの日のシュールな状況を思い出すと、今でも笑ってしまう忘れられない出来事です。
(ファンファン福岡公式ライター/ぴょんママ)