【特集-1】新しい大会へ。すべての人に、スポーツのチカラを。「SAGA2024国スポ・全障スポ」

 この秋、佐賀県を舞台に「SAGA2024国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会」が開催される。1946年から始まり、「国体」の愛称で親しまれてきた国民体育大会が、国民スポーツ大会(国スポ)へと変わる初めての大会。SAGA2024は、日本の新たなスポーツ文化を切り拓(ひら)くため、前例のない新しい大会づくりにチャレンジしている。そんなSAGA2024国スポでの活躍が期待される、佐賀県ゆかりの注目選手を紹介しよう。

目次

頂へ、挑み続ける。SAGA2024国スポ スポーツクライミング/樋口純裕(ひぐち まさひろ)選手 

1992年、佐賀県多久市出身。佐賀北高校、早稲田大学卒。幼少期からスポーツクライミングに取り組み、国内トップクラスの選手として活躍。2021年9月、ワールドカップのリード種目で初優勝。佐賀県の「SAGAスポーツピラミッド(SSP)構想」のもとSSPトップアスリートにも認定された。現在は神奈川県内のクライミングジム「PUMP2」でインストラクターなどとして勤務しながら、28年のロサンゼルス五輪出場を目指す。

親しんで世界へ。今なお続く進化

 自身にとってスポーツクライミングは、幼い頃から慣れ親しんだスポーツだ。多久高登山部の顧問だった父親の義朗(よしろう)さんに連れられ、教え子の高校生らに交じって休日や放課後、遊び感覚で人工壁に登っていた。本格的に練習を始めたのは中学生の頃。3年生で世界ユース選手権2位となり、頭角を現した。
 これまでワールドカップ(W杯)をはじめ、世界大会に50戦以上出場。ロープを使わないボルダー、12㍍以上の高い壁を登るリードの二つのうち、得意とするのはリードだ。2021年には、スロベニア・クラーニであったW杯のリードで初優勝した。
 キャリアを重ねる一方で進化も続ける。最近感じるようになったのはスポーツクライミングの奥深さだ。国内外の強豪選手と話したり、練習したりすることで「同じコースでも、一人一人登り方やコース取りが違う。自分の考え方だけが正解じゃなく、お互いの知見を交わすことで見えてくるものがある」。
 競技は指だけでなく、手のひら全体や足の甲、かかとなど全身を用いるハードなもの。近年、10代の若手選手の活躍が目立つ中、ベテランの域に達しつつある選手として「突出した100%の能力、強みはないが、全ての動きにおいて満遍なく80、90点の力を出せる。それと粘り強さが武器」と自己分析する。

■SAGA2024から新文化の定着を

会場の九州クライミングベースSAGA。スポーツクライミングの施設としては国内最大級とされる

 地元多久市で開催されるスポーツクライミング競技。その会場「九州クライミングベースSAGA」は、自身が競技を始めた原点である多久高内に昨年、設けられた。リード壁は高さが15㍍、張り出しが11㍍を誇り、施設としては国内最大級を誇る。膜の屋根が張られ、雨天時に競技ができるのも特徴だ。
 この会場で新たな取り組みとして、少年男子リード決勝が「ナイトゲーム」として開催される。昼間は仕事や学校があるため会場を訪れることができない人たちも、帰りに観戦できるよう夕方の時間に競技が行われるものだ。
 照明や音響が加われば、エンターテインメント性も高まる。これまで経験した数多くの世界大会の決勝や準決勝などでは、ナイトゲームはごく当たり前。フェスのような感覚で、会場に集まった何千という人から「頑張れ」という声援が届くと、鼓舞されるという。
 「ナイトゲームはとても良い試み。会場が盛り上がると、選手の気分やパフォーマンスが高まる。SAGA2024を機に日本で定着し、クライミングは観戦しにいくものなんだ、という新たな文化が根付いてほしい」と語る。
 佐賀県チームとしてペアを組む中上太斗(なかがみ たいと)選手とともに目指すのは、もちろん優勝だ。「幼い頃に競技を始めた時から応援してもらっている人たちも見てくれる。僕自身、これまでで一番のパフォーマンスを出して、いい格好を見せたい」

