ヤブ医者だと思っていたおじいちゃん先生 本当はすごい人だった!

みなさんはかかりつけ医、いますか? 私が行っていたのはいつも「風邪」しか言わない年齢不詳のおじいちゃん先生がいる、小さな病院でした。今回はそんなエピソードをお話します。

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かかりつけの小さな病院

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 私は生まれた頃から、かかりつけ医にしていた小さな病院がありました。病院は待ち時間が長いところが多い中、いつも空いている病院でした。家から少し離れていましたが、家族全員に加え、祖父母や叔父家族もかかりつけ医にしているところです。

 医師一人、薬剤師一人で、どちらも私が物心ついたときからおじいちゃんとおばあちゃんでした。そんなおじいちゃん先生は、いつ受診しても「風邪だね」しか言いません。

 頭が痛い、お腹が痛い、気持ちが悪い… なんと訴えても、いつでも
 「風邪だね」と言い、今どき珍しい手書きのカルテにドイツ語でサラサラと文字を書きます。

 カルテを薬剤師のおばあちゃんに渡すと、これまた珍しい薬包紙に包んだ薬をくれるのでした。それがまた、苦いのなんの! 小さい頃の私は、いつも涙目になりながら飲んでいました。

 おじいちゃん先生に
 「甘い薬がいいです」と言っても、
 「なっちゃんはもうお姉さんだから」と苦い薬にされてしまうのを密かに不満に思っていました。

 また、受診する際に
 「食欲はある?」と聞かれるのですが
 「ないです」と答えても
 「なっちゃんは体格がいいから少しくらい食べなくても大丈夫だね」と返されるんです!

 じゃあ聞かないで! と、これまた不満です。今思えば、可愛がってもらっていたのですが、私はこのおじいちゃん先生を、心の中でヤブ医者認定していました。

熱が下がらない母

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 私が21歳の12月。母から、
 「最近熱が下がらない」と連絡がありました。聞くと、5日前から40度発熱をしていて、家の近くの内科に行くも“風邪”の診断。解熱剤を飲んでいるときだけ熱が下がり、薬が切れるとたちまち40度に逆戻りだそう。

 「なんか変な病気だったら嫌だなぁ」と言っていました。それから数日経っても変わらないため同じ病院を受診。やはり“風邪”と言われてしまったそうです。次の日母は、落ちてきている体力を振り絞り、あのおじいちゃん医師の病院を受診します。

 するとおじいちゃん医師は母の顔を見るなり、提携の大きな病院に電話。すぐに診てほしいと無理矢理予約をねじ込んだそうです。検査の結果、母の診断は癌でした。先生曰く、目や手がかすかに黄色く、黄疸が出かけていたのですぐにわかったのだとか。

祖父の病気

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 「やっぱり先生はすごい人だね」母が言うのを聞いて、私は
 「そうなの? いつも風邪しか言わないから、ヤブ医者だと思ってたよ」と返します。すると母は
 「何言ってんの! すごいんだよ!」と笑いました。

 以前もこんなことがあったそうです。
 祖父が、健康診断の結果を聞きに行ったときのこと。結果は異常なしで、祖父と先生は雑談をしていました。祖父が
 「もう年だから、歩くとき痺れることがあってね」と言うと、先生は祖父の足を少し触ったんだそうです。

 その瞬間に真剣な目に変わり、その場で提携の病院に電話して予約をとり、紹介状を書いてくれたのだとか。検査の結果、脳梗塞ならぬ、足梗塞。

 足の血管が詰まり、足先まで十分に血液が行かなくなる病気です。しびれや痛みの症状があり、悪化すると壊死して切断しなければいけないそうで…。早期発見、手術を行った祖父はまた元気に歩けるようになったのです!

 その話を聞いて私はびっくり! ヤブ医者どころか、とてもすごい医師だったようです! まだ信じられない私に、
 「実際大事に至ってないんだから、風邪だったでしょ? 診断結果が正しいってことじゃない」と母。
 「たしかに」と納得したのでした。

まだまだ現役!

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 その後、今度は私の子どもたちがお世話になりましたが、数年後引っ越しをし、おじいちゃん先生と会うことはなくなってしまいました。

 小さい頃からおじいちゃんだったので、もう引退されたかなと思っていましたが… 知人に確認したところ、まさかのまだ現役なんだそうです。御年、90歳!

 元気なおじいちゃんでしたが、現役だとは思いませんでした。いつかまた、受診したいなと思います。きっと「風邪だね」と言われるんでしょうけど!

(ファンファン福岡公式ライター/さとう なつこ)

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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