マンション生活では、生活音が原因のトラブルは多いのではないでしょうか。防音性が高い物件でも、集合住宅では音の完全な遮断は難しいものです。特に小さな子どもがいる家庭では、足音や声が周囲に迷惑をかけていないか気を配る場面も多いでしょう。今回は、私がマンションの理事会の役員を務めている時に遭遇した、予期せぬ騒音トラブルについてお話しします。
静寂を破る予期せぬチャイム
私が住むマンションのある部屋には、年配の夫婦が2人で暮らしていました。
ある夜、時刻は21時過ぎ。夫婦が寝室で休んでいたところ、突然玄関のチャイムが鳴り、続いてドアを激しく叩く音が。驚いた夫婦がそっと玄関に近づくと、外から女性の怒鳴り声が聞こえてきたそうです。
「何時だと思ってるんだ! 子どもの音がうるさいんだ!」という激しい口調に、夫婦は恐怖を感じてドアを開けず、そのまま様子をうかがっていたといいます。
住民を悩ます攻撃と恐怖の手紙
翌朝、夫婦は管理人さんに相談し、昨夜の出来事を伝えたそうです。
その結果、怒鳴り込んできたのは、真下の部屋に住む女性だと判明。どうやら、上の階から聞こえる足音に悩まされていたようです。管理人さんを通じて、真上の部屋には子供がいないことを説明し、一旦は納得してもらえたそうですが、その後も事態は収まりませんでした。
今度は、その女性が年配夫婦の両隣の住人にも迷惑をかけ始めたそうです。
ある日、隣の住人が玄関のチャイムを鳴らされ、
「うるさい!」と怒鳴られたとのこと。また別の日には、郵便ポストに不安を煽るような手紙が投函され始めたそうです。
手紙には「うるさくて眠れない」「音がつらすぎて、もう消えたい…」といった内容が震える字で書かれており、住人たちは次第に恐怖を感じるようになりました。
理事会での話し合いと解決への道
住民たちは困り果て、管理人さんを通じて理事会に助けを求めました。ちょうどその頃、私は理事会の役員を務めていたため、この騒音問題の解決に向けた話し合いを進める役目を担うことになりました。
話し合いには、理事会メンバーと管理人さんが立ち会い、クレームや手紙で住民を攻撃していた女性とその夫、そして攻撃を受けていた上の階の住人が参加しました。
話し合いの中で、女性は精神的に弱っており、通院中であることがわかりました。また、この騒音問題は、数年前から真上の部屋に時々訪れる孫の足音がどうしても気になっていたことがきっかけであることも明らかになりました。
話し合いは終始穏やかに進み、誰も声を荒げることはありませんでした。手紙による被害を受けた住民たちも、
「日頃から生活音には注意しているつもりですが、不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」と女性に謝罪し、女性もその謝罪を受け入れました。
最終的に、女性からマンション全体で騒音への意識を高めるため、理事会でアンケートと注意文を作成してほしいとの要望が出されました。理事会はこの要望に応えることを約束し、話し合いは無事に終了しました。その後、女性の行動も改善され、住民たちはようやく安心することができたそうです。
住民同士の協力で騒音問題が収束
話し合いの後、理事会はすぐに生活音に関するアンケートを作成し、全戸に配布しました。驚いたことに、約90%の住民が返信してくれたため、マンション内の協力体制の強さを感じました。
アンケートの集計は管理会社の協力のもと行われ、個人が特定されない形で結果が全戸に配布されました。また、新しく作成した注意文もマンション内に掲示し、住民への注意喚起が行われました。
こうして、マンション全体で取り組んだ結果、騒音問題は無事に解決しました。その後、管理人さんが住民を攻撃していた女性に確認したところ、
「まだ音は聞こえるが、以前ほど気にならなくなった」との返答があり、理事会メンバー全員がホッと胸を撫で下ろしました。
この出来事を通じて、私自身も生活音に対する意識が高まりました。また、住民同士が顔を合わせて話し合うことの重要性を改めて実感する良い機会となりました。
マンション生活では、騒音問題は避けられないものですが、コミュニケーションを大切にすれば解決に導けるのだと強く感じた出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/ぴょんママ)