8年ぶりに旧友と会う機会がありました。待ち合わせ場所に行くと、マスク姿でも遠くからなんとなくわかる懐かしい面影。「久しぶり~!」と近づいていくと… その様子に驚きを隠せません。それもそのはず、彼女はもう「おばあちゃん」だったのです!
小学校からの旧友
旧友Aと私は、小学校時代からのつき合いです。Aは性格は明るく、運動のできる活発なタイプでした。高校時代はマラソン大会のために、一緒に近所をランニングしたり、家をこっそり抜け出して夜の街を探索したり… 今となっては良い思い出です。
私たちが通っていた高校には定時制クラスがありました。登下校の時間が違っていたので、日中と夜間のクラスの学生が交わることはありませんでした。あるとき、Aに
「実は、彼氏ができた」と告白されました。相手は、交流がまったくないはずの定時制に通う男子生徒だったのです。
Aとその彼氏が、同じ教室の同じ席を使っていて、たまたま机に書いた落書きをきっかけに、交際に至ったとのことでした。彼氏は目つきがするどい、ちょっとやんちゃなタイプ。金髪に染めた派手な頭髪に最初は驚いたものの、話してみると裏表のない素直な性格で、優しい話し方をする人でした。すっかり安心した私は、二人を応援することにしたのです。
その後、Aは実家から遠く離れた大学の夜間学部に進学しました。高校を卒業した彼氏は、土木工事の現場で働き、Aを追って同じく実家を離れました。お互いの両親には内緒の同棲生活だったのです。
若くして結婚、出産
その頃私も進学し、Aの住む地域の隣町に住んでいました。会う頻度は少なくなったものの、Aとの交流は続いていました。
大学に入学して1年たった頃、Aの妊娠が発覚しました。年齢的にも収入の面から考えても、子育てをできる環境とはいえず、お互いの両親は出産や結婚を猛反対されたそうです。両親の援助もないまま、大学は退学し、結婚もできず、ひっそりと出産したようでした。
ところが、その産まれた子どもの存在により、状況が一転。孫の愛くるしさに、両家の実家の態度が軟化したそう。そして、実家同士の関係性も良好となり、ついに結婚することが許されたのでした。その後、私とAはお互い仕事や子育てに追われ、会う機会は一段と少なくなりました。
久々の再会で衝撃
あるとき、Aから「久しぶりに会わない?」と連絡が。8年ぶりの再会です。職場近くのカフェで待ち合わせ、早足で向かうと、懐かしいAのシルエットが遠くに見えます。
「久しぶり~!」と小走りで近づきますが、久々に会ったAの様子に驚きを隠せませんでした。
学生時代、Aと一緒にショッピングを楽しみ、おしゃれを競い合っていましたが、そこにいたのは、くたびれたベージュのTシャツと、茶色のパンツ。アクセサリーは身につけておらず、白髪交じりでボサボサ頭の女性でした。Aの変わりように、驚きました。
ランチを食べながら、お互いの近況について報告します。大学在学中に産まれたAの娘は、とっくの前に成人を迎え、美容師として就職したとのこと。ところがまだ見習いの段階で、彼氏との子どもができたのだそう。そして、ため息まじりに
「私いま2歳の孫がいる、“おばあちゃん”になっちゃったの」と。
あの頃を取り戻そう!
Aは、何をするのも
「おっくうだ」と愚痴をこぼします。また、職場のデジタル化についていけないAは、自ら学ぶことはせず
「若い子にやらせた方が早い…」と力なく言います。
学生時代は、勉強や運動に前向きに取り組み、活発な女の子というイメージしかなかったAの消極的な発言に、あっけにとられてしまいました。Aは、子育てを終えたと思ったら孫ができたことで、心身ともにおばあちゃんになってしまったのでしょう。
その日は昼休みの限られた時間だったため、あわただしくランチと近況報告を済ませた後、私も仕事へ戻りました。席につくとAの変わってしまった姿を思い出しながら、洋服や髪型に無頓着になった今の自分と重ね合わせて、一瞬ドキッとしたのでした。
一緒におしゃれを競っていたあの頃を取り戻すべく、次に会ったときは、Aと一緒にネイルサロンか、エステか… イケメンのいるバーなんて良いんじゃない!? だって、40代の私たちに「おばあちゃん」はまだ早いよ!と感じる一件でした。
(ファンファン福岡公式ライター/ダイワ エノ)