Players 1 柔道/清水優陸(しみず ゆうり)選手

2006年生まれ。佐賀市を拠点に活動、佐賀商業高校3年

■海外からも注目される逸材
 高校2年だった昨夏、金鷲旗で優勝。インターハイでは個人と団体の2冠に輝き、15〜17歳で争う「世界カデ選手権」でも頂点に。今や女子63㌔級で、海外からもマークされる存在だ。
 柔道は小学生のときに始めたが、最初は水泳、ソフトボールとの掛け持ちだった。一本に絞ったのは「年下の男の子に投げられたのが悔しかった」から。「もっと強くなりたい」と、中学卒業と同時に故郷の茨城を離れ、男女とも有望選手の多い佐賀商業に入った。
 けがの影響などで連覇を逃した今夏の悔しさを胸に、「国スポでは絶対に優勝する」と誓う。

Players 2 レスリング/鳥栖工業高校(とす こうぎょうこうこう)レスリング部

■活躍支える充実の練習環境
 夏のインターハイは、エースで主将の松原拓郎(まつばら たくろう)選手をけがで欠きながらも団体で連覇を達成。国スポには、そのインターハイ個人71㌔級で初優勝した三浦修矢(みうら しゅうや)選手など男女計8人を送り込む。
 近年の活躍を支えているのが、佐賀県が学校敷地内に整備した「鳥栖レスリングセンター」。マット2面に最新機器がそろうトレーニング室のほか、疲労回復のためのサウナや酸素カプセルも備える。
 本番に向け、戦術の理解・確認を練習の軸に据えて全体的な底上げを図っている。地元の後押しを受け、目指すのは「もちろん優勝」( 三浦選手)だ。

Players 3 ハンドボール/トヨタ紡織九州(ぼうしょく きゅうしゅう)レッドトルネードSAGA

■「佐賀とともに」の意思表示
 8月の全日本社会人選手権は準優勝。9月に開幕した新リーグで、悲願の初優勝を狙う。
 「若楠国体」のハンドボール開催地だった旧神埼町(現神埼市)に、実業団チームとして発足して30年余り。かごしま国体で12年ぶりに優勝し、日本リーグのプレーオフにも13年ぶりに出場を果たすなど着実に力をつけている。
 佐賀とともに歩み、戦う意思表として、昨年からチーム名にも「SAGA」を入れた。地元出身の小峰大知(こみね だいち)選手は「最後の国体と最初の国スポの連覇は、僕らにしかできない。必ず成し遂げ、地域に恩返ししたい」と力を込める。

Players 4 ウエイトリフティング/安嶋千晶(あじま ちあき)選手

1996年生まれ。有田町を拠点に活動、チームSSP所属

■6回全ての試技 成功に挑む
 今年、佐賀県の教員採用試験に合格。来年から県立学校での勤務を予定しており、今大会を最後に現役を退く。「観客を感動で泣かせるのが目標」とちゃめっ気たっぷりに笑う。
 茨城県内の高校入学後に競技を始め、1年生で出場した全国選抜大会でいきなり優勝。2019年の茨城国
体も制覇した。その後、競技を続けながら佐賀県で後進育成に取り組み、佐賀県代表としてSAGA2024を目指した。
 練習では1日に何百回とバーベルを上げるが、本番はスナッチとジャークで3回ずつ計6回の試技しかない。今回は「過去数回だけ」という6回全ての成功を、ひそかに狙っている。

SAGA2024の全てが分かる! 観戦ガイドブックを活用しよう

 SAGA2024では初めて観る競技でも楽しめるよう「観戦ガイドブック」(全144㌻)を作成。競技の見どころや応援のマナーなどを分かりやすくまとめている。ガイドブックは開閉会式会場や各市町競技会場、JR佐賀駅を含む総合案内所などで冊子を入手できる。またSAGA2024公式ホームページでは電子ブック版を配信中。

写真で視覚的に分かりやすく
 アスリートの躍動感あふれる写真で、どんなスポーツなのか理解しやすい!
競技のポイントをコンパクトに
 競技の基本事項や勝ち負けの決め方など、ポイントをコンパクトにまとめた。
見どころはこれ!
 ここに注目するとより楽しめる! という競技ポイントを写真と文章で分かりやすく解説。
初心者でも安心して楽しめる
 競技に応じた応援方法やマナーなどをまとめており、初めて観る方も気軽に楽しめる。

■Information
SAGA2024開催概要
国スポ  10/5(土)▶10/15(火)
[会期前  9/5(土)▶ 9/17(火)、 9/21(土)▶ 10/1(火)]
全障スポ 10/26(土)▶10/28(月)

提供:佐賀県

著者情報

ファンファン福岡(fanfunfukuoka)は、街ネタやグルメ、コラム、イベント等、地元福岡・博多・天神の情報が満載の街メディア。「福岡の、人が動き、人を動かし、街を動かす」メディアを目指しています。

目次