【エンタメ】三谷幸喜監督と長澤まさみさんが福岡へ! 映画『スオミの話をしよう』インタビュー

 三谷幸喜監督の5年ぶり9作目となるオリジナル最新作『スオミの話をしよう』が9月13日に公開されました。三谷監督が「いつか一緒に映画を撮りたい」と熱望していた、長澤まさみさんを主演に迎えて贈るミステリー・コメディー。西島秀俊さん、松坂桃李さん、瀬戸康史さん、遠藤憲一さん、小林隆さん、坂東彌十郎さんほか実力派俳優がクセのある人物を演じているのも話題になっています。公開直前の9月9日、福岡市を訪れた三谷監督と長澤さんに、映画作りを通して感じたお互いの魅力や製作現場でのエピソードなどを聞きました。

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スオミ役は三谷監督から挑戦状を渡された感じでした(長澤さん)

©2024「スオミの話をしよう」製作委員会  提供:東宝

【ストーリー】相対する男性によって見た目も性格も違うスオミって、一体何者?
 著名な詩人の妻スオミが行方不明だという連絡を受け、詩人の豪邸にやって来た刑事。刑事はスオミの元夫で、すぐに捜査を始めるべきだと主張するが、詩人が「大ごとにするな」と言うので進展しない。やがてスオミの過去を知る男たちが豪邸に集まりスオミとの思い出を語り出すが、彼らが知るスオミは見た目も性格もまるで別人だった…。

―三谷監督が本作に取り組んだきっかけを聞かせてください。

三谷 長澤さんと映画を撮りたい、西島さんと仕事がしたい、舞台のような作り方で映画を撮りたいという気持ちが膨らんだのが主なきっかけです。もう一つは、僕が仕事関係の人と一緒にいるところに僕の家族が現れたことがあり、家族といるときと仕事のときとどちらの顔をすればいいのか分からなくて困った瞬間があって、その体験が“映画のテーマになるな”と思ったんです。

「これまでの集大成ともいえる役。皆さんにスクリーンで確かめてほしい」

―長澤さんは三谷監督映画に初出演。監督から託されたスオミは相対する男性によってキャラクターが変わる役ですが、初めて台本を読んだときの感想は。

長澤 全く違う物語ですが、黒澤明監督の「天国と地獄」を思い出しました。スオミとして演じるキャラクターはとても魅力的なんだけれど、なかなか複雑だったので、三谷さんから挑戦状を渡された感じでした。

―スオミを演じて面白かったこと、また大変だったことは。

長澤 この10年ぐらい、幾つかの作品で何役かの演じ分けをやらせてもらっています。いろんな役を演じる機会を重ね、全く違う人物像を構築していくのを訓練のようにやってきました。それぞれのキャラクター性は、想像を膨らませながらリアリティーを持たせるのが難しいなと思います。それをこの10年の間に自分の中でそしゃくして理解できてきたからこそ、できる限りのことはやれたという感じです。

©2024「スオミの話をしよう」製作委員会  提供:東宝

長澤さんの集中力、役になりきる力と技術がすごい(三谷監督)

「長澤さんの魅力の全てを詰め込むつもりで撮りました」と三谷幸喜監督

―今回の映画作りを通して、改めて感じたお互いの魅力を。

三谷 10年前に私の舞台作品(「紫式部ダイアリー」)に出ていただきましたが、長澤さんはとても俳優として成長されたと思います。何が素晴らしいかと言うと、5人の夫たちと対面するシーンは7分ぐらいのせりふがあって長回しで撮ったのですが、そのときの集中力、役になりきる力と技術です。瞬時にそれぞれのキャラクターに変えていくのは、下手するとコントっぽくなる危うさがありますが、きちんとリアリティーがあり、なおかつメリハリよく変化できる。本当にすごい俳優さんになられたと感じました。

長澤 なんだか、ありがたいです。親戚の人に褒めてもらったような(笑)。三谷監督は「一つのシーンがうまくいかなくても、映画としてつながったときにいい作用を働かせる場合がある。全体像の中で積み重なっていくことで映画になる」と現場でよく言われます。俳優はみんな、(一つのシーンで)自分の力を発揮できないと悔しかったり、物足りなかったりしますが、映画作りはその1カ所に限られたことではなく、全体の中に全てが生きてくる。その価値観を現場で教えてくださるのが、三谷監督と一緒にいてすごく幸せに思う瞬間で、監督ならではだと思います。

「みんな喜んでいた最後のミュージカルシーンまでお楽しみに!」

―「最後まで楽しい映画にしたい」との思いからつくられたラストのミュージカルシーンについても聞かせてください。

三谷 最初は台本にも僕の発想にもなかったんです。ただ今回は舞台のような映画を作りたいという思いがあったので、最後はカーテンコールが必要なんじゃないかと。決定稿でいきなり歌のシーンが追加されて、俳優さんの中には「だまされた」と言う方もいましたが、もうやることになったんだから、やってもらわないといけないので、ある意味だまし打ちだったんですけど(笑)。実際に稽古してみると、やっぱり歌や踊りって楽しいんですよ。結果的にいいものになったと思います。見終わった後に曲がワンフレーズでも頭の中に残っているのがいいミュージカルだと言われているので、(楽曲は)とにかく「ヘルシンキ」を連呼してもらおう、と。ヘルシンキという言葉さえ忘れなければ、ずっと頭の中に残るという作戦です。

